[日本ハムファイターズ観戦記] 9/7 ファイターズの現状と課題

 8月末のソフトバンク戦3連敗で、ハムの今季優勝はほぼなくなりました。それでも9月1日からの楽天西武相手の6連戦で勝ち越していれば、ソフトバンクがロッテ相手に3連敗したこともあり、かろうじて優勝の可能性は残ったと思いますが、結果は3勝3敗。首位ソフトバンクとの差は6ゲームと少し縮まってますが、3位楽天との差は2と変わらず。今季は大型連勝ができず、勝ったり負けたりの横ばいで、なかなか上位との差を詰めることができない。おそらく今季はずっとこんな調子で、目一杯うまくいっても勝率5割前後をキープするのに精一杯じゃないでしょうか。

 なぜチーム状態が上向かないかというと、ブルペンの不安定さ、これといって柱となる投手がいない先発陣、そしてしょっちゅう入れ替わっていて一向に固定化しない打線にも原因がありそうです。ハムファンならよく知っていると思いますが、栗山監督は試合ごとに打線を組み替えます。たとえ打線が好結果を出したとしても、次の試合では結果を出した選手をなぜかベンチに下げ、打線がうまく繋がっても、その繋がった打線をバラバラにしてしまう。真面目な話、4番中田以外は全試合違うんじゃないか。結果が出たように見えても監督の目には物足りなく見えるのか。あるいは、違う選手にも同じようにチャンスを与えたいという親心か。たぶん監督の脳内には彼の理想とする打線があって、たとえうまくいってるように見えても彼の理想と違うとバラバラに解体したくなるんでしょう。そういう意味ではチームの勝利というよりは監督の理想/気分/感情を優先した起用/采配です。2016年みたいに彼の勝負勘が冴えてる時期ならそれでもいいですが、今の栗山監督の采配は裏目に出ることが圧倒的に多い(今季のハムはチーム打率も防御率もリーグ2位、得失点差も3位なのに、順位が4位)。選手も、自分がいつ起用されるのかわからず、打順もそのつど違っていたら、自分の求められる役割がわからなくなる。2番を打ったり5番を打ったり1番を打ったり6番を打ったりと落ち着かない大田の起用法なんて最たるものです。これでは安定した働きを選手に求めるのも、安定した闘いをチームに求めるのも難しい。長打はあるが調子にムラがあり、早打ちで四球が少なく出塁率が低く、足は速いが盗塁もほとんどない大田は、どうみても一番向きではない。いわゆるフリースインガータイプなので、昔の新庄みたいに6番ぐらいで好きに打たせるのがいいと思いますが、栗山監督はそう思っていないらしい。リーグNO.1出塁率を誇る近藤に、最近では5番を打たせているのも疑問。どう考えてもリーグ打点王のポイントゲッター中田の前に置くのが得点効率上一番いいと思いますが、近藤がケガで離脱していた時期に西川に3番を打たせたらいきなりハマってしまったので、復帰した近藤は5番で打たせるしかなかったのもしれません。

 個人的に一番不満があるのは淺間の使い方です。淺間は8/12に一軍合流して、翌13日のロッテ戦で一番センターに抜擢され、5打数無安打で終わると途端に使われなくなり、代走と守備固めの起用ばかりになります。8月19日の楽天戦でようやく今季初安打を打ちますが、その後も守備固めと代走ばかり、たまに守備固めからの打席が回ってくる程度では調子が出るはずもない。それでいて9/6の西武戦でいきなり一番に抜擢する。使うにしても、プレッシャーの少ない下位で使うとか、そういう配慮は一切ない。案の定、結果を出さなきゃと焦った淺間は消極的になってバットが出なくなってしまい、ストレートにことごとく差し込まれ、ストライクは見逃しボール球に手を出して、バットにもあたらず空振り三振2つという最悪の結果。そんな条件でも結果を出すのがプロだし、そもそも一番期待されてる時にケガで離脱を繰り返した淺間が悪いと言えば悪い。でもこんな気まぐれな使われ方では、実績のない淺間には酷です。まるで使わない理由を作るために一番で打たせたみたい。せめてファームに落として打席を与え再調整させるのならまだしも、一軍ベンチを温めるばかりで実戦機会を与えない「飼い殺し」状態にするぐらいなら、いっそ他球団に移って心機一転したほうが彼にとってはいいかもしれない。おそらく栗山監督の脳内にある「優勝するための理想のチーム」構想から、淺間の名は消されてしまったのでしょう。だからこんな雑な便利屋的扱いになる。監督はこういうところがほんとにはっきりしている。一旦見切るととことん冷たいですね。

