見出し画像

『体験ジャンキー♯01』イベントレポート

こんにちは!きださおりです。

2020年3月13日に東京ミステリーサーカス・ヒミツキチラボ365で開催した、『きださおりの 体験ジャンキー #01 』のレポートが出来上がったのでぜひ読んでみてください!

レポートは、ライターのよこやま まどかさん(noteTwitter)に作成いただきました。

*****

『体験ジャンキー#01』

2020年3月13日、東京ミステリーサーカス5階にオープンした“ヒミツキチラボ365”にて『体験ジャンキー#01』が開催されました。イベントの様子をお届けします。

体験ジャンキーとは...
日々「体験型イベント」を作り、プライベートで遊びに行く先にも「面白い体験」を求め続ける「体験中毒者」こと、きださおりさん。そんなきださんが”最近出会った面白い体験”をレポートし、その中からいくつかの体験を掘り下げ、制作者や関係者を呼んで制作秘話・裏話などをインタビューするトークイベントです。
イベントは2部に分かれており、前半ではきださんが国内、国外で出会ったたくさんの面白い体験の中から抜粋して、企画者目線でレポートします。
後半では、その体験を掘り下げ、作品の制作者や関係者をゲストに「その体験はどうやって作ったの?」というインタビューをさせていただきます。
記念すべき第1回のゲストはパーティークリエイター「アフロマンス」氏

登壇されたきださんが「この中で体験ジャンキーの人はいますか?」と聞くと、ほとんどの人の手が挙がるほどの熱気でイベントは幕を開けました。

第一部:きださおりさんによる“面白体験のレポート”
―きださおり、「体験ジャンキー」のルーツとは?

数多くの体験型イベントを生み出し、自らも体験し続けている自他ともに認める「体験ジャンキー」であるきださん。まず、きださんが体験型イベントに夢中になったきっかけの出来事を話してくださいました。これには二つの衝撃的な出来事があったそうです。

画像1

ひとつ目は漁港というバンドのライブを見たこと。
大学生の頃、音楽イベントのスタッフをしていたというきださん。漁港が出演するライブのスタッフをしたときに、機材としてマグロの頭が届いていたことを不思議に思ったそう。何に使うかわからないマグロの用途は、なんとライブ中に突如始まったマグロの解体ショーでした。

かっこいい音楽ライブの真っ最中に始まったマグロの解体への驚きと、解体されたマグロが客席に配られ、みんなでお刺身を食べながらライブを見るという一体感。マグロがこんなにも会場をひとつにするなんて!ということに泣いてしまうほど感動した、これがきださんの衝撃体験のひとつ目でした。

マグロ…? 最初の話のインパクトに戸惑う参加者は、ここでイベント後半に続く伏線が張られたことをまだ知りません。

画像2

ふたつ目の体験もライブハウスで起こりました。きださんご自身も出演者として参加されたイベントで、フロアの水道管が突如破裂するというハプニングが。

そのイベントのトリを務める予定だったのが、ワッツーシゾンビというバンドだったのですが、彼らのパフォーマンスは最後の曲でドラムセットを客席に持っていって演奏するというものでした。水浸しのフロアで電気も止めた状態で、イベントの継続も含めて全員がどうしたらいいのかと困惑していた中、ひとりの出演者が叫びました。「お客さんをステージにあげろ!」

ステージの上というフロアより安全な場所でお客さんの安全を確保した上で、ライブをやり切り、終わった瞬間全員で逃げるという、このドラマチックで一体感のある体験に再び泣いてしまうほど感動した、というきださん。

これらの経験から「きださんの好きな体験のタイプ」をまとめるとこうなります。
・予測していなかった事が起こる
・飲食が絡む
・どこかしらに非日常感
・製作者や演者とお客さんの境目が限りなくなくなる
・「楽しんでもらおう」という気持ちが伝わってくる
・その時間やその集団なりのドラマが生まれる構造
・感情が動く

