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東京オリンピック ボランティアドライバー体験記22

国立競技場エリアを抜け出し、信濃町駅付近をぶらついて、結局居酒屋がやっている海鮮丼を食べることにした。ちなみにボランティアドライバーは休憩が不規則なので、お弁当ではなく、すかいらーくグループの食事チケットが配布される。しかしすかいらーくグループのレストランが近くにないことには使えないので、食事は適宜取ることにして、チケットは後日使うことになる。居酒屋のテレビでは競泳を中継していたので、私は観戦しながら食事を取っていた。約束の時間にはまだ余裕があるはずだった。

するとキューバ人から電話がかかってきて、もう駐車場に戻っていると言う。え? まだ30分余裕があるじゃん、と私は思う。海鮮丼は今まだ食べ始めたところだ。それでも仕方ないので、5分で行く、と私は伝える。5分、と相手は言う。不満げだ。もったいないとは思ったものの、海鮮丼の具は全部食べて、ごはんは半分ほどかき込んで、急いで勘定する。それほど美味しいわけでもなかったのが逆に救いだ。

ものすごく急いで戻ると、キューバ人はすでに絵画館裏の駐車場の、私の車のところに居る。ちゃんと停車している車まで見つけているのには驚いた。次は武道館だ。まずナビをセットする。そしてナビに従って進む。係員に止められる。何か間違えているのだろうか。

係員は直進はできないと言う。高速に乗るのかと尋ねられ、ナビによればどうやらそのようなので、私はそうだと答える。すると斜め右後ろの入口を案内される。首都高の外苑入口であるようだ。でも電気は点灯されていないし、それが有効な入口であるようには見えない。私は狐につままれたような気持ちになったが、大会関係車両は通行できるのだと言う係員の言葉を信じて、車を進める。そしたら無事首都高に乗ることができ、高速の入口が大会車専用になっていることに改めて驚く。

ナビの言う通りに従って恐る恐る通行し、ナビの言う通り代官町で降りると、すぐに武道館に到着する。なんて順調なんだ。国立競技場から、こんなに簡単に来られるものなのか。

誘導に従って武道館の敷地内に入る。入ってすぐのところに、右折で入る駐車場があるのでそこに入ろうとすると、係員にここからは武道館が少し遠いので、先の停車場所まで進んで停まった方がいいと言われる。私がそうしようとすると、キューバ人がここでいい、と強い調子で言う。ここからだと武道館まで遠いらしい、と私が伝えるも、ここでいいんだよ、とキューバ人が主張するので、私は従うことにした。どうやらさっきの、「いつまで経っても国立競技場に辿り着かない事件」で、私はすっかり信用を失ったようなのだ。それにどうせ武道館に行くのは私ではない。キューバ人がいいと言うならいいのだ。

私は車を駐車して、そこで待機することにした。バック駐車が鬼門だったが、切り返しながらなんとか駐車した。周りは大会車両ばかりだったし、中で待機しているドライバーも多かったので、なんでもない駐車場で切り返したりしているのは恥ずかしかったが、仕方ない。暑い日だったし、エアコンをかけて車の中に居るのかいちばんいいだろう。さっきは遊びに出ていてキューバ人を待たせてしまったし。

私は次に向かう選手村にナビをセットし、車の中で休憩することにした。


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