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SDGs 目標1 貧困をなくそう

これから17回にわたりSDGsの17つの目標の詳細や現状・今後について投稿していきます。

まず初めに、SDGsの概要については、SDGs入門編をご覧ください。

1.はじめに

今回のテーマは、 SDGsの1つ目の目標である「貧困をなくそう」です。
目標1の内容は、"あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと"とされています。

目標1のターゲットは以下の通りです。

1.1 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
 
1.2 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子どもの割合を半減させる。

1.3 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する

1.4 2030年までに、貧困層及び脆弱層をはじめ、すべての男性及び女性が、基礎的サービスへのアクセス、土地及びその他の形態の財産に対する所有権と管理権限、相続財産、天然資源、適切な新技術、マイクロファイナンスを含む金融サービスに加え、経済的資源についても平等な権利を持つことができるように確保する。

1.5 2030年までに、貧困層や脆弱な状況にある人々の強靱性(レジリエンス)を構築し、気候変動に関連する極端な気象現象やその他の経済、社会、環境的ショックや災害に暴露や脆弱性を軽減する。

1.a あらゆる次元での貧困を終わらせるための計画や政策を実施するべく、後発開発途上国をはじめとする開発途上国に対して適切かつ予測可能な手段を講じるため、開発協力の強化などを通じて、さまざまな供給源からの相当量の資源の動員を確保する。

1.b 貧困撲滅のための行動への投資拡大を支援するため、国、地域及び国際レベルで、貧困層やジェンダーに配慮した開発戦略に基づいた適正な政策的枠組みを構築する。

2.”貧困”とは何か?

さて、ここで問題です。“貧困“の意味(定義)は何でしょうか?

「貧困=お金のない状態」と考えている方は間違いです。

お金という観点だけでは貧困は測れません。

なぜなら極端な話、所持金が0円でも、衣食住の整った生活環境があれば「貧困」とは言えないし、逆にヴァイマル共和政のような、ハイパーインフレーション化の国では、いくばくかのお金を持っていても、商品を購入できず豊かな生活を送れないからです。

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"世界で最も貧しい大統領"として知られる元ウルグアイ大統領ホセ・ムヒカ氏は、2012年のリオ会議(地球サミット)にて、古代ギリシア・ローマ時代の哲学者エピクロスとセネカから

"貧しい人とは少ししかものを持っていない人ではなく、もっともっとといくらあっても満足しない人のことだ"

と引用し、消費主義社会のビジネスモデル、生活モデルに疑問を投げかけました。

「貧困とは?」という単純な問いが、非常に哲学的なものであるということがわかると思います。

約10年も前のものですが、ホセ・ムヒカ氏のスピーチは、貧困について考える上で必見だと思うので、このリンクを貼っておきます。

そうは言っても、具体的な数字がないと、貧困撲滅に向けて、人々が行動に移すことは難しいので、SDGsや世界銀行などは、具体的な数字で貧困というものを示しています。

まずSDGsでは、ターゲット1-1にあるように、「1日1.25ドル未満で暮らす人々」「極度の貧困」とし、2030年までにそうした貧困をなくすことを1つの目標にしています。

一方、世界銀行は2015年に、「1日1.9ドル未満で暮らす人々」を基準として「国際貧困ライン」と定めています。ここでいう「1日1.9ドル未満」とは、食事代のみならず、医療費・薬代なども含むすべての生活費のことです。

このような、最低限必要な基準以下の状態の貧困は「絶対的貧困」と呼ばれています。

また、2020年、オックスフォード貧困・人間開発イニシアチブ(Oxford Poverty & Human Development Initiative: OPHI)と国連開発計画(UNDP)は共同で発表した「グローバル多次元貧困指標2020年 Global Multidimensional Poverty Index 2020 – Charting Pathways out of Multidimensional Poverty: Achieving the SDGs」で、100以上の開発途上国をカバーする多次元貧困を保健・教育・生活水準の急激な悪化を捉えることで測り、従来の貨幣ベースによる貧困指標を補完することを目指した、グローバル多次元貧困指標(the global Multidimensional Poverty Index: MPI)を示しています。

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この指標を用いると、お金というモノサシだけでなく、教育、健康、住環境など多面的な指標で世界の"貧困”の実態が把握できます。

3.”絶対的貧困”の現状

世界銀行は、2015年に国際貧困ライン以下(1日1.9ドル未満)で暮らす人々の数は、約7億3,600万人と発表しています。

世界の10人に1人が"絶対的貧困"の下で生活しているということです。

そして、そのうち半数以上がアフリカ大陸に集中しています。中でも、「サブサハラ」と呼ばれるサハラ砂漠以南の地域の経済状況は1980年代からあまり改善されていません。SDGsの目標1を達成するには、こういった地域の貧困救済が必要不可欠と言えるでしょう。

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World Development Indicators: Poverty rates at international poverty linesより

多くの課題は残っているものの、2015年から2017年の間に貧困から抜け出せた人は世界で約5,200万人に上ると言われており、世界の貧困率は減少傾向にありました。

然しながら、現在はコロナ禍の影響で、世界の貧困状況は悪化しています。2020年10月7日に世界銀行は、新型コロナの影響で、2021年には絶対的貧困者が1億5,000万人増加すると推定しています。

いかにコロナ禍が人類の経済活動に悪影響を及ぼしているかがわかります。

4."相対的貧困"の現状

これまで絶対的貧困の現状を説明してきましたが、目標1に"あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つこと"とあるように、貧困はアフリカだけでなく、あらゆる場所で起きています。