 起用法といえば、清宮の起用法も相変わらずです。清宮がスタメンで出るのは右投手の時だけ。その場合は中田がDHに入ったあとの一塁に入る。左投手の時は使われず、DHには近藤が入る。こんな中途半端な起用では、いつまでたっても清宮は左投手を打てないでしょう。そして一番の問題は一塁守備です。清宮の一塁守備が一軍レベルにないのは明らか。それも不慣れとかそういうのではなく、アマチュア時代から悪い癖がついてしまっている感じで、なんでもないイージーエラーや怠慢守備が目立つ。中田の一塁守備は12球団トップレベルですが、中田の代わりに清宮を一塁で使うのは、打撃で打てないよりもはるかにチームにとって悪影響になる。もちろん若手のころの田中幸雄のようにどんなにエラーしても使い続けるという選択肢もある。打撃も同様で、本気で育成するなら打てなかろうが守れなかろうが使い続けるしかない。でも今の使い方はあまりに中途半端です。こんな使い方をするようなら、ファームに落として鍛えたほうがいいのは明らかです。ファームに落とさない理由を栗山監督は「ファームでは努力しないでも結果を出してしまうから、一軍のレベルで鍛えるしかない」と言っています。でも本当にそれだけの理由でしょうか。球団スタッフも清宮の守備に頭を抱えているという話をどこかかで聞きましたが、もしかしたら現場の意思だけではどうにもできないような事情があるんじゃないか。もしそれが本当なら、チームにとっても清宮本人にとっても不幸なことです。

 現在のチーム状況を見てみましょう。プロ野球データベースDELTAの集計による現在のチームのポジション別攻撃力。

 説明にあるように、ポジション別の攻撃力、得点力を6球団の相対評価で示した指標です。一目瞭然。ハム打線の大きな穴は捕手とショート。他チームに比べて大きく攻撃力が劣り、打線の足を引っ張っています。下位打線に捕手とショートが並ぶことで、打線の流れが完全に分断されている。大田の守る右翼も数字が悪いですが、これはシーズン前半の大田の絶不調が原因でしょう。これから少しずつ上がっていくはず。一塁もマイナスになってますが、これは中田と清宮を併用しているので、清宮の数字が足を引っ張っているからでしょう。

 清水は明らかに伸び悩み。少なくとも打撃面では、ドラフト同期の同級生で、指名当時のポジションも指名順位も同じソフトバンク栗原とはずいぶん差がついてしまいました。もちろん捕手専業の清水と、現在捕手では試合に出ていない栗原では同列に比較できませんが、リードやキャッチング、送球など捕手としての基本的な実力も頭打ちに見えるのが悩ましいところ。ポジションを競争の末勝ち取ったのではなく、最初から与えられていた温室育ちの弱みで、プレーに厳しさがない。宇佐見も打撃を買われて巨人から来たはずですが、守備に神経を使いすぎているのか全然打てない。この2人の今後の伸びしろがどうなのかわかりませんし、ファームでは若い捕手も出てきてますが、このままふたりに成長の兆しが見られないようなら、今年のドラフトで大学社会人の即戦力捕手を上位指名する必要があるかもしれません。指名すれば、大野以来ということになりますね。大野の指名は、当時の梨田監督の希望だったはず。

