地方で頑張るIT勉強会

この記事は地方IT勉強会 Advent Calendar 2019 25日目の記事です。

私がコミュニティ活動を初めて10年たったこともあり、その中で感じたこと、学んだことを12月25日(誕生日)を期に自らの記録として残そうと思う。私の場合はコミュニティ活動では運営に途中参加するという事は少なく、始める側がほとんどであったためコミュニティリーダーとしての経験やコミュニティ作りのお話を中心にするのでお付き合いください。

なお、運営に携わっているコミュニティはこちら

エフスタ!!が10年、東北TECH道場が5年、郡山クリームボッックス楽団は運営に参加し5年ほど経過している。郡山クリームボックス楽団についてはIT勉強会ではなく、クリームボックスというご当地パンによる町おこし団体であり自らのITの知識を地域に活かしたいと考え参加している。

なお、立ち上げてやめてしまったコミュニティとしては、code for KORIYAMA、HTML5j Tohokuがある。始めた責任もあり後ろめたさが残っているが、取り組んでいた内容はエフスタ!!に集約して活動しており、今考えてみると正しい選択であったと思っている。

一番長く活動しているエフスタ!!がどんなものなのかについては他の方のAdvent Calendarを読んで頂ければ理解できると思う。

なぜ勉強会を始めたのか

10年前、福島県には勉強会がほとんどなかった。よって福島に住む自分自身も他の勉強会には一度も行ったことがなかったが、その数年前から社内で勉強会を開催していた。その動機としては、インターネット全盛となりスピードや情報量が一気に増した世の中で、会社が取り残されるのではないかという危機感からだった。空気が読めないかつ無鉄砲だったのだろうが上司の相談することもなく想いにまかせて開催していたのを覚えている。当時の私は福島で成長するためには、東京レベルの環境に身を置く必要があると考え、そういった機会がある会社であり、福島にすべきだと考えていた。これは自分の中で今もぶれていない。数年間社内勉強会を開催し様々なチャレンジをしたが、内から変化を促すには私の力不足もあり変化のスピードが足りないと感じていた。そんなタイミングでマイクロソフトの方のお誘いで当時のCEOであるスティーブ・バルマー氏が来日するイベントで直接質問できる機会を頂いた。奇跡的にググったらまだ記事が残っていた。

そこで地方の企業とグローバル企業のエンジニアに対する価値観の違いを目の辺りにしたのが第一の衝撃であった。それは未だに日本がグローバルで後塵を拝している理由にもなっていると思う。そして、参加者の方に誘われて懇親会に参加した際にエンジニアの方やその上司の方々が日本を見ているのではなく世界を意識した会話をしていることに驚き、会社や東京だけを見ていた自分のちっぽけさを感じたのが第二の衝撃だった。そうして福島に戻った後は、会社という自分の足元を見るのではなく、外を見ていこうと決意し、福島のエンジニアに私と同じ経験をさせたいと思ったのが勉強会を始めた理由の一つである。いても立ってもいられず突き進んでいったのを覚えている。

なお、この時点で私は他の勉強会に一度も参加したこともなく、インターネットでおやつを出す事を知ったり、ライトニングトークってなんだ?と調べながら企画を進めていったため、現在のエフスタのライトニングトークが謎仕様である理由にもなっている。銘菓を出す時間も継続している。

その後、初めて勉強会を開催したのが2010年の1月、自分思い描いたとおり、いやそれ以上の成果が出て、これからだという2011年3月11日に東日本大震災が起きた。自らの命の不安も感じた時期であったが、勉強会についも絶望感を抱いていた。震災時には1ヶ月後の2011年の4月に勉強会を開催予定で告知していたが、住めるかどうかもわからない福島では中止しかないと思っていた矢先、勉強会の参加者や他のコミュニティ、講師の方から励ましや支援物資など頂き開催するモチベーションが復活したのを鮮明に覚えている。そして放射能問題のなか、福島にお越しになった皆さんには未だに感謝と感動以外なにもなく、これをきっかけとしてより福島をより輝かせたいという思いを強くしたのは言うまでもない。勉強会で出会う人々の絆は、仕事上の関係よりも深い、それは同じ想いを共有する事ができるからだと感じる。本当にに素晴らしい。

