日本共産党は掲げている政策を実現する気がない
2023年5月に「日本共産党中央は、選挙で勝つ気がない」を書いたとき、末尾に「次回は、選挙のみならず、共産党が発表している政策に関しても、中央は本気で実現する気などない事を書く予定です。」と書きました。
ところが、その後、仕事が超多忙になったり、党大会での田村新委員長パワハラ問題などを書いていたこともあり、「予告」を実行できていませんでした。
というわけで、大変遅くなりましたが、日本共産党(以下共産党と表記)が、掲げている政策を実行する気などない、という事を書いていきます。
議員などの政治活動とは別の話
まず、気を付けていただきたいことがあります。
共産党には、国・地方をあわせ、多くの議員が日々活動しています。
そして、議会質問や担当職員とのやり取りを通じて、企業の違法行為を改善させたり、生活環境を改善したりしています。
これについては、何ら否定する気はありません。実際、筆者が党員時代に関わった共産党千葉市議団も、学校のエアコン設置をはじめ、様々な住民要求を実現してきました。
国会質問を通じて、大手コンビニの違法な給与支払をあばき、正常化させた、という実績もありました。
こう書くと、「政策を実現する気がない」というのは嘘だ、と思う方もいると思います。
しかし、筆者が主張したいのは、そのような要求実現運動や違法状態の告発・改善のことではありません。
共産党の政策として大々的に掲げているものについて、実現させる気はない、という事を書いていこうと思っています。
決定打となった「気候危機打開策」
何度か書いているように、2017年の総選挙総括から、共産党中央の発信を全面的に信用するのはやめることにしました。
そして、選挙総括・ネット宣伝方法・中央の体制などを批判する文書を作成して中央に送ってはいました。
しかしながら、問題は色々あるが、共産党中央が政治を変え、資本主義社会を超克しようと考えている、とは思っていました。
それがゆらぎ始めたきっかけは、2020年の綱領改定です。
それまで、長年の共産党支持者だったこともあり、綱領についても基本的に正しいと考えていました。
しかし、その改定された項目を分析し、ひいては綱領全体ならびに志位委員長(当時)による解説を読んだ結果、色々と間違いがあるのでは、と思うようになりました。
それについては別途記述します。
そして、自分にとって決定打となったのは、翌2021年に発表された「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」という文書でした。
書いてある「提言」の内容には、今でも基本的に賛成しています。しかし、最後の所まで読んだときは、強烈な不信感に襲われました。
結びの部分には
この文言も別に間違ってはいません。
究極的には、政治を変えるよりないのは確かです。しかし、ここでの「政治」とは、今の自公政権を変えるだけの話ではありません。
アメリカ・中国といった大国をはじめ、世界各国の政治を変えなければ実現しないのです。
それを変えていくには、書かれているように「私たち一人ひとりの決意と行動にかかっています」なわけです。
そこから始めないと、何も変わりません。
一人で「スクールストライキ」を行うことから始め、世界的な運動を築き上げたグレタ=トゥンベリさんがその代表格です。
ところが、この文書には「なら共産党は何をするか」というのは一言も書かれていませんでした。
全編にわたって、他人事として論評しているだけです。
実は、共産党は、日本の政党でもトップクラスの温暖化ガスを排出しています。
何しろ、毎日全国で赤旗日刊紙を配達しています。
かつて読んだ本には、それを運ぶトラックの移動距離は、一晩で地球何周分と書いてありました。
当然ながら、それだけの温暖化ガスを排出しているわけです。
しかし、それが全てではありません。
トラックは、拠点に赤旗を配送します。そこから配達する場合、徒歩や自転車の人もいますが、多くは車かバイクです。さらに温暖化ガスが出るわけです。
さらに、地域によっては、トラックが赤旗をおろした大拠点からさらに、「ポスト」と呼ばれる小拠点まで、赤旗を配送する「ポストおろし(幹線と呼ぶ地域もあります)」が必要となっていきます。
筆者が担当していた千葉市では、このポストおろしだけで毎晩40キロ以上も自動車が走っています。当然ながら、それに見合った温暖化ガスが排出されます。
これに加え、毎週1回は日曜版が同じような形で配送されます。
日刊新聞を出している政党は他に公明党しかありません。
それを鑑みれば、共産党は温暖化ガス排出量の多さで「二大政党」になっているわけです。
先述したように、抜本的な解決を実現するには、米中をはじめ、世界各国が目先の利を捨てて温暖化対策を行う必要があります。
