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地球のはなし クラマスフォールズ

 先月の中ごろ、地熱の研究会が、アメリカ・オレゴン州の南端、カリフォルニア州との境界に近い、クラマスフォールズという町であった。

 今年の年明け早々、私にも案内が来た。それはよいとして、その手紙に添えられていたプログラムを見て驚いた。というのは、私も講演することになっていて、しかも、印刷されているテーマは、私の専門と無縁ではないにしても、かなり隔たっていたからだ。
 すったもんだしたあげく、テーマを変更して、なんとか責を果たしたのだが、実は、白状すると、この町の名前は私の記憶になく、もちろん、この町が地熱の町であることなど、知らなかったのである。
 別府とは比べものにならないけれど、噴気の蒸気も上がっていて、人々は自前の井戸を掘って地熱を利用しているし、裁判所など公共の建物のいくつかは、地熱利用の空調システムを備えている。
 それに、この会合には30を超える国々からの参加があって、温泉や地熱が広く利用されているという世界の現状を再認識するのにまたとない機会であった。

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      地熱エネルギーのカスケード利用【地熱学会から】
    (米国オレゴン州クラマスフォールズ,ジオヒートセンター)

 帰ってきてから、スウェーデンの夫妻作家シューヴァルとヴァールーの警察小説『マルティン・ベック』シリーズを読み返していたら、その第一作『ロゼアンナ』に、クラマスフォールズからきた夫妻の観光客が登場していた。この時期に、なぜ読み返す気になったのか、なんとも妙な符号である。
                            (1999.12.2)

別府温泉地球博物館理事長の由佐悠紀が執筆し、新聞・雑誌などに掲載されたものを順次ご紹介しています。


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