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指導対局について限界まで細かく書いてみた

プロ棋士と、女流棋士と、実際に将棋が指せる「指導対局」

夏は特にイベントが目白押し。この夏に指導対局デビューしたい方も多いのではないでしょうか?

この記事は「もしも私が20代で将棋を覚えて、この夏に指導対局を初めて受けるとしたら知っておきたいこと」というテーマで書いています。何を隠そうこの私、初めての場所がとても苦手で、注意されるのも怖くて、ふるまい方のガイドラインがない場所・みんながふるまい方を知っている前提で進行してしまう場所が得意でありません。

なので、「こんなに細かいこと気にしてられないよ!」と思った方は、きっと先を読まなくても指導対局で緊張しすぎることはないでしょう。私と同じような、指導対局を想像するだけで緊張してしまい、「そんな思いをするくらいなら行かない」を選んでしまう方のために書こうと思います。長くなるので、お茶とおやつをそばにおいてお読みください。

①指導対局に申し込む

指導対局には事前申し込みのもの、申し込みをした上で抽選のもの、当日申し込みのものがあります。注意事項をよく読んで、「この先生に将棋を教えてほしい」など動機はなんでもいいので、申し込みましょう。だいたいの場合「1局(=1試合のこと)で終わり」形式が多いこと、そして「ある程度の時間制限(だいたい1時間~90分)があること」を理解しておきましょう。

はじめたての方が一番気になさるのが「私なんかが指導対局を受けていいのだろうか...?」とうことですが、いいんです!

駒の動かし方さえ知っていれば、あやふやなら駒の動かし方パンフレットをお持ちいただければ大丈夫です!指導対局で動かし方を教えるのは難しいことですが、動かし方をご存知なら指導対局でお伝えできることはたくさんあります!

駒の動かし方(成るも含む)を学んでいれば、指導対局ぜひ受けてほしいです!

②準備

指導対局に申し込んだor受けることを決めたら、あとは当日を待つだけ。「せっかく習うのだから実りある時間を・・・!」とやる気が沸いたら、その心の炎を活用しない手はありません。「駒落ちの練習」をしましょう。「駒落ち」とは将棋の「ハンデ戦」のこと。上手(うわて)と呼ばれる、ざっくりいえば「強いほう」が初期配置の駒を少なく(=落とす)して戦います。落とす枚数は0~10枚。何枚落としてもらうかはあなたの将棋の強さ(棋力)次第なのですが、もし最近ルールを覚えたなら「10枚落ち」だと思います。練習するといっても、人とするのは難しいと思うので「ぴよ将棋」の一番下のレベルを10枚落ちに設定して指してみましょう。

③当日(受付~席につく)

・服装:イメージは「グループ学習型の英会話教室に行く時の服装」が1番近いと思います。かしこまった格好である必要はありありませんし、世間的な常識を考えつつ、お好きなお洋服でどうぞ。基本的にドレスコードはないのですが、男性であればシャツ(ポロシャツやワイシャツ)に長ズボン(半ズボンでも大丈夫)、女性であればワンピースや普段のお洋服で問題ありません。(女流棋士はお洋服を選ぶ時に、対局の時は特に胸元の緩くない服を選びます。ご参考までに。)お風呂は入ってきてください。(これは念の為書いているだけで、この人お風呂入ってないな?と思ったことはないです。大丈夫。)夏は冷房が強すぎた時のために羽織ものを一枚お持ちください。

・持ち物:現金はお忘れなく。あとは私ならハンカチ(緊張して汗をかくかもしれないし、心細いから握りしめたい)・飲み物(会場によっては飲食禁止なので注意してください。)を持っていきます。

・指導対局に向かう前に:お手洗いによっておきましょう。指導対局中もお手洗いに行って大丈夫(その時は棋士にひとこと「ちょっとお手洗いにしつれいします、すみません」と声を賭けましょう)ですが、初めての指導対局でそう言い出すのはハードルが高いです。トイレが遠いかもしれないし。絶対行っておきましょう。

・受けつけ:受付の形式は場所によって違います。明らかにスタッフとわかる方に聞いてみるor案内が出ていないか探してみるといいでしょう。指導対局の料金は前払いのことがほとんどです。(関西将棋会館の女流棋士レッスンは道場で席料を払い、その後女流棋士に直接レッスン代を渡します)