かなり衝撃的な話が続き、会場の期待が高まる中、話題は前半のメインテーマに移ります。

ーきださおり一押しの体験型コンテンツレポート

画像3

きださんが2019~2020年で印象に残っている体験型コンテンツがスライドに映されました。その数! 文字が小さくて読めないほどです…! さすが体験ジャンキー!
この中から特に印象的だったといういくつかのイベントについて話ししてくださいました。

1. 飲食の絡むイマーシブ体験

① SECRET CINEMA「STRANGER THINGS」(@ロンドン)

SECRET CINEMAは、物語の実際の世界を体験してから映画を見るというイベントです。きださんが最初に参加したSECRET CINEMAは「007 CASINO ROYALE」で、その時の体験が素晴らしく、また行きたいと思ったものの、さすがに海外は遠いなと思われていたそうです。しかし、「STRANGER THINGS」を、しかもNetflixがやるということで、これは見なければいけないぞと距離をものともせずチケットを取られたとのこと。しかもVIPチケットでした!

「STRANGER THINGS」の面白ポイント
 ・推しを追いかけられる
 ・インタラクティブ性がある
 ・楽しみ方が自由
 ・最後は全員で一体になれる
 ・小粋な仕掛けが山ほどある
 ・音楽と飲食も楽しめる
そんな盛大なパーティー

まず、世界観が徹底されていたと話すきださん。スライドに映されるイベントの様子は、どちらがSECRET CINEMAでどちらが映画のシーンかわからないほどの再現性でした。役者さんのそっくり具合も、雪が降るなどといった大掛かりな演出も、作中と同じお店でアイスクリームが食べられるといった設定も、どれもが聞いているだけでワクワクするほどです。

きださんはドレスコードについても言及されていました。参加者として登録すると、卒業アルバムに自分の写真が登録されて(原作の設定が卒業パーティーのため)、名前や人物設定、それに合わせたドレスコードが指定されるそうです。きださんが指定されたドレスコードは「メディアホットショット」というもので、もしそのドレスコードに合うアイテムを持っていなくても安価でおしゃれなアイテムを買うこともできる仕組みになっていました。

画像4

指定されたドレスコードに身を包み、VIPチケットを持って会場に向かったきださん。VIPの特典の中でもすごいものがメディアパスの存在でした。会場内にはパスを持っている人しか入ることのできないメディアエリアが用意されていて、だからドレスコードがメディアだったのか天才!ときださんの叫びが(笑)。

さらにVIPだと役者側が様々な情報を教えてくれるそうなのですが、実は英語が苦手なきださん。役者の方はそれを察知して、きださんにだけ特別にゆっくり話しかけたり、メモに手書きをしてくれたりという対応を見せてくれたそうです。「それだけで推しになるじゃないですか!」と、またもやきださんの叫びでした(笑)。(なります)

画像5

最後に、協賛の活かし方がうまいというお話もされました。「STRANGER THINGS」には、日本ではあまり事例のないような会社が協賛として名を連ねています。コスメブランドのMACやCOACHなどがその代表ですが、イベントへの組み込み方が秀逸でした。普段は敬遠しがちなパーティーメイクをMACのカウンターで施してもらってから参加できたり、COACHはなんと会場内の店舗でショップカードをもらっておくと、実店舗で特別なノベルティがもらえるといった仕掛けが隠されていたそうです。

きださんの「こういうところの紙は持っておいた方がいいぞ」という心得は体験ジャンキーの方はぜひ覚えておきましょう(笑)。

② MURDER(@ロンドン)

ロンドンからパリへ向かう電車の中で、コース料理を食べながら起きる出来事を体験するというイマーシブレストラン。きださんが好きな飲食体験がメインとなっているイベントです。

画像6

「MURDER」の面白ポイント
 ・「コース料理」と「電車」が進行として機能している
 ・「コース料理」のワクワク感と「次に何が起こるのか」というワクワク感

電車の仕組みは窓がモニターになっていて移動風景が映るという簡単なものだったそうですが、時間の経過を感じさせるやり方が面白かったと話されていました。

コース料理も電車も、そろそろメイン料理かなだったり、速度が遅くなってきたからそろそろ到着かなだったりと、参加者側が自然と時間進行について思いを巡らせるものを使ってタイムキープを行うという使い方がされていました。また、次は何かなというワクワク感にリンクして殺人などの出来事が起こるため、物語への期待もより高まったそうです。