 そしてショート。中島の唯一最大の欠点は打撃ですが、おそらく年齢的にもそう大きな伸びしろは期待できない。ですが9/5の西武戦、8回表先頭の金子のセンターに抜けようかという当たりを凄い勢いで追いついてジャンピングキャッチ、体勢を立て直して投げた難しいワンバウンドの送球を、目一杯カラダを伸ばして中田が逆シングルでさばいてアウト、というスーパープレーでチームに勢いをつけ、その裏二死無走者から粘りに粘って四球をもぎとり、4点というビッグイニングに結びつけた働きは、まさに中島の真骨頂と言えるもので、打てなくてもチームに欠かせない選手との認識を新たにさせるものでした。それに比べて石井が中島に勝っているのはわずかにパンチ力だけで、打率も中島より低いし(.176、中島は.200)。足も単独スチールができるほど速くないし、なにより守備のミスが多すぎる。最近もっとも呆れたのは、同じ9/5の西武戦、4点リードの9回表に渡邊に代わって二塁の守備固めに入って、いきなり平凡なセカンドゴロをトンネルしてマルチネスの足を引っ張った場面です。いくら本職のショートではなかったにしろ、あんなラクな場面であんな軽率なプレーを見せられたら、接戦の試合では怖くて使えない。といって守備のまずさを補うような打撃もない。打てない守れない走れないでは、一軍で使う意味は皆無。石井は大卒4年目の26歳ですが、新人の時からの伸び悩み具合を見ても、伸びしろという点でも大いに疑問が残ります。上野という高卒の守備名人候補がいますが、まだ打撃も含め一軍の戦力になるのは時間がかかるでしょう。となると、今ドラフトで打てる即戦力遊撃手の補強は必須です。

追記
うっかり平沼の存在を忘れてました。投手からの転向ながら、走攻守にセンスを感じさせる平沼は、来季、いや今季後半からショートのレギュラーを獲るのでは、と思わせるほどの可能性を秘めていると思います。彼の成長次第では、即戦力ショートの補強は必要ないかもしれません。

 そして守備面では、西川の守備面での大きな劣化が目立ちます。同じくDELTAの集計によるUZR(「リーグにおける同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、守備でどれだけの失点を防いだか」という指標。簡単にいうと守備範囲の広さを示す)では、西川の数字は、なんとマイナス9.1で両リーグのセンターでダントツの最下位。両リーグトップの阪神近本の10.6はもちろん、パ・リーグトップの柳田の4.1と比べても、13ポイント以上の差があります。西川の肩がどうしようもなく劣化しているのは以前も書きましたが

 こうした指摘に対して栗山監督は「それは分かっている。(中略)ハルキ(西川)の守備範囲で拾えているボール(打球)の多さとか、いろんなことのプラスマイナスでやっている」と語っています。つまり守備範囲の広さ、打球判断の的確さなどで肩の弱さは十分補えている、という言い分ですが、この2年ほどのUZRのびっくりするような悪化(2018年は5.1、そして2019年はマイナス5.6、そして今年はマイナス9.1)をみると、それも怪しい。ランナー2塁でセンターにヒットが飛べば、相手は100%ホームに突っ込ませるし、浅い当たりのセンターフライでもどんどんタッチアップされる。それに加えて守備範囲もリーグワーストでは、正直言ってセンターで使うのは厳しい。それはおそらく首脳陣もわかっていて、今年の西川はしばしば守備固め(松本が多い)を送られたり、時にはDHに入ったりする。西川は来季のメジャー挑戦を表明していますが、もし残留したとしても、センターは別の選手に守らせたほうがいい。その後釜候補が松本であり淺間ですが、場合によっては、俊足で守備がいい即戦力外野手をドラフトでとる必要があるかもしれない。

 UZRでは、渡邊もセカンド部門でリーグ最低(マイナス4.1。トップの外崎は10.3)ですが、伸び盛りの選手で日に日に巧くなっているので、この数値はいずれ改善されるはず。

 投手部門まで言及する余裕がなくなってしまいましたが、有原がメジャー行きでいなくなる来季に向け、先発ローテを育成する必要があり、また今季のブルペンの不安定さをみても、中継ぎ抑えの充実も必須。秋吉に代わる抑えをどうするかは、今後の最重要課題でしょう。

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