「自分らしくやる」ために演じる時間もある
見出し画像

「自分らしくやる」ために演じる時間もある

「自分らしく生きたい」
「自分らしく仕事したい」

100万回聞くフレーズですが、そこへのたどり着き方は、一本道じゃないことが多々あります。こんな実例から。

ある日、私はOさん(相談者)にこんな話をしていました。
「Oさんの素は、現職の職務適性上は強みに働きにくいので、職業人格で補って、周りの目線で(そんなもの本当はくそくらえなのですが)まずは認めてもらうことが必要じゃないですか?」

どういうことかと言うと、
このOさんは、重厚長大系シンクタンクのコンサルタントです。
職務上、論理で白黒つけて判断して、バシバシ進めていく方がわかりやすく”優秀”と言われやすい職種です。
義理人情みたいなもので、あの人もこの人も笑顔にしたい!とか
白黒はつかないものだから、曖昧なまま進めたっていいじゃないか、と思っていては純粋に仕事がやりづらいところにいます。

が、Oさんは、素では(性格行動特性では)、グレーでもなんでも一旦受け入れて、とにかく人と仲良く人を大事に生きていきたい、という特性がアセスメント上マックスの値で出ている人。

ちなみにOさんの周りの先輩・同僚・後輩はものの見事にOさんと真逆で、一旦受け入れる素質はほとんどなく、白黒つけまくりのバッサバサ、デジタル人間ばかりでした。

どういうことが起きるか。

Oさんは悩んでいました。
「自分ではクライアントに尽くしながら精一杯やってるつもりだけど、どうも周りのコンサルタントから”ばかにされている”感じがある。認められない。言ってることがロジカルじゃない、などこの歳で突っ込まれて辛い」と。

「でしょうねぇ。お察しします。どうします?Oさんこれから。素のOさんは、対人援助職者に多いようなナイチンゲール系ナイスガイです。周りは真逆を行ってる人達なので、Oさんが、一刀両断しないことを”物足りない”、もっと嫌な言い方すれば、”判断できない頭の悪い奴なんじゃないか”と言われる可能性ありますよね。」

「いや、もう言われてます…」

「あ、そうですか」(悪びれない拡散弁別)

「いえ、いいんです俺なんて」(受容性の自虐)

「で、このまま行けば、”コンサルタントらしい”成果を上げる以前に、認められてアサインされて、スキルが上がって、またアサインされて…というループに乗りにくいかもしれない。改めて、どうしましょうか、Oさん」

「やっぱ向いてないのかなぁ。辞めるしかないのか、俺」

「フラットに言えば、辞めたって構いません。でも、Oさん、念願のコンサルティング職なんですよね?」

「そうです、仲間の視線は冷たいですが、仕事自体は自分だからこそできることもあるような気がしているし、昔からやってみたかったことだから辞めたくはない」

「いいですね、辞めるしかない、なんてことないですよね。どうしましょう」

「わからない・・・」

私はダメコーチなので、相手に答えがないとわかれば、選択肢を提示します。

「私がおすすめする方法言っていいですか?」

「もちろん」

「職業人格つくりましょう。周りも認める、いわゆる”コンサルタント”的な一面。素では持っていないのだから、つくって補えばいいのです」

「え」

「世の中的な、情報収集して分析して、一刀両断を得意とするコンサルタントなんて、くそくらえでいいんです。Oさんが信じるような温かな人間性で本当に相手のためになることを、派手さはなくともじんわりタッチしていくことだって、問題解決の一手なことはあると思いますよ。ただ問題は、何がコンサルティングの答えか、は答えがなくて、本当に扱うべきテーマは、周りから認められず、それを気にする自分まで自己評価が下がっていることだと思うんです」

「そうかもなぁ。自分に自信がないから、役に立ててないような気がして、辛いよほんとに」

「それはOさんの持てる力が活かしきれていないから問題ですよね。そこは解決したい。で、その方法が、まずは認められる動きをしたら?すなわちは、”いわゆるザ・コンサル”の型にはまってみたら?ということです。人は悲しいかな、異質なものには抵抗します。Oさんは明らかに御社内で異質です。メンバーの気質的にも、職種的にも。異質の皮をかぶって、一度、「なんだ、あいつできんじゃん」と言わせませんか?」

「言わせたいですよ。でも、本当の自分じゃなくなるってことですよね?」

「違います違います、だから”職業人格”なんです。本当の優しいほわほわOさんは消せるものじゃない。そのままでもちろんいてください。ただ、仕事時間は、役者です。コンサルタントという役です。一度、今バカにしている周りをぎゃふんと言わせたら、徐々に素人格は出せます。役を演じ切るのも、悪くないですよ??」

「そうかー。もうそう割り切ってもいいのかもな。うん。やってみる」

1か月ほどでコツを掴んだOさんは、その後、受容性高きナイスガイでありながら、職場では意識的に、白黒つけて判断する役を演じました(弁別性を出す)。
もちろんダメダメだ、と言われたりもしながら。それでも続けたOさんは、今じゃその会社の主任コンサルタントとして、引っ張りだこです。周りはもちろん、ザ・コンサルとしての腕も認めていますが、プラスアルファで、Oさんの素のホスピタリティの高さ、共感性の高さに、顧客はファンになっています。
私も心から尊敬しているコンサルタントの一人です(「俺のことバカにしやがって」といまだによく言われますが)。

自分らしさ、をそのまま出してうまくいくことももちろんありますが、
それは”誰と、何を、どのようにやるか”が三位一体、自身の性格行動特性と運よくマッチしていたときです。
どこかはまっていないときは、つくればいい。

俺らしくない、私らしくないことを、意識的にスキルとして挑戦し続ける。
そうして急がば回れ、手にする「私らしさ」「俺らしさ」は多々あるのです。

#自分らしさ呪縛 #職業人格のススメ

この記事が参加している募集

私の仕事

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
ありがとうございます!
東京大学大学院教育学修士、外資人事組織系コンサルファームを経て2015年独立。専門は、性格行動特性を用いた個人/組織の行動変容、組織開発。 「ヒトミル」https://hitomiru.jp 運営中。 9歳男児と2歳女児の母。2020年7月よりステージⅢc乳がん闘病中。