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インフルエンザワクチンは、なんで毎年接種するんですか?

年賀状の準備、始めました。

毎年毎年、けっこうギリギリになってしまうことが多いですが、今年はいつもより早いスタートかな、と思っていたら、もう12月も1/3が過ぎてました。でも大丈夫、追い込まれるとやるタイプです(それがダメなんですよね)。

我が家のタローくん。
来年の干支にちょうど良い茶トラなのですが、なかなか上手くいきませんね。


前回は、2021-2022シーズンのインフルエンザ予防接種の記事を書かせていただきました。それから約10日が経過したわけですが、当院ではインフルエンザ患者はいまだ0人です。年内はこのまま落ち着いた状況で過ごせそうですね。

インフルエンザワクチンはなぜ毎年接種する必要があるの?


ところで、「インフルエンザ予防接種って、毎年うける必要があるの?」と思ったことはありませんか?麻疹やBCGとか、子供のころに接種するだけ良いものもあるのに、インフルエンザは毎年。免疫が落ちてしまうとか、流行るインフルエンザウィルスのタイプが異なるから、という説明をよく聞きます。私自身も少々疑問に思っていたところがありました。そんな疑問に答えてくれた講演会に2019年に参加しました。前回に引き続き、インフルエンザワクチンについて書いてみようと思います。

インフルエンザワクチンは、スプリットワクチン

杏林大学保健学部臨床検査技術学科 教授 小林治先生のお話でした。
いきなり結論ですが、インフルエンザワクチンは、形質細胞に抗体を作らせた状態にさせておくための、スプリットワクチン、というものなんだそうです。と言われましても、なんのこっちゃ?ですよね。すこし勉強してみましたので解説したいと思います。

ワクチンには、今までは大きく分けて生ワクチンと不活化ワクチンでした。この2タイプは、ご存知の方も多いのではないかと思います。

生ワクチンというのは実際の病原体を弱毒化させたものを接種します。ですので、時々その弱毒化されたはずの病原体が原因となり、発症することがありました。しかし、身体全体にわたってしっかりとした強い免疫を獲得できます。代表的なものだと、麻疹、風疹、BCGとか。話が脱線しますが、風疹は妊婦さんが感染すると胎児にも影響し、先天性風疹症候群というものを発症させます。ですので、感染もさせない、というくらいのより強い免疫が獲得できる生ワクチン、ということになります。

不活化ワクチンは、その名のとおりウィルスを死滅させた状態のものを接種します。これにより、発症する副作用は減少しました。さらにその不活化ワクチンは不活化全粒子ワクチンと、不活化スプリットワクチンにわかれます(恥ずかしながら、この講演会で知りました)。不活化全粒子ワクチンは不活化されたウィルス自体を接種するワクチン。日本脳炎ワクチンとか。不活化スプリットワクチンは免疫にかかわるウィルスの一部分の蛋白質のみを含んでいるもので、インフルエンザワクチンは不活化スプリットワクチンになります。このワクチンを接種すると、抗体産生の役割をもつ形質細胞が活性化され、形質細胞の表面にたくさんのIgG抗体が発現し、いつインフルエンザウィルスが侵入しても対応できるように準備万端な状態になります。しかし、この状態は3~4か月程度しか持続しないため、形質細胞表面の抗体は消失してしまいます。この不活化スプリットワクチンの良いところは、全粒子ワクチンに比べて余計な蛋白質などの成分を含まないため副反応が少ないことですが、形質細胞でのIgG抗体産生以外の免疫系への働きかけは弱いと報告されています。インフルエンザウィルスは上気道粘膜で感染・増殖するため局所免疫にかかわるIgA抗体も感染予防に重要な役割があるのですが、そのあたりへの効果は弱い、ということになりますね。

ワクチン接種により、形質細胞に特異的なIgG抗体が発現し、感染症に対して準備okになる、この状態は約3、4か月続き、何事も起こらないとまた休息した状態へ戻る。
頑張ってイメージを図にしてみました。


以上のことをまとめてみると、インフルエンザワクチンを毎年接種する必要性と、接種してもかかる可能性があるということが良く理解できました。

インフルエンザウィルスは感染して発症するまでの潜伏期間が1~3日と非常に短いため、ウィルスが侵入したときに形質細胞が休息状態であった場合、抗体を産生している間に発症してしまうということになります。ですので、終生免疫を獲得しているとしても、ワクチン接種であらかじめ抗体産生を促しておけば、たとえ感染しても症状を軽くすることができたり、重症な合併症を防いだり、という効果は十分に期待できるわけですね。

新しいワクチン、mRNAワクチン

さて、生ワクチン、不活化ワクチンが主流であった予防接種(ほかにもありますが)ですが、新型コロナウィルス感染症に伴い実用化されたのがmRNAワクチンという新たなワクチンです。このワクチンは、いままでのワクチンと比べて素晴らしい効果を示しました。しかし、副反応の報告もやや多い印象です。このワクチンについては、今後さらに研究が進められていくことと思います。その結果、もしかしたらインフルエンザワクチンも、研究がすすみ安全性が改善されれば、このようなワクチンに置き換わっていくかもしれません。安全でより効果的なワクチンが開発されることを期待したいです。日本の製薬企業も頑張っています。私も今度はmRNAワクチンの勉強をしていかないと、ですね。

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