地方の勉強会の特徴

このように地方の勉強会は特定の技術のスキルアップ、仲間作りを目的としたものより、地域をより面白くしたい。地域を輝かせたいという地元愛がベースとなっているコミュニティが多いと感じる。多くの場合は東京の恵まれた現状を見て、地元にも場を作りたいという方が発足させているのではないだろうか。福島も現在は月に1度くらいはどこかで勉強会が開催されるようになったが、それでも学びたい技術がすぐそこで学べる環境ではない。地方の勉強会は出席率が非常に高いのも、機会が少ないため勉強会という機会を大切にしているからに違いない。エフスタ!!も毎回ほぼ100%の出席率である。

エフスタ!!は地方の勉強会であるが、東京や福島(郡山市、福島市、いわき市。会津若松市)、北海道や仙台でも勉強会を開催している。いろんな場所に就職等で羽ばたいた福島県出身の方や福島にゆかりのあるエンジニアが中心となり、全国で福島の勉強会を開催することで、エンジニア同士の交流を促し震災復興につなげるため自主的に始めたものであり、地元愛の結晶であると感じている。人の力と絆は本当に素晴らしい。そして、北海道にはさすがにたまにしか行けない。そう、地方の勉強会には地元愛が根底にある。

コミュニティリーダーとして

まず、私はITが大好きなのは言うまでもないが、ゼロからイチを作るのが得意なタイプであり、同じことを続ける仕事には向いていない人間だと思っている。人には得意不得意があり、苦手な事や気持ちが入らない仕事を無理してするのではなく、向いている人に任せる方が合理的であると思っている。日本企業のマネージャーは万能が求められている場合も多と思うが、それは才能を無駄にしている場合も多くあるはずである。

コミュニティを始めるに当たり、生みの苦しみという言葉もあるが、最初は期待も不安も混在し、最初は苦労するものである。それを楽しめるかどうかはリーダーにとって大事な要素であると思う。コミュニティ運営はドMの集まりという言葉もあるがそれは一理あると感じる。

地方で頑張るIT勉強会というタイトルではあるが、実は頑張るという言葉はあまり好きではなかったりする。そもそもプライベートの時間で行うコミュニティは頑張らないといけないくらいであれば継続できない場合が多い。コミュニティ作りは楽しむ事が何より大事である。楽しいからこそ参加者もスタッフも増える。しかしながら、これは持論であるがコミュニティリーダーはそれだけではダメであり、目的やゴールのビジョンを明確にし、それに向けて突き進む気持ちが必要である。

目的とゴール

当初は前述の通り、福島で成長できる場を作る事から、震災後はより福島を輝かせたいという想い、現在は地方の課題である急激な人口減少に対しての解決策であると考えている。地方では若者の流出と高齢化が進んでいるのは周知の事実である。私も学校を卒業する際には東京で自分を試したいと思っていたし、就職してからもその想いは色あせていない。なぜかと問われれば、IT業界に力を注いでいる人であればこの劇的な進化を面白いと感じるはずであり、イノベーションはITテクノロジー抜きではもはや考えられない。その激流のより先頭に居たいという気持ち、それを実現できない(自分が成長できない)と感じた時のフラストレーションは我々エンジニアにとって並大抵なものではない。それが日本の中心である東京でチャレンジしたいと思う理由であると思う。

しかし、仮に東京に行ったからといって、自ら理想とする仕事ができるとは限らないのは今も昔も同じであるし、インターネットが普及し場所という概念が薄くなっている現在は「チャレンジ」できる場があればその欲求は満たされるはずである。チャレンジでき、好奇心を満足できる場所があれば、若者もその場にいながらにして成長でき、結果として地方の課題が解消されるはずである。大げさかもしれないが「福島にGoogleやFacebookのような会社を生み出す」事をビジョンとして掲げている。ビル・ゲイツもスティーブ・ジョブズもマーク・ザッカーバーグも一人の若者が世界を変えていく事を証明している。地元にそんな人や会社があったらと想像してみてほしい。誰もがワクワクするはずであり、地方の課題である学生の働きがいや夢を実現できる場所が生まれる。そのビジョンに、コミュニティが一役買える事ができるのではないかと思っている。なぜならば勉強会を通して参加者の心が動くところを見てきたからである。