しかし、それは即座にできません。ならば、この「宣言」において、まずは共産党自らが温暖化ガス削減を実行すると宣言し、数値目標を発表するのが当然です。
この発表のしばらく前に赤旗電子版が発行されるようになりました。温暖化ガスを排出せずに赤旗が読めるようになったわけです。
ならば、「温暖化ガス削減のため、日刊紙は遅くとも2025年までには完全に電子版に移行する。日曜版についても、同様に電子版化をすすめ、2028年には配達による温暖化ガス排出をゼロにする」とでも発表すれば、「本気度」は伝わってきたでしょう。
しかし、そのような「自らの削減目標」がない以上、本気で温暖化ガスを減らす気があるのだろうか、と疑わざるを得ません。
なお、2024年に行われた第29回党大会決定では、
などという一文まで入っていました。
今後も、毎晩・毎週、トラックを地球何周分も走らせて、温暖化ガスを排出し続けると宣言したわけです。
温暖化に対する危機感など、本気で持っていない事がよくわかります。
なお、この「提言」には「口先だけの自公政権」という文言がありました。それを否定する気はありません。
しかし、自らの温暖化ガス排出削減について何ら言及しない共産党も、自公と同様「口先だけ」なのです。
他の提言も実現の具体性はない
共産党は、このような「大型政策」を年に1回以上発表しています。
最近では、経済再生に対する提言と、ローカル線問題に関する提言を出したと記憶しています。
それらは、「気候危機を打開する日本共産党の2030戦略」とは違い、共産党としての数値目標が必要なものではありません。
とはいえ、それらの「提言」にも、「どうやって実現させるか」という具体策は一切ありません。
ただ言っているだけなのです。
もちろん、少数野党なのですから、掲げた政策が簡単に実現できないのは当然ではあります。
しかし、「提言」を出した以上、与党も含めた他党と一致点を作り上げ、具体的に実現する道を探るのが当然です。しかし、そのような話は赤旗にも載ったことはありません。
ローカル線問題に関する提言においては、廃止の話がある沿線自治体に国会議員などが訪れ、首長に提言を見せて懇談する、という政治宣伝を行っていました。
来るならば歓迎せざるを得ませんが、具体的に実現させる方策のない提言を見せられても、受け入れた首長にとっては時間の無駄でしかなかったのでは、と思っています。
ならば、実現不可能な「提言」など、作るだけ時間の無駄です。
冒頭に書いたように、議員には一定以上の実行力があるのですから、その範囲におさまる政策だけを発表すべきでしょう。
ジェンダー不平等・ハラスメント蔓延政党が主張する「ジェンダー平等・ハラスメント撲滅」
他にも、いくつか立派な内容の政策を出してはいます。
しかし、その中には、共産党の中ですら実現できていないものが多数存在します。
代表的なのは「ジェンダー平等」と「ハラスメント撲滅」です。
既に書きましたが、党内は完全な男性優位です。セクハラ・パワハラがあれば、加害者が丁重に守られ、被害者には二次加害が加えられます。
杉並・草加・富田林の例が有名ですし、最近では第29回党大会における、田村新委員長の「公開パワハラ」がありました。
先日も、蕨市でハラスメント被害を受けた議員が離党しています。それに対する共産党の発表に「加害者を処分した」という文言はありませんでした。
ハラスメント対策を行っている一般企業よりもずっと前時代的なのです。
そのため、一度ならず、「党内にも弱点がある」などと言い訳を発表しているわけです。
当然ですが、自分の組織内でできないことを、社会で実現できるわけがありません。
特にこの2つについては、早急に対外的な政策から削除すべきです。
実際、宣伝を信じて「ジェンダー平等」「反ハラスメント」だと思い、選挙などで共産党に協力した方が、ジェンダー差別やハラスメントを受けたという事例が発生しています。
ジェンダー不平等かつハラスメント容認政党である共産党が「ジェンダー平等」だの「ハラスメント撲滅」だのを自称するのは、社会にとっての害悪でしかありません。
党内で雇用している人の時給は1,500円未満なのに「最賃1,500円」を主張
ジェンダーやハラスメント以外にも、共産党は実現させる気のない政策を大々的に宣伝しています。
代表的なものに「最低賃金を1,500円以上に」があります。
国会質問をはじめ、何度も「最賃1,500円以上」を宣伝しています。また、赤旗には「最低生計費には時給1,600円以上」などという記事を何度も書いています。
しかし、それを実現させる気など毛頭ありません。
この証明は簡単です。共産党は赤旗を配る人に「時給1,500円」を払っていないからです。
ネットでもよく批判されますが、赤旗を各家庭に配る人の「配達援助金」は想像を絶する安さです。一日一軒あたり20円を割っています。
時給1,500円を得るには、1時間で75部以上配達しなければなりません。しかし、現実的にそのような事は不可能です。
