娘に彼がいると聞かされた時、自分の心は予想と反して穏やかだった話

長女が生まれてものの未熟児で保育器に入った娘を見た時、

僕はこの子を守るんだと心に誓った。

そして寝付きの悪い子を抱きしめながら、

この子が旅立つまでは死ねないと直感したのです。


きっと、どのお父さんもそう思うんです。

なかにはその瞬間に、娘の結婚を心配するパパもいるとか・・


長女が2歳の時に、

僕は胃がんが疑われた時がありました。

もしものために、

僕はは子供にメッセージを録音しました。


君に父がいたことを、

父は君を愛していて、伝えたいことがたくさんあることを・・

残そうと思ったのです。


このことを実は妻は知りません・・・。


幸いに僕は生き延びました。

そして、次女と三女が生まれてくれたのでした。


周囲の人たちはみんなで僕にこう言ったものです。

「お父さん、将来大変ですね〜。お嫁に出す時は辛いですよ〜と・・」

確かに同じようなことを友人に行ったことあがある。


そして、あれから何年経ったことだろう・・・

娘たち3人は全く性格がちがってそだち、

長女は仕事につき、

来年は大学生の三女が成人式を迎える。


僕も歳をとったものだ・・・

白髪が増え、妻が白髪用シャンプーを買ってきた。


そして何年か前に

大学生の長女と高校生の次女に彼がいるということを、

ほぼ同時に聞かされたのです。


普通の父親はどうするのだろう?

怒るのかな?

悲しむのかな?


なぜか僕の心に怒りや悲しみはありませんでした。


その時に知ったんです。

世間で言われる娘の父親の気持ちは間違っていると・・・。

いや、僕の思っていた認識が違っていたと・・・。


昔聞いた

プリンセスプリンセスの『パパ』という曲を思い出したので、

暗いベッドルームでAppleミュージックを開いて、

数十年ぶりに聞いてみた。


知らないうちに、聞くスタンスが変わっていました。

あの頃は自分は第三者で、彼女とその父親とを想像したものだったが、

今や曲の主人公の父親になっていました。

これってすごい歌詞だったんだ・・・

30年経って知ったけれど、父親の殺し文句が詰まっている。


残念ながら、

僕の娘たちはこんな気の利いたことは言ってくれない。

でも、彼氏ができたと聞いた時、

実は僕は嬉しかった。

なぜだろう?


娘を認めてくれた人がいる。

娘を好いてくれた人がいる。

それだけで嬉しかったのだ。


なぜか娘は直接に俺には言わなかった。

妻から聞かされた時、

『お、やったじゃん、よかったね』

と返事した。


妻は少し僕に気をつかったようだった。

それをあえて払拭するように、

興味なさげに返事をしたのを覚えている。


よく、父親は不機嫌になると言うでしょう?

落ち込む人もいるとか言うでしょう?

でも、自分は嬉しかったのです。


その年のクリスマスには二人の彼氏を自宅に招いてクリスマス会までした。

心から楽しめたし、それから数年経ったいまも

二人とも付き合っていることが、すごく嬉しい。


彼の心が数年間本気でいてくれていることだけでも・・・・


でも、僕はとりあえず壊れると思っている。

なぜなら自分の恋愛もそうだったし、

そういう友達をたくさんたくさん見てきたから・・


でも、

そんなことこそ可哀想で娘には言えない。


いや、誤解しないでほしい。

壊れることを願っているのではない。

若い時の恋愛は不安定だという客観的認識だし、

自分や友人を思い出すにつれ、

20代の恋愛の行方は不安定なのが当たり前だと思うから。


そういう話をすると、

妻は笑って僕をみているんだけどね。


こんなふうに自分の中で自分に問いかける中で

気付いたのです。

20年前に、保育器の中の娘を守ろうと心に誓った時に、

バトンタッチできる人ができるまで・・という続きがあったことを。


そんなこと、

今でも、娘には言えません。

俺は娘の前では、いつも涼しい顔をしているから・・。


でも、心の中ではいつもつぶやいている。

『君は誤解しているかもしれないけれど、

僕が願っていることは一つだけなんだよ。

君を一生守ってくれる愛する人に出会えること。

それだけだよ』

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