③ 「Dinner is Coming」(@ロンドン)

メジャーなイマーシブではなく、地下イマーシブシアターというジャンル。
「Games of LOAD」のパロディで、最後にお客さんが役者の中から王様を選ぶという構成のものです。

画像7

「Dinner is Coming」の面白ポイント
 ・知っているキャラクター性と会話ができるという面白さ
 ・インディーズならではのむちゃくちゃ感
 ・「投票」を「しゃべりかけるツール」にしている

きださんの好きな体験のポイントにも挙げられていましたが、どう一体感を作り、参加のハードルを下げていくかということへのヒントとして2点、話されていました。

まず、大皿で料理が出てくるということで、必然的に周りの人とシェアしなければならないという一体感の作り方。そして、投票システムがあることによって役者は「俺に投票してくれ。そのためにお前を口説くぞ」と話しかけやすく、参加者も話しかけられる心の準備ができると製作者ならではの視点からのお話でした。

2. ひみつのバーを探せ


去年、きださんは謎を解いた人だけがたどり着けるひみつの喫茶室をこっそりオープンさせていました。その際に、秘密だからこその面白さと、秘密だからこその来店の少なさという経営の難しさの問題があったことから、世界でも同じような体験がないかと探して、実際に行かれた中からいくつかの場所を教えてくださいました。(写真はきださんがオープンさせた「ひみつの喫茶室」)

画像8

きださんが行った場所は、どれも予約の仕方が特殊だったり、一見普通のお店に隠し扉があったりという場所で、外の世界とは違った雰囲気の空間が展開されていることと、探し当てたという特別さが感じられる場所でした。行ってみたいという方へのきださんからのアドバイスは、「怪しい扉、壁、冷蔵庫は全部開けてみること(笑)」だそうです。

画像9

左上:Speak easy(@ベトナム)
右上・左下:The Dragon Chamber(@シンガポール)
右下:朝食バー(@ハワイ)

画像10

上:BACK BAR(@ハワイ)
下:Harry’s Hardware Emporium(@ハワイ)

ー体験をまず遊びに活かす『STAR UP COASTER』

ここまでお話をうかがってきたように、きださんはインプットの量が膨大なのですが、更にアウトプットにおいてもすごいと感じたのが次のお話でした。
ご自身が体験してきたことを、仕事だけではなく遊びにも活かそうと、ご友人50人くらいと行く、どこに向かうかわからないバスツアー『STAR UP COASTER 2020』を企画されました。

画像11

歌舞伎町のホストクラブで書初めをしたり、きださんが日本独自のイマーシブシアターだという“流し”の方が来る居酒屋に行ったり、花火をしたり。どうしたら非日常を織り込んだ感動体験ができるのかを考えて作ったという、これが遊びなのだろうかというレベルの企画に会場からはため息の声も聞こえました。
きださんの関連noteはこちら

画像12

きださんの圧倒的な体験ジャンキー具合に会場から感嘆のため息が漏れたところで、イベントはゲストのアフロマンスさんとのトークに移ります。

第二部:アフロマンスさんとのゲストトーク

アフロマンスさん

プロフィール2012年に、会社員時代の趣味として泡にまみれる泡パーティーを開催。250人の定員に対して数日で3000人以上の応募が集まるなど大きな話題となり、この経験をきっかけに体験型イベントの魅力に目覚め、その後パーティークリエイターとして、「マグロハウス」、「スライド・ザ・シティ」、「SAKURA CHILL BAR by 佐賀」などのイベントを開催する。最近では、映画「東京喰種トーキョーグール【S】」の公開に合わせて開催したイマーシブレストラン「喰種レストラン」が話題を集めた。

HP→Afro&Co.
Twitter→@afromance

まず、きださんからアフロマンスさんを第1回ゲストにお呼びした理由が説明されました。いわく、アフロマンスさんの作品は、体験イベントのきださおり的好きポイントがしっかりと考えて作られていると同時に、受け手にとって難しくないことが素晴らしいからということでした。

