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森の中、鬼は一人

森の中に群生する

野生の百合

物語は動かない 解き放たれない 一途な思い

悲しい歌を唄い続けている

何を言えばいい 何を待てばいい

美しい水音 木の葉の風に揺れる音

遠い昔、ひとりの淋しい鬼が球根を植えた
誰も知らない 誰も訪れない 誰も気づこうとしない

深い森に宿る光 しんとした冷たい

野生の百合の甘い香り

夜の森 深い闇
夜の森 物語は動いていく

そもそも闇は
弱い者には優しいはずだ

強くありたい? 強くなりたい? 闇は怖い?

強くありたいから、闇は怖い、もがく

弱さに向き合うものの
本当の命

美しく匂う闇の
地上から伸びた樹木の間から星空

本当は知らなくていいことかもしれないのに
見上げて

一羽の蝶が百合の花
ひとつひとつの蜜を吸う

終わりない光に包まれて
地に落ちた木々の影は回る

淋しい鬼はひとりで死んだ

淋しい鬼はひとりで死んだ

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