木を見て森を見るな


毎日掃いても落ち葉がたまる。これが取りも直さず人生である。(田山花袋)



 玄関先に落葉が積もっている。ふつうの人は、積もっているな、と思って落葉を掃く。落葉を掃くと玄関先はきれいになる。しかし、次の日になればまた落葉は積もっている。

落葉を掃くことの労力は大したものではない。しかし、人間は賢いもので、延々同じ事を繰り返すうちに、余計なことを考えはじめてしまう。それはつまり、落葉を掃くのは永遠に終わらないということだ。

永遠に解決しない問題と思うと億劫になる。しだいに掃かなくなる。気が付くと落葉が積もっている。


一般に、よくものを考える、よく感じるということは、ものごとの本質を見抜く力、つまり賢さという美点に繋がる。

しかし、考えた結果、落葉が永遠に積もり続けることに気付き、掃くことが億劫になり、玄関先に落葉を積もらせてしまうなら、それは何も考えずに掃いている人よりも愚かだということだ。

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