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【communication design store おおきな木】なぜ、福祉施設は紙製品をつくるのか。

私は福祉施設で行われる自主生産品のアドバイザーをはじめて、今年で12年目。その中で出会った福祉施設の紙製品は数知れず・・・、そして御多分に漏れず紙製品は売れない。

それでも、なぜ、福祉施設は紙製品をつくるのか。

実は2年前の3月に『表と現アーツプロジェクト』の一環で、このテーマで公開!商品企画会議というトークイベントをやったことがありました。

デザイナー、コーディネーター、バイヤーという立場の三人に登壇してもらって、貴重な機会でした。

〇制約を明確にする
〇どこまでを自分たちがやるのか
〇どこで売るイメージか

こうした条件を設けてからはじまる商品企画であったら、どうだろうかというトークイベントでした。

この場では、商品化することが前提での話でしたが、なぜ紙製品を作りたいのか。

それは、手数が多いから。巧緻性の高くない作業がたくさんあるからなのです。

紙製品の多くは、牛乳パックのリサイクルです。

牛乳パックを回収にいく、洗う、乾かす、コーティングを剥がす、ちぎる、ミキサーにかける、紙をすく・・・

この間にももう少し作業があると思いますが、これだけの工程があるということに意味があります。

様々な障害のある人が通う福祉施設。等しく同じ作業を皆ができるわけではなく、特に障害が重いと言われる方たちの仕事づくりに余念がないというところがあります。

・・・

数年前に、豊島区にある目白福祉作業所・生活実習所にて、メジロックというブランドを立ち上げ、既存の商品企画をブラッシュアップしていく機会に、商品というよりまずは作業として、紙製品を作るということは継続していった方がいいかどうかを現場に問うたときに、紙の作業がなくなるとできることが少なくなるという理由で継続していくことにし、さらに、作っている商品を見直す機会がありました。

それまでの商品ははがきに何かの装飾をくっつけて販売したりしていました。そしてそれが売れないという話でした。

むしろ何もつけず、色を利用者の方たちとつけてみて、その出来上がった色にタイトルをつけたりして、そのままを販売してはどうかという話になりました。

サイズは、はがきサイズという規格にそろえて・・・3枚セットで販売する。
余計な装飾をせずに、利用者の方たちと色を楽しむという方向に切り替えてできたのがこちら。

素朴な風合いとメジロックのコンセプトのイメージがぴったりな商品になりました。さらにこれの発展形がこちら。

1枚の小さなカードと、封筒、シールのセット。
なんてことのない商品のようで、実はすごく需要の高いモノではないかと思います。


さらに、全く実用的ではない商品も作っています。(オンラインショップには載っていないのですが)

紙ふぶき

紙ふぶきです(笑)

これは「ロック」なメジロックならではの商品になりました。

ちぎるのが得意な利用者の方を見た、デザイナーのウミノさん(MUTE)が思いついたところから始まりました。

最初からそうでしたが、現場の人は価値と思えないようなことも、デザイナーの視点から面白がって引きあがった例がいくつもあります。

この紙ふぶきは、お祝いの席で紙ふぶきを撒く依頼をうけることもあり、とても広がりや可能性を秘めた商品です。

・・・・・・
そして、今回、オンラインショップでははじめて、板橋にあるあしたの風という施設の紙製品もアップしました。

このサイズのまま、紙として販売したことがなかったそうですが、大きな白い紙の需要はあるはずでこれもまた加工をしない方法での販売を実験的にやってみようということになり、今日サイトに載せました。

やっぱり、アーティストやデザイナーはこの紙に可能性を見出してくれています。画材屋さんで販売してるコットンペーパーよりも安く、こんなに手感の感じられる風合いの紙は逆に普通販売されていないので、こうしたものを求めている人に届けば喜ばれるのではないかと。

そして、なぜ紙をつくるのかの模範解答のような文章をこの施設のスタッフが書いてくれました。

❝紙すきプログラムでは、最初は市販されている紙すきキットを使って、牛乳パックからハガキを制作していました。当時の市販のキットで作るハガキの出来を見ると、「販売なんていつ実現するのやら・・・」という状況でしたが、利用者さんの通っていた特別支援学校から道具を借りて、どうしたら質の良い紙が作れるのか、どういう道具が利用者さんにとって使いやすいか、などを考えながら試行錯誤を重ね、オリジナルの紙すき道具を制作しました。オリジナルの道具で作るからこそ、耳付きの一点ものの手漉き紙を作ることができています。また、利用者さんの特徴に合わせて、フィルムはがしや紙ちぎり、紙をすく作業、水気を抜く作業といった各工程に分かれて、ほとんどの利用者さんが自分の得意な工程に関わりながら、みんなで作っています。❞

実はこの文章は、商品紹介をというオーダーで書いてもらったものですが、オンラインショップの商品の説明にならないと思って、noteに書きました。

お客さんにとって、その商品そのものを知って購入したいわけですから、このプロセスについては知りたいと思ったとしても後にほしい情報です。

ですが、こうした説明が先に出てくるのは、福祉の現場にいるスタッフだととても多いことです。

それくらい、プロセスが大変だし、大事なんですね

KOMONESTのTEMA♻TEMAも同じ理由です。


商品じゃなかったら、いいのですが、商品だとすると、売れなくてはならないという話なのですが、紙は汎用性が広すぎて、とっちらかりがちなのです。

今回は、紙の大きさが大きい、白いということから需要を考え、画材として販売してみるということを思いつきました。


できれば、売れて、需要に合わせて商品を作るというサイクルになれば、現場の利用者の方たちもやる気が湧いてきます。

そうすると、マーケットも少しは意識しないとならないのです。

〇制約を明確にする
〇どこまでを自分たちがやるのか
〇どこで売るイメージか

そうすると最初に紹介した、商品企画会議の議題の真ん中にあったこのことが必要になります。

現場では作業提供という支援がスタッフの仕事でありながら、売れる商品をつくる商品企画や営業や広報を兼ねてるという状況が多いので、できれば外部と協働していくのが望ましいのではないかと思います。

そういった側面から支える一環として、オンラインショップを活用していきたいと考えています。
















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