・席につく:受付が終わったら、指導対局場に案内されると思います。「この席に座ってください」と言われたらそこに座り、ふわっと案内されたらどこに座っても大丈夫な場合なので、一番緊張しない席を選びましょう。席の違いは、例えば一直線に3面並んでいるとしたら、真ん中の席は棋士が1往復するごとに2回前を通りますが、両端は1回ずつ通るというくらいのものです。(進み具合は特に変わりません)

④指導対局開始

棋士が指導対局ブースにきたら、指導対局開始です。おそらく棋士が「よろしくお願いします」や「こんにちは」と挨拶すると思うので、会釈や「よろしくお願いします」と返しましょう。棋士が指導対局を始めるにあたり、駒を並べ始めます。棋士が自分の盤のところに来るまで待っていても問題はありませんが、例えば棋士1人が同時に3~5.6人を同時に指導するときは駒を並べて準備するだけでわりと時間がかかるものです。余裕があるのであれば、駒を出して駒を並べておきましょう。(礼儀作法としては、上位者が駒箱を開けて駒を出す習わしなので、棋士が駒を出してから並べるのでも大丈夫です)

⑤駒の並べ方で気を付けること

駒を並べる時、「王将」と「玉将」に注意です。点がついていない「王将」は上手(うわて=上位者=強いほう)が使います。あなたは点がついている「玉将」を使いましょう。まれに2枚とも「王将」だったり「玉将」だったりするときもあるので、その時は気にせずに並べます。「王将」「玉将」以外の駒は何の違いもないので、正しい位置に並べてください。

まずは自分側の駒を20枚並べましょう。自分の分が並べ終わったら、棋士のほうの駒も並べておくとすんなり指導が始められてよいと思います。もしも並べてる最中に棋士が回ってきて、自分で駒を並べ始めたら、その時はあなたは駒を並べるのを終わって、ただ待っておきましょう。その時に棋士が「棋力(将棋の強さ)はどれくらいですか?」「いつごろから将棋をされてますか?」「手合い(=ハンデをどれくらいつけるか)はどうされますか?」と話しかけてくる場合があります。緊張していると聞き逃しがちなのと、とっさに用語がわからなかったりもするでしょう。「?」と思ったらなんでも棋士に聞くといいとおもいます。ただし1指導あたりの時間というのは限りがあり、ほかに指導を受けている人も複数いることを心に留めて、あまり長時間引き止めないようには注意しておきましょう。

※手つきは棋士のように「パチッ」と指せなくて大丈夫です。ただし駒はきれいに並べるとよいと思います。初めは難しいので、とりあえずマス目の下の線に合わせて並べると綺麗にできます。

⑥指導対局開始前

指導対局の前に「手合い」を聞かれます。「何枚駒を落とすか」ということです。もし何枚落ちにしたらいいかわからなかったら、「指導対局を受けるのは初めてです。いつ将棋を始めました」と伝えると、棋士のほうでだいたいの目安が立てられます。将棋ウォーズをしている方なら、それで何級かなどを伝えるのもいいと思います。

⑦指導対局開始

いよいよ指導対局開始です。指導方法は棋士によってやり方が違うので、対局中はそれに従ってください。終わるまで無言のこともありますが、棋士が話しかけながら指導する場合もあります。「ここでいい手がありますから、探してみてください」などです。無言の中でいきなり話しかけられたらびっくりするかもしれませんが、聞き逃したら聞き返しましょう。

棋士が回ってくるまでに、自分も指しておくことが理想ではあります。ただ、考えたいことはたくさんあると思うので、指していなくても大丈夫です。棋士には指したか指していないかがだいたいわかります。(もしもあなたがまだ指していなくて、棋士が間違えて指してしまったら「あっまだです」といえば大丈夫です)ただ、1手を何十分も考えてしまうのはまずいです。なぜかというと、指導対局は時間制限があることが多く、途中での打ち切りになってしまうかもしれないからです。何十分も考えたくなるくらい難しい状態になったら、棋士が2回目を回ってきたあたりで「ヒントをもらってもいいですか」というのもありだと思います。