参加者の心が動く場

学生が勉強会に参加し凄いエンジニアと出会う事で、刺激を受け高い目標ができたり、地方だけでは知ることが出来ない世の中の尺度が知れる。いざ就職した際にその企業がチャレンジしてない風土であれば、課題意識をもちチャレンジする企業に生まれ変わらせるかもしれない。そうでない場合でも見切りをつけてチャレンジできる企業に転職するのも、起業するのであっても本人の成長に繋がり日本のIT業界全体にとっても良い事である。

何が問題であるかというと「変化を恐れ、チャレンジしない事」であり、それが成長を止めエンジニアだけでなく日本のIT産業が停滞させるからにほかならない。これまで地方においては業績が安定している企業ほど、これまでチャレンジを恐れてきたと思われる。NHKなどを見ているとようやく日本の経営者がチャレンジしなければ、ITのイノベーティブなパワーによってどの業界も一寸先どうなるかわからないというコメントが報道されるようになってきたのは朗報であると思っている。

長くなってしまったが、学生や社会人がITという面白い道具(おもちゃ)を使ってチャレンジしようとする気持ちを少しでも育む事がコミュニティにはできる。一般的には会社の中の尺度で生きていくと社風に流されてしまう人材になってしまうが、勉強会を通して外の世界を見る事で、世の中の自らの市場価値を意識するような人材になれからである。そういう機会(勉強会)を継続して作り続ける事で、将来のザッカーバーグが生まれると信じている。人の心を動かすことがコミュニティの力であると考えている。

持続的コミュニティ

ここまで述べたとおり、私が考えるコミュニティの主眼は地域の活性化である。そのための人材育成の機会である勉強会という入り口はもちろんであるが、産官学連携の橋渡し役として自治体とタッグを組み、地域のIT産業の育成や、学校と共に学生の成長を促す事を意識して活動している。そのため多方面からの信頼を得る必要があり一朝一夕では到底できるものではなく、継続的かつ少しでも前進するコミュニティでなければならない。

私が勉強会を始めたばかりのとき勉強会で著名な方から「毎年歳をとらないコミュニティとすべき」と言われ気持ちが引き締まり今も意識している。現在は古株メンバーは着実に歳を重ねているが、参加者は学生が半数、新規参加者もそれなりにおり、10年経過しても運営メンバーも入れ替わり立ち代わりで、思ったほど歳はとっていない。よくコミュニティの後継者問題を挙げられるが、私は最近は無理に後継者を作る必要な無いと思っている。誰でも人の作り上げたものを継承するのは大変だし、そこにイノベーションは起きない。また、ゼロからイチをつくる人間が現れればよいだけの話である。それはきっと地元愛が強く勉強会に参加するような人間だと思っている。

コミュニティから学んだこと

これまで多く人と出会う事で、多くの事を学んできた。

現在はコミュニティ運営の経験を活かし、仕事でも福島の企業版コミュニティの運営も行っている。これまでの経験や人脈なしでは出来なかったと感じている。ここでの私の目的も地域活性化に繋がる福島発のイノベーション創出である。本業でも新規事業の部署となり、学生がチャレンジでき働きがいのある場所作りを行っている。歩みは遅いが着実に目的に向かって進んでいる。

最後に

コミュニティ運営において、想いを共有する仲間は絶対に必要であり、コミュニティが前進できているもの、運営スタッフという心強い仲間がいたからに他ならない。その仲間への感謝の気持ちを忘れず、今後も楽しく目的意識をもって運営していきたい。この場をお借りして心より御礼を言いたい。

なお、ITコミュニティ「エフスタ!!」は、初心者ファーストで誰でも参加しやすく、懇親会まで含め楽しかったな〜と感じてもらえる事を目指して運営しています。ここでは堅苦しい書き方になってしまいましたが、私はみんなからポンコツと呼ばれていますし、勉強会の雰囲気も温かいと思いますので、2020年はぜひ一度福島の勉強会にぜひ起こし下さい!

それでは皆様、良いお年を!

2020年も地方のIT勉強会を盛り上げていきましょう!!

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