意外かもしれませんが、日本も例外ではありません。

確かに、先進国に暮らしていて、国際貧困ライン(1日1.9ドル未満)以下での生活を強いられている人はほとんどいないかもしれません。

しかし、1.9ドル=約200円という国際貧困ラインでの比較が、はるかに物価の高い先進国では意味をなさないということは容易に想像できるでしょう。

ある程度の収入がないと、先進国では「健康で文化的な最低限度の生活」がおくれないのです。

こうした対象国・地域の文化水準、生活水準と比較して困窮した状態を”相対的貧困”と言います。いわゆる先進国での「貧困(格差)問題」です。

OECDの定義によると、「世帯の所得が、その国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態」を相対的貧困と言います。日本では、厚生労働省の調査によると、2018年の貧困ラインは127万円となっています。

私たちの住む日本は貧困とは程遠く貧困率が低いように思われがちですが、下のグラフからわかるように15.4%、約6人に1人が貧困層に該当します。

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出所:厚生労働省(2020) 『2019年国民生活基礎調査 結果の概要』

ちなみに、OECD加盟国の平均は2019年8月で11.8%です。日本は先進国の中でも、相対的貧困率の割合がかなり高い国と言えます。

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出所:イーズ 未来共創フォーラムより

相対的貧困を孕む格差社会が長期間にわたって固定化されていくと「階級・階層化」が起きてしまいます。人や社会のサスティナビィティを阻む要因として、先進国の格差が問題視されているのはこうした理由からです。

5.企業には何ができるのか?

ここまで世界の現状を見てきましたが、ここからは民間企業がどのようにSDGsの目標1と向き合っていけばいいのかについてお話ししていきます。

「社会貢献と利益追求の両立」という難題をSDGsの目標1に沿って、どのように形にしていくのかということです。

SDGsの目標1に取り組む上での1つの方法として、「BOP(ベース・オブ・ザ・ピラミッド)ビジネス」という考え方があります。「経済ピラミッドの底辺に当たる貧困層に普及する商品開発や事業投資を行うことで、企業として利益を得ながら、社会に貢献していこう」という考え方です。

一見、「貧困層から利益を得るなんて酷いビジネスモデルだ」と思う方もいるかもしれません。しかし、BOPビジネスは、短期的に「貧困層に需要のあるモノを作り提供する」という社会的意義だけでなく、「日本の技術やノウハウを事業を通して現地の人々に伝えられる」という、長期にわたって貧困層の自立を促す効果もあるのです。

こうした民間企業の活動には、JICA(国際協力機構)なども資金援助を行っており、民間企業はJICAなどの資金援助を受けながら、途上国への事業投資を行うことができます。

SDGs達成に向けたJICA(国際協力機構)の民間連携
JICAが掲げるビジョン「すべての人々が恩恵を受ける、ダイナミックな開発」は、ODA(政府開発援助)など従来の公的機関の援助のみで実現することは不可能です。そうした認識から、JICAは2008年10月に民間連携室(現・民間連携事業部)を設置し、長年にわたるODA事業を通じて蓄積した開発途上国の公的機関とのつながりや情報、国内外のネットワークを活かし、開発途上国での事業展開を検討される企業を支援し、ビジネスを通じた現地の課題解決を推し進めてきました。

その一環として、2010年に、日本企業によるBOPビジネス(貧困層が抱える課題の解決に貢献するビジネス)を支援することを目的に、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」を開始し、2016年4月までに計10回の公示を行い、通算で114の案件を採択しました。そのような中、2015年9月に、2030年までの達成をめざす「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」が国連本部において採択され、貧困層の抱える課題のみならず、国際社会として取り組むべき包括的な課題が掲げられました。

また、SDGsを達成する手段として「グローバルパートナーシップの活性化」が不可欠なものと位置付けられ、JICAは、2016年9月にSDGs達成に向けた取り組み方針を発表し、国内外のパートナーとの連携強化を柱の1つに掲げています。

このような背景から、2017年より、JICAはSDGs達成に貢献するビジネスを支援するべく「途上国の課題解決型ビジネス(SDGsビジネス)調査」を開始しました。本制度を通じて、「協力準備調査(BOPビジネス連携促進)」が対象としていた貧困層の課題を含む、より広い途上国の課題解決に向けて、民間企業とのパートナーシップを加速させることをめざします。

出所:JICA公式ホームページより

このような民間企業のビジネスモデルの構築と挑戦が少しずつ社会を変えていくのかもしれません。

6.Open Sesameの取り組み

こうしたJICAなどのスキームを利用したビジネスモデルの構築や途上国でのプロジェクト実施には、現地での人脈やノウハウが必要不可欠になってきます。Open Sesameは、このような志の高い中小企業に対して、海外展開のサポートを行なうことで、SDGsに取り組んでおります。

下記事例は、後発開発途上国 (「最貧国」、若しくは「貧困国」)と呼ばれる2018年時点で47か国のうちの一つであるミャンマーでの活動です。

↑こちらは、弊社がサポートした過去のBOPビジネスについて概要をまとめた記事になります。ぜひご覧ください。

もし、途上国への海外展開を御考えでしたら、こちらからお問い合わせください。

社会貢献と利益追求の両立を、SDGsという旗印に向けてシナリオを描くことで、実現することがOpen Sesameの役割です。


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