「もし何もわからなくなったら」考えてるうちに何が何だかわからなくなって、もうどうしようもなくて混乱すること、あると思います。将棋の盤上は思ったより広いし、駒もたくさんあるし。そういう時は、棋士が自分の盤の前に回ってきたときに「どうしたらいいかわからないです」など伝えましょう。(考え中なのか、困っているのかははたから見てるとあまりわかりません)

ただし気をつけたいのは「棋士頼りにならないこと」。棋士は正解を教えることはできるけれど、大事なのはあなたが考えて正解にたどり着くことです。まずは自力で考えることを心に留めておきましょう。

考え続けていると「自分が指す番かどうかがわからなくなる」ことがあります。その時は棋士に「すみません、どちらの番かわからなくなりました」と伝えましょう。棋士にはどちらの番かわかるので、大丈夫です。

⑧感想戦

対局が終わったら、「どこが良かった」「どこがよくなかった」という「振り返り」をする「感想戦」の時間です。わからないことはこの時間に聞きましょう。感想戦でいわれることはアドバイスとしてきちんと覚えておくと、その後将棋を上達していくのに役立つと思います。

もし初めて指導対局を受けたなら、何枚落ちで指導を受けるのがいいかはわからないですよね。なので「今後指導対局を受けるとしたら何枚落ちがおすすめですか」と聞くといいと思います。「もっと増やしても大丈夫」とか「今日の手合いがぴったり」などと言われるので、大事に覚えておきましょう。

⑨終わったら

棋士が「ありがとうございました」とあいさつするので、一緒に「ありがとうございました」と頭を下げましょう。これで指導対局は終わりです。場合によっては棋士から「すみませんが、駒の片づけをお願いします」といわれることがあります。その時は駒を40枚数えて駒箱に入れて、その駒箱を盤の真ん中においておきましょう。席を去るときに際「ありがとうございました」と棋士に声をかけて、指導対局は終わりです。

⑩起こるかもしれないトラブル

本当はこんなこと書きたくないし、指導対局をただ楽しみにして受けてほしい気持ちです。怖がらせるつもりはないのですが、場合によってはこういうトラブルもあること、その時はどうしたらいいかを私なりに考えたことを書きます。この項目は読まなくても、指導対局はばっちり受けられます。気になる方だけ読み進めてくださいね。

あなたが指導対局を受けているとき、周りで人が見ていることがあります。(それ自体は問題ありません)その時に「距離が近すぎる」「話しかけてくる」「アドバイスしてくる」人がいることもあります。気にならない人もいるでしょうが、気になる人もいるでしょう。私だったらあんまりぐっと覗きこまないでほしいし、アドバイスは棋士の先生からほしいし、自分の頭で考えたいときに助言はされたくありません。

指導対局は、あなたが受けることを決めて、お金を払い、時間をかけて得た大事な権利です。

指導する棋士や女流棋士は、そういった気になる行為をする人にそこまで強く注意ができない場合があります。(もちろん目に余る場合は頑張って注意しますし、あなたとの時間を守りたいと思っています)

「距離が近すぎる」人に対しては、もしもうまく言えそうなら「ちょっと影になるので・・・」と伝えても大丈夫です。気にするそぶりをオーバーリアクションでするとか、椅子を手でつかまれてたら椅子を動かしてしまうとか・・・

「助言をしてくる」人への対処は難しいです。もしかしたらトラブルになるかもしれない、と思うと、なかなか「やめてください」とは言えないですよね。話しかけられてこられたら、どうしても答えなきゃいけないような気持にもなると思います。しかも困っていることを棋士には伝えずらい。

これについての答えは、今のところ「無視をする」「耳をふさぐ」しか思いつきません。まったく気にしないというのは難しいでしょうが、その声に答えなくていいことを覚えておいてほしいです。

途中で席をはずして、スタッフさんに伝えるのもいいかと思います。

+α 慣れてきたら

 指導対局に慣れてきたら、「棋譜」をとりたくなるかもしれません。指導対局を受けていて、周りで棋譜をとりながら指導を受けてる方を見たことはありませんか?

