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それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
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2018年3月の記事一覧

「バー漆黒」のマスターのこと

「バー漆黒」のマスターのこと

前回の「漆黒」の話の続き。

西早稲田で清田さんと別れ、帰ろうとしたら、知らない番号から電話があった。誰だろうと思って出たら、開口一番、相手は
「会いたいよお前に!」と、猫が5億回爪研ぎをした後のカーペットのような、ボロボロにささくれだった酒灼けの声で怒鳴った。

「バー漆黒」のマスターだった。
8年ぶりだった。

「バー漆黒」は『傷口から人生」にも登場する、私が人生で一番、どん底だった時に働いて

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桃山商事の清田さんと『バー漆黒』のこと

桃山商事の清田さんと『バー漆黒』のこと

桃山商事の清田さんが出演している「編集者とライターの意外な仕事展」へ。
結局何が意外なのかよくわからなかったけど、来ていた人たちの熱量はすごくて、編集とか書くことに対して関心を持っている人がこれだけたくさんいるんだなあ、ということに驚かされる。

16時半、清田さんのトークが始まる。壇上には彼の他に、イベントの主催者ともう一人編集プロダクションをやっている女の人がいた。

他の二人が、声高に自分た

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犬を犬小屋から振り落としてはいけない

犬を犬小屋から振り落としてはいけない

ジャーナリストの朽木誠一郎さんと奧岡けんとくん、金子あんなちゃんと4人でご飯を食べる。

朽木さんは最近単著を出すことになり、もうすぐ発売。一番、心が滾る時期だと思う。「売れたらいいな」という希望と、「どう評価されるんだろう」のせめぎ合い。彼とはお互いに辛酸をなめている時期を知っているだけに、著書を出される事がとても嬉しい。私は朽木さんのエッセイが好きで、ということはつまり、朽木さん自身のファンな

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美味しくないものを食べた時に「美味しかったね」と言われて「うん」と答えられない

美味しくないものを食べた時に「美味しかったね」と言われて「うん」と答えられない

3月某日

石川でライティング講座をし、翌朝、コーディネーターのクリエちゃんと、ダンサーの青剣くんと近江市場に行く。屋台でどじょうを売っていたので、見ていたらクリエちゃんが「食べる?」と言って3人分を買ってくれた。クリエちゃんには悪いが、わざわざ食べるもんじゃねぇなと思った。ボソッとそれを青剣に言ったら、青剣が微笑みながら私をバシンと叩いたのでクリエちゃんに悪口がバレてしまった。

美味しくないも

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恩師とダイバーシティ

恩師とダイバーシティ

中学時代の恩師に「刻の湯」を渡しにゆく。

ちょっと重たい話をすると、私は中学の頃めちゃくちゃリストカットをしていた時期があり、精神科に入院していたこともあって、それが問題となりPTAから「あの子を進学させるのは如何なものか」という意見が出たりして、実際に進学会議で先生たちの間で審議にかけられたんだけど、その時にかばってくれたのが久保田先生だった。中3の二学期を病院で過ごしたので、進学的にギリギリ

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