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ビニール傘の内側

子供の頃、とにかく友達が少なかった。空想癖があり、すぐにその世界に入ってしまう。見兼ねた母親が心配し、5歳の誕生日に幼稚園の友達を何人か家に呼んでくれた。

最初はよかった。けれど時間が経つにつれ、生身の人間(空想ではない)が家の中に複数いることに、だんだんフラストレーションが溜まってくる。

いつもならこの時間は、頭の中で作り上げたお友達と遊んでいるのに。我慢の限界が来た私は家にあったビニール傘を3つほど広げ、居間の一角に砦のように並べると

「ここから先は入ってこないでね」とお友達に告げ、そのまま空想の世界に入り込んだ。

お友達はつまんない、と言い、さっさと帰ってしまった。けど私は全く構わなかった。どんな友達だったのかすらも思い出せない。気を利かせて呼んでくれた母と祖母の、悲しそうな顔だけが記憶に残っている。

そのことを「身体を使って書くクリエイティブ・ライティング講座」のパートナーであるダンサーの青剣くんに話したら、彼は笑いながら

「でも、まあ、創作ってそう言うもんだよね」と言った。

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