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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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2019年4月の記事一覧

時代が俺に追いつく気持ちで

時代が俺に追いつく気持ちで

小説「ピュア」がSFマガジンに掲載される。

この小説は私が3年前に初めて書き上げた小説で、「メゾン刻の湯」よりも前で、特にどこに出すあてもなくて、一人でなんどもなんども改稿を繰り返していた作品だったので、今回掲載していただけて大変、嬉しい気持ち。

第一稿を書き上げた当時、オープンリーレズビアンである友人兼編集者に見せたところ「こんなテーマ、書いたのが村上春樹でも私は読まない」と一蹴され(彼女は

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感情をやりとりしないでいるうちは、人間は仲間にはなれません

感情をやりとりしないでいるうちは、人間は仲間にはなれません

自律神経がガタガタなので数年前からお世話になっているカイロプラクティックの先生の所に行く。

先生は、うーんと、どこで知ったのかは忘れちゃったんだけど、その人の身体の悪いところを1発で当てることで有名な先生である。「絶対触感」の持ち主で、相手の頭蓋骨を指先で軽く触るだけで、その人の現在の状態やメンタルの不調を見抜き、それがどこから来ているのかを言い当てる。それだけ聞くと「やだ、オカルト」ってなるん

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せめてぽかぽかと気持ちの良い日で

せめてぽかぽかと気持ちの良い日で

4月某日

近所に住んでいる友達と久しぶりにのんびり散歩する。駒場公園という、家の近所にあるあまり知られていない公園に行ったら桜がちょうど激しく舞い散る頃で、桃源郷のような景色で笑ってしまった。

その後、近所のカフェに入って話をしているときに、ふと教育の話になって、うちの母親の話になった。

私は去年の夏に転籍をして(籍を抜くこと)、現在は親とはほとんど関わりを持たずに生きているのだが、20代後

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知らない方がよかったの

知らない方がよかったの

暗い部屋の中で米が煮える音がする。甘い、ふんわりとした白い匂いと、鍋底の焦げる固い、強い匂いが同時に漂ってくる。弱火に変えてから炊き上がるまでの間、またベッドに潜り込む。本来は噴きこぼれないように見張るべきだが、食欲と睡眠欲を同時に満たそうとしているからたちが悪い。

最近いろいろめちゃくちゃで、めちゃくちゃと言うか深刻に捉えすぎてめちゃくちゃにしているのは自分自身なのだけど、深刻に捉えていること

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4月の断片その①

4月の断片その①

3月某日

自分が連載していた媒体がなくなるのは悲しい。すごく悲しい。今まで自分がやって来たことが全部無に帰したような気になる。そんなわけないのに。誰も悪いわけじゃないけど、とてもとても悲しい。

3月某日

K社の編集者さんと打ち合わせ。会議の途中、
「BL原作のプロットを書いた事があるのですがハードすぎてウチの媒体じゃ掲載できませんと言われてしまって…」
と言ったら
「え、せいしかける系ですか

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