指導対局の棋譜を残して、あとから見返したい。それはとても良いことです!ノートに棋譜をとってもいいですし、前述した「ぴよ将棋」で棋譜をとってもいいでしょう。

その時に注意したいことは2点。①はじめに棋士に許諾を得ること②時間に気をつけること。

①棋士に許諾を得る
これは、指導対局で駒を並べ始めてから「お願いします」と挨拶するまでのどこかで「棋譜をとってもいいですか?」と聞くということです。場合によっては(会場やなんやかんや大人の事情など)棋譜がダメなこともあるかもしれません。念のため毎回聞くようにしましょう。ほぼ100%「大丈夫ですよ」と言ってもらえます。タイミングとしては、手合いを決めたあとすぐに言うのが言いやすいと思います。

②時間に気をつける
棋譜をとるのは時間がかかります。指導対局の一局あたりの時間は決まっているので、特に手書きの場合はそこで時間をロスしてしまいます。「棋譜を取ることに気が取られて、時間がかかり、一局指し終わらないかもしれない」ことを頭に入れておきましょう。棋譜をとることに慣れていて、時間をロスしないよ!という方は大丈夫です。


おわりに

指導対局について限界まで細かく書いてみるチャレンジは以上で終わりです。もしかしたらもっと細かく書けるところが見つかるかもしれないので、その時は加筆していきたいと思います。一つ気を付けていただきたいことは、この記事に書いてあることがすべて正しいとは限らないということです。指導対局にはいろんな種類があるし、指導者もいろんな方がいます。ただ、初めに書いた通り、これは私が「20代で将棋を覚えて、初めて指導対局を受けるとしたら知っておきたいこと」です。

指導対局を受けるときは、基本的にはその会場のスタッフの方の指示や棋士に従ってくださいね。

最後にトラブルについても書きましたが、毎度毎度起こるようなことではありません。でも起こらないとも言い切れないのです。そういったトラブルの存在を知らないままに初めての指導対局を受けて、不運にもそういう事態が起こり、それで将棋から離れてしまうということが起きてほしくなかった。なので、とりあえずトラブルの存在だけ知っておいてください。

あなたが過ごす時間が楽しく実りあるものでありますように。長文にお付き合いいただきありがとうございました。

#将棋 #指導対局

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Q&A

ここからはTwitterに頂いた指導対局についての質問と回答の追記です。(最終更新日2019.1.25)

・駒の持ち方が正しくなくて大丈夫ですか?→プロのような手つきで駒を持つ必要はありません。(あの手つきは習得に時間が掛かります)親指と人差し指で挟んで持ってもいいですし、やりやすい方法でどうぞ!

・詰みに気づくギリギリまで指して大丈夫ですか?→負けじゃないのに「危なそうだから」と投了することほど勿体ないことはありません。そもそも「詰みに気づく」こと自体がなかなか難しいことなので、詰むまで指して大丈夫です。指導する側が「この人、詰むまで指したぞ、失礼だな」と思うことは100%有り得ません。

・ギャラリーを気にしないためにはどうしたらいいですか?→話しかけられても、答えなくて大丈夫です。気にならないくらい集中するイメージとしては「学校でみんながガヤガヤしている中、1人で本を読んでいる」時のイメージ。音は聞こえるけど、遠のく、聞き取れない感じです。ギャラリーがあまりにも近いときは「すみません、影になるので離れてもらってもいいですか?」が言いやすい(たとえ影になってなくても、相手がどいてくれやすいです)セリフかと思います。

・盤の上に駒以外のものを置かないようにしましょう。盤の上にスマホ、お金、ノートを置いてメモをとる、などはオススメしません。(盤をまたぐのも控えた方がいいです)

・気をつけることがたくさんで頭がいっぱいになってしまうでしょうが、「失礼のないように指導対局を受けたい」「指したい」と思って来てくださっただけで、指導側は嬉しいものです。例えば映画を見る時に「音を出さない」「話さない」などの注意事項があって、その後は鑑賞に集中するように、対局中は自分が楽しむ気持ちで味わって貰えたらと思います。

指導対局について分からないことはコメント欄かTwitter(@EMN54214)までお寄せください!質問いただくほど、この記事は「限界まで細かく」を極められることになるので、こちらとしてもご質問いただくのはありがたいです!

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山口絵美菜

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1994.5.4生まれ 宮崎県出身 女流棋士 2017年京都大学文学部卒 エッセイ、観戦記(毎日新聞)、観劇録。2019年~桃山学院大学ビジネスデザイン学科非常勤講師。宙組公演『アナスタシア』で宝塚に夢中に…桜木みなとさん、天華えまさん、希波らいとさんが好きです。全組観劇派。