ゆめのなかで逢ったひと

ゆめのなかで、たしかに   に逢ったことがある。けれど   の顔を忘れてしまった。ゆめのなかで、たしかに   に逢ったことがある。けれど   の声を忘れてしまった。ゆめのなかで、たしかに   に逢ったことがある。けれど   のことを忘れてしまった。やさしいまどろみのなか
、誰かに手をひかれて、天井のない白い家の  をくぐった。たしかにそのときまで、   のことを覚えていたのに、もう忘れてしまった。   がくれた優しさのすべてをしまいこんで、氷みたいに固めてとっておこうと思っていた。でもすべて 水の泡。手のひらから滑り落ちる色の無い液体ね。すべてもう  の中。飲みかけのままテーブルに残されたラムネのよう。グラスの中に残った甘い後味は、名前も知らない誰かの顔をして微笑む。

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