マガジンのカバー画像

それでもやはり、意識せざるをえない(小野美由紀のマガジン)

作家小野美由紀によるエッセイマガジンです。タイトル通り "それでもやはり、意識せざるをえない” 物事について、月に5-10本程度配信します。日々のエッセイ、恋愛、性愛、家族、また… もっと読む
¥580 / 月
運営しているクリエイター

2016年3月の記事一覧

メキシコとフクシマ、2つの肉体(『傷口から人生』こぼれ原稿その4)

メキシコとフクシマ、2つの肉体(『傷口から人生』こぼれ原稿その4)

  3.11の大震災から2ヶ月後、私はメキシコに居た。シャーマンに会うためだ。

もっとみる
見る事は生きる事(『傷口から人生』こぼれ原稿その3)

見る事は生きる事(『傷口から人生』こぼれ原稿その3)

『あなた、まともな目の使い方をしてない。それじゃ、世界のことなんて、な〜んにも見えないよ』

そう私に言ったのは、千葉県の佐倉にある、「眼鏡のとよふく」の店主、豊福啓示さんだ。

「眼鏡のとよふく」は老舗の眼鏡屋だ。昭和天皇も眼鏡を作った事があるというその眼鏡屋は、千葉の鈍行駅の目の前に、ひっそりと佇んでいる。

 眼鏡のとよふくのことを教えてくれたのは、整体師の奥谷まゆみさんだった。

「成田空

もっとみる
インターネットとハラカ(『傷口から人生』こぼれ原稿その2)

インターネットとハラカ(『傷口から人生』こぼれ原稿その2)

「みゆきちゃん、インターネット世界を生きるには、『ハラ力』が必要だよ!」

そう、整体師の奥谷まゆみさんに言われたのは、きんきんと冷たい風が脳に突き刺さるような、1月の暮れのことだった。

奥谷まゆみさんは、私の整体の師匠だ。

 

 昔、私が仕事と恋愛の両方に疲れて心身ともにボロボロで、人間らしい生活すらもままならなかった時、どうにかして身体だけでも立て直したいと、奥谷さんの整体サロン「きらく

もっとみる
ガンジス川と世界の距離(『傷口から人生』こぼれ原稿)

ガンジス川と世界の距離(『傷口から人生』こぼれ原稿)

「ちょっとぉぉ!私が行きたかったのは、街の中心の宿なの!こんなへんぴな所に連れて来てなんて言ってない!引き返してよ!」

 私は絶叫していた。

 インドはバラナシ、観光客など誰もいない煤けた町の外れの、見た事もないほどボロい宿の前で。

 世界一周の旅に出発した21歳の私が最初に降り立った土地・バラナシは、はじめからどこもかしこもが爆発していた。

 膿にたかる蠅のように、人が、牛が、車が、街に

もっとみる
手放してゆく言葉:『傷口から人生』こぼれ原稿集

手放してゆく言葉:『傷口から人生』こぼれ原稿集



このnoteは、昨年2月に出版した『傷口から人生 メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』のために書き下ろし、編集の過程で収録されなかった4つのエッセイの再録です。

『傷口から人生』は、最初の打ち合わせの時、担当の編集者さんから与えられた「若い時に生きづらかった小野さんが、25歳までの人生の中で、価値観をゆさぶられたことば、背中を押された言葉をテーマに、25個の章で構成する」とい

もっとみる
いつも誰もが孤独を抱えている(『PHPスペシャル』2016年3月号初出)

いつも誰もが孤独を抱えている(『PHPスペシャル』2016年3月号初出)


※このエッセイは、『PHPスペシャル』2016年3月号初出(2月10日発売)特集「ひとりを楽しむ」に寄稿したものです。

===

「孤独」はけっしてなくならない。誰の体の中にも、孤独はいつも転がっている。 でも、孤独を知っているからこそ、誰かがそばにいることがわかる。

孤独を知っているからこそ、自分が自分でいられる。 ひとりでいることは、怖くない。

===

 孤独を異様に恐れる人と、さし

もっとみる