すばらしき「外岩」の世界
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すばらしき「外岩」の世界

mikrock

※この記事は、岩登り大好き岩女が、外岩への変態的な情熱を溢れるままに書き散らしたものであり、紹介記事でありながら大変クライマー向けの内容となってしまいました。
ご了承ください。

美しき 瑞牆の岩

上の写真は、瑞牆(みずがき)山の瑞牆大橋下流エリアにあるボルダーの1つ、角岩のスプリット・エッジという課題を登っているところです。

私のスマホの置き位置が悪かったせいで少し傾いてしまっていますが、実際の岩はもっと垂直に近く、地面から突き出してそびえ立つ様は本当に自然にできたものなのか?と思うほど神秘的です。

そしてこの課題自体も、手順足順をよく考え、適切なムーブを選ばなければ登れない、絶妙に登りごたえのある課題でした(まだ落としてません)。

この岩、いつ行っても誰もいないのですが、見た目の美しさといい登りがいといい、これほどの名作があるのになぜなんでしょう…

瑞牆山は山梨県北杜市にある日本百名山のひとつで、登山者も多い山ですが、クライミングエリアとしても非常に有名で、ボルダー・リードともに初心者から上級者まで楽しめる、とってもおもしろい岩がいくつもあります。

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トップ画にもしている秋の瑞牆山。
1番お気に入りの写真です。

課題の生みの親 初登者

岩にはひとつひとつに名前がつけられていることが多く、先ほどの「角岩(つのいわ)」もそのひとつです。

さらに、その岩を登るライン=課題にもそれぞれ名前とグレード(登る難しさ)がついています。写真の課題「スプリット・エッジ」は、3級です。

この写真では全然わからないかもしれませんが、この岩だけで、現在4つのラインが公表されています。

で、それはだれが決めているのかというと、初登者=一番最初にそのラインを登った人です。初登者はそのラインの名前とグレードを決める権利があります。
(グレードは初登者の体感によるところも大きく、後続のクライマーたちによって後から修正されることもあります)。

これだけは持っていけ
「トポ」と「マット」

我々一般クライマーは、通常「トポ」と呼ばれる本を持っていて、偉大なる初登者たちの開拓したラインを追体験するときの手がかりにしています。

トポとは、岩を登るためのルートや岩場へのアクセス方法、課題名やグレード名がまとめられたクライマーのためのガイドブックのようなもので、岩のスケッチに直線を書いただけのごく簡単なものから、岩の写真に正確なルートが描かれ、攻略のポイントまで書かれた超丁寧なものまで様々です。

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有名なエリアは、それだけで一冊のトポになっているものもあります。

「岩登るなんて私には絶対無理〜!絶対落ちちゃう!」とよく言われますが、安心してください、経験者もみんな落ちてます。

落ちてもケガをしないために、マット(クラッシュパッド)というものがあるのです。

奥多摩方面に電車で行ったことがある方は、青梅線内の途中でバカデカいマットを背負った人々を見たことがあるでしょうか。
あれは御岳ボルダーへ行くクライマーたちで、背負っているマットは岩を登るときのケガ防止のために下に敷くものです。

クライミングジムには、どこに落ちても平気なように巨大なマットが敷いてありますが、外の岩を登るときは、当然下は地面です。
自分の身を守るために自分でマットを持っていくのです。

中には、マットを敷かずに岩を登ることを突き詰める、ノーマットスタイルを貫く人もいます。彼らは、リスクマネジメントを極めた超級者です。

初心者の方は、まず経験者にマットを借りましょう。トポも借りましょう。

私が沼に落ちるまで

今でこそ私もどっぷり岩女ですが、ここまでドハマりしたのはつい最近のことです。

初めて外岩に行ったのは、4年前。
目白にカラファテというクライミングショップがあるのですが、そこへシューズを買いに行ったときに、店内の壁に貼ってあった「外岩講習会」のチラシが目に付きました。

それまでインドアで十分満足しており、外岩に興味を持ったことなんてなかったのですが、なんとなくそのチラシがずっと気になってしまい、帰宅してからネットで申し込みをしました。

初心者向けの講習会ということで、当日集まったのは、私含めほとんどが岩初体験の5人。引率のインストラクターはカラファテの店長ジャック中根さん(界隈ではとても有名な方)でした。

講習場所は、言わずと知れた御岳ボルダー。背中に巨大なマットを2枚も背負ってずんずん林道を進む中根さんが当時の私には印象的で、妙に記憶に残っています。

たしか、最初に触ったのはデラシネボルダーの10級か8級だったと思います。
なんだかツルツルしていてどこを持ったらいいのかよくわからない…ジムと違ってどこが手なのか足なのか、全然わからない…こっちのほうまで使っていいの?何が正解なの??という感じでした。
よくわからないうちにもじもじしていたら岩の上まで登れました。
初めての岩、完登。