体験した後に必ずハッピーになれるというアフロマンスさんの作品の中から、今回は、マグロハウス喰種レストランいちごさんバスの3つのプロジェクトについてお話いただきました。

1. マグロハウス

画像13

アフロマンスさん曰く、「ハウスミュージックのDJをしながらマグロを解体するというイベント。以上!」という衝撃的なイベント。スシローのCMを見て、ハウスミュージックと合うのではないかと気づいたことがきっかけとおっしゃっていましたが、残念ながら会場の共感は得られておりませんでした(笑)。

そしてお気づきでしょうか。イベントの冒頭にもマグロが登場していました。そのことについて、マグロハウスへの布石だったのでは、とすかさずきださんに突っ込むアフロマンスさんでした。

2. 喰種レストラン

続いて、最近最も話題になった4万本の薔薇に囲まれながら血の美食を楽しむ「喰種レストラン」についてお話いただきました。

公式サイト⇒(https://afroand.co/ghoulrestaurant/

イマーシブレストラン自体つくるのが初めてだったと話すアフロマンスさんのもとに、映画配給元の松竹株式会社から喰種レストランをリアルに作れないかという依頼があったのが、映画公開の半年ほど前でした。
映画のプロモーションでここまで大掛かりなことをするのは異例なことで、今回の特徴となっている薔薇に囲まれたレストランという設定は原作にも映画にも登場しません。ただ、原作や映画を忠実に再現するだけでなく、モチーフとして取り入れながら、実際の体験として面白いものにするためにはどうすればいいのか?と考えた結果だそうです。その考え方について色々なポイントで聞いてみました。

画像14

イベントを行うにあたってアフロマンスさんが特に気を付けた点がこちら。
① 前売りでチケットを売り切る
② ネタバレを避けるための計算された口コミの誘導
③ イベントにふさわしいテーマ性
④ 物語と演技のバランス
⑤ 語りすぎないことで期待を高める

順を追って解説します。

① 前売りでチケットを売り切る

喰種レストランは、場所が非公開のシークレットレストランでした。そのため、当日券を売るということができず、前売りですべてを売り切らなければいけないというハードルがありました。イマーシブレストランという形態も初めてながらシークレットレストランという試みも初めてで、金額設定には悩んだそうです。結果、チケットは1万円になりましたが、実際に体験したきださんは安すぎると思ったという感想で、参加者の中にいらっしゃった喰種レストランに参加した方も深く頷いていらっしゃいました。

② ネタバレを避けるための計算された口コミの誘導

イベント開催側としては、口コミをしてもらえるというのはうれしいことですが、シークレットレストランという特性上、場所のネタバレは避けなければなりません。その誘導の仕方が秀逸だったときださん。

その鍵は、各自の席に置かれたメッセージカードにありました。カードには、「秘密のレストラン、喰種レストランの共犯者になりましょう」といったメッセージとともに花屋や雑居ビルの地下などの嘘の場所が書かれていました。それを見た参加者は「喰種レストランは〇〇にあった」とSNSに偽の場所の口コミをするという仕組みです。

この仕組みをアフロマンスさんが考えた理由は、人は内緒だと言うほど言いたくなる生き物だから、禁止するのではなく、口コミしたくなる文章をあらかじめ用意することで、口コミを広めながら守りたい部分はネタバレを抑制するということが可能になるためです。メッセージカードに書かれた場所はすべて特定できない場所か松竹関係の場所で、実際に探されても問題のない場所を選んだということでした。

この仕組みと“映える”写真が撮れるということで、これは絶対にツイートしたくなる、ときださんも大絶賛されていました。

画像15

③ イベントにふさわしいテーマ性

実は、喰種レストランのテーマは初期は違うものだったそうです。最初は原作や映画のイメージに添った廃墟にLEDが光っているというコンセプトで、図面やパースを作るまで進んでいたものの、プロジェクト開始から3ヶ月経ったあたりで本当にこれでよいのかと立ち止まり、コンセプトを一から練り直したと言います。