ただ、赤旗配達については「政治活動」という建前があるので、このような超低報酬でも労働基準法違反にはなりません。
とはいえ、このような「配達援助金」で配られている赤旗紙面に「最低賃金1,500円を」などと書いても、絵空事であるとしか言えないでしょう。
また、赤旗配達の中にも、「政治活動」扱いでないものがあります。
それは、温暖化ガスの話でちょっと触れた、大拠点から小拠点に赤旗を一晩かけて配る「ポストおろし(幹線)」です。こちらは、「政治活動」になる配達と違い、雇用契約という形を取っています。
したがって時給が設定され、所得税も天引きされます。
しかしながら、少なくとも筆者が関わった事例において、その時給は1,500円に程遠いものでした。深夜の業務ですから、25%割増になるのですが、それを加えても1,500円に届きません。
対外的に「最賃1,500円」を公約しているなら、自らが雇用しているポストおろしの方々の時給を「いますぐ全国どこでも1,500円(※深夜割増を含めると1,850円)にするのが当然です。
それを党内で実現していないのに「全国どこでも最低賃金1,500円を実現させます」と言っても、全くもって説得力がありません。自分の組織内でできない事を社会全体で実現できるわけがないのです。
もう一つ指摘したいことに「幹部防衛」という任務があります。
志位議長などが千葉に来ると、「防衛部長」だった筆者に「防衛要員を集めろ」という指示が来ました。
それを受けて筆者は、10数人に頭を下げて、演説会場に行って行列整理などをしてもらいました。
それに対する「報酬」は交通費のみです。
共産党の「全国どこでも最低賃金1,500円」という主張が本気ならば、この人たちにも、一時間1,500円以上の報酬を払うのが当然でしょう。
公選法では、労務提供の報酬の上限は1万円と定められています。拘束は長くて6時間くらいですから、時給1,500円で日当9,000円を払っても何ら問題はありません。それを払っていないのです。
年収何千万もの中央幹部が、一台700万円以上する高級車で演説会場に乗り付け、その幹部のために、ほぼタダ働きで何十人もの党員が「防衛任務」を行うわけです。
日頃、共産党が批判している「格差社会」と同じことをを党内で実施しているのです。
なお、これらの賃上げの財源の問題があります。
その解決法は簡単です。共産党は日頃から「大企業・富裕層の負担を増やし、それを賃上げの原資にする」と主張しています。
共産党における「富裕層」は、年収二千万の志位議長を筆頭とする中央幹部です。
2020年の現金10万円一律支給のとき、小池書記局長は、当初「自分は受け取らない」などと、その裕福さを自慢していました。
ならば、その人達の負担を増やし、それを賃上げの財源にあてればいいだけの話です。
特に、「防衛任務」については、防衛される幹部が、防衛してくれる方々に、時給1,500円相当の費用を共産党に寄付して支給の財源にすればわかりやすくなります。
それで足りなければ、昨年の東南アジアや一昨年の欧州のような、不要不急である中央幹部の海外視察をやめるなど、浪費を削れば財源は生み出せます。
かつて筆者は共産党を「本気で政策を実現させるつもりがある」と信じていました。それだけに、この矛盾には悩まされていました。
とりあえず、「社会を変えるという意志と計画を持っているが、それを実現させる財力がないから、地域で活動している党員・地方議員・専従勤務員が劣悪な労働条件で頑張るのも仕方ない」と自分を納得させていました。
しかし、政策を本気で実現させる気がないと理解した今では違います。
その本質が「低賃金・劣悪労働条件で末端の党員・地方議員・専従勤務員などを搾取して、一部の大幹部だけが優雅な暮らしをするための仕組み」であることを確信しています。
旧ソ連や中国の社会主義は「国家資本主義」という指摘があります。共産党の実態も同様に「政党資本主義」なのです。
党内で実現してから、「政策」にすべき
ここまで書いたように、共産党の主張する立派な政策の多くは、党内で実現できていません。
自分たちが運営している組織内でできないことを、社会で実現させることなど不可能です。
そのような絵空事の政策を掲げて支持を得ようとすることは、市民を欺く事になります。
冒頭に書いたように、各議員レベルでは、要求実現・違法状態の解消などの「実績」はあり、それについては、筆者も今でも敬意を持っています。
宣伝する政策もその範囲での「身の丈にあったもの」にするのが、市民に対する誠実な態度です。
かつて所属していた身としての自戒も込めて繰り返し言いますが、自らの党内で実現させる気が毛頭ないような事を政策として宣伝するのは、いますぐやめ、それらの政策を撤回すべきです。
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