この時に考えたふたつの案のうちのひとつが、食の専門家にヒントをもらった高級レストランでも扱われる血液料理だったそうで、「4万本の薔薇と血の美食」という新たなテーマと、、予約の取れない人気レストラン「レストラン・エール」の山本英男シェフによる肉しか使わない斬新なコース料理が生まれました。

プロジェクト中盤で、一から考え直した理由をアフロマンスさんはこう語りました。
「僕の中で、なにかとコラボするときは、もともとのファンの人が行きたくなるのはもちろん、ファンでない人も思わず立ち止まり、行きたくなるものをつくるのを大事にしています。WOW感という驚きを大切にしたいと思っています」

きださんが参加を決めた理由も薔薇や雰囲気の高級感が印象的だったからだそうで、もし廃墟レストランだったら行かなかったかもしれないと言われるくらい、劇的な方向転換でした。

最高のものを作るための一切の妥協を許さない姿勢に会場は聞き入っていました。

画像16

④ 物語と演技のバランス

喰種レストランでは、コース料理が進んでいくにつれて物語が進みます。店員は全員が喰種という設定で、お客さんの中に一人仕込みの人がいて、その人が最後連れていかれて料理にされてしまうというストーリー。他のお客さんの反応や、こだわった箇所についてもアフロマンスさんにお話しいただきました。

楽しい、美味しいだけでイベントを終わらせないために、油断したタイミングでどんでん返しを入れたいという意図でストーリーを作られたそうです。特に仕込み役の人は自然にお客さんに紛れるために、集合場所からお客さんとして参加して、周囲とのコミュニケーションも不自然でない程度に取っていました。喰種の店員が大げさな演技をするようにしたのも、仕込み役の人をリアルに見せるためで、料理されてしまう瞬間に調理場に血まみれで姿を現す時もやり過ぎないように配慮したということでした。

気づいていた人もいたのではないかというきださんの質問には、体験イベントに慣れている人の中には気づいていた人もいたものの、それ以外の参加者はおおむね驚いていたという答えをアフロマンスさんが返し、純粋さが足らなかったときださんが反省する場面も(笑)。

画像17

⑤ 語りすぎないことで期待を高める

最後に一番のお気に入りポイントはなにかというきださんの質問には、情報を出さなかったことが企画として面白かったと答えたアフロマンスさん。

通常のイベントでは、どれだけ魅力的かという情報をひたすら出していくのに対し、喰種レストランでは、極力情報をそぎ落とすことで会場に着くまでのワクワク感を演出するという狙いがあったそうです。あえて情報を制限することで期待をあおる。そしてその期待を満たすためには、見せている情報の何倍ものこだわりを仕込むということを大切にされていました。

例えばヤマハの最新技術を使って生の音を鳴らしたチェロや、フラワーアーティストが作成したハーバリウム、押し花など、気づく人だけが気づくこだわりが数多く仕込まれており、そんなお話を聞いてもう一度行きたくなった人はきださんだけではないはずです。

3. いちごさんバス

画像18

続いて、普通はバスに乗っていちご狩りに行くところを、いちご狩りがバスに乗ってやってくるという逆転の発想で企画された「いちごさんバス」についてのお話です。

バスに乗り込むとまず1階でいちご狩りをし、その後2階に行くといちごを使ったアフタヌーンティーを食べられるというイベント。しかも車窓を流れるのは、原宿や表参道、渋谷といった東京の街並みです。

いちごさんバスの実現において大変だったこと
① 前例のないことに挑戦する大変さ
② 生のブランドいちごを扱う大変さ

① 前例のないことに挑戦する大変さ

きださんがまず質問したのは、クライアントのいるプロジェクトの大変さについてでした。喰種レストランの松竹、いちごさんバスの佐賀県と、アフロマンスさんのプロジェクトにはクライアントがいます。クライアントの意向もある中、自分がやりたいことの実現に対し、壁にぶつかることもあるのではないでしょうか。

いちごさんバスについては、コンペで、バスの中でいちご狩りをすることや、ツタの絡まったバスの外観イメージなどもすべて提案した状態での採用だったため、最初から大枠の企画に対しての反対はなかったそうです。今まで作ってきた作品がフィルターになっているから、自分に真面目なことを期待する人はいないと会場を笑わせるアフロマンスさん。PVにも遊び心が込められています。

画像19

ただ、前例のないことを実現するというのはなかなか大変だったようで、ギリギリまでせめぎ合ったのは、いちごのツタが絡まったバスの美術装飾ということでした。

街中を走るPR効果を考えればメリットもあり、当然、法律も遵守している。ただ、前例のないことをするにはあらゆるリスクを想定しないといけません。それを一緒に前向きなモチベーションで詰めていくメンバーがいないと実現にはたどり着けません。いちごさんバスのプロジェクトでは、制作側にも、クライアント側にも想いを共にできるメンバーがいたことが大きかったと話されていました。

画像20

② 生のブランドいちごを扱う大変さ

実際に参加されたきださんが特に驚いた点がふたつありました。まず、いちごという自分の力だけでは何ともできない要素をクリアし、しかもいちご狩りの名に負けないほどたくさんいちごが実っていたこと。そして、そのいちごがとてもおいしかったこと。おいしいものを食べる経験はやはりいいものだと再認識されたそうです。

いちごさんというのは佐賀の新しいブランドいちごで、高級でおいしい品種です。しかしそのブランドいちごをおいしく提供するためには想像以上の大変さがあったとアフロマンスさんは言います。まず、ブランド品種というのは長い時間をかけて作られたものであり、苗の管理はとても厳しいそうです。そして、ブランドのイメージをきちんと体現するいちごに育ってもらわなければなりません。

イベントに使用する予定のいちごは、こまめなケアを行っていたものの、生ものなので最終的には期日が近づかないとクオリティが判断しづらい。このようなハードルを乗り越えての開催だったそうです。

しかし、その大変さを乗り越え、いちごの香りで満たされたバスに足を踏み入れた瞬間、アフロマンスさんはリアルなものの力を再認識することになりました。作りものだけではただかわいいで終わってしまうものが生の力で感動になるのだという強い言葉で、イベントは締めくくられました。

画像21

4. 最大の失敗について

最後に参加者からの「最大の失敗は何か?」という質問には苦笑いで「スライド・ザ・シティ」だと答えられたアフロマンスさん。

画像22

もともとの権利を持っていたアメリカのチームとのライセンス契約に際して、国内5か所で開催することという条件がありました。しかし会場探しは困窮を極めたそうです。長さ300m、幅12mの坂道、というウォータースライダーの条件を満たす場所はなかなか見つからず、そうこうしている間に、スポンサー契約まで決まり、いよいよ追い詰められていきました。

そんな中、お台場の夢の大橋が条件に当てはまり、なんとか開催が決定。チケットは1万枚がすぐに売り切れたそうです。ただ、アメリカ人と日本人のノリの違いで、アメリカ人はどんどん滑るけれど、日本人は怖がってゆっくり滑るという事態が発生。本国から聞いていた時間などのシミュレーションとは大きく異なり、1回の体験に2時間待ちという300mのウォータースライダーよりも長い列ができてしまったというのがアフロマンスさんの最大の失敗だったそうです。

しかし、前例もなく、誰もやったことがないものを実現する時には何かしらの予想外のことが起きる。全力で予防しつつ、予想外のことが起こった時には、いかにリカバリーして実現するかだという発言に、アフロマンスさんが今後作られる体験イベントへの期待が高まりました。

以上、「体験ジャンキー#01」のレポートでした。

*****

第1弾から盛りだくさんの「体験ジャンキー」ですが、今後も開催を続けて、体験したイベントのレポートや、作り手の方々のインタビューを通してリアルな体験の価値を再認識できる機会を提供し続けます。

4/24(金)には「体験ジャンキー」番外編としてYouTubeLiveにて配信を行いました。
(アーカイブはSCRAP公式チャンネルから)

在は社会状況を鑑み今後の開催日時等は未定ですが、必ず開催をしますので、開催日やゲストについては詳細発表をお待ちください。

この記事が参加している募集

イベントレポ

ありがとうございます。面白い体験を作ることに還元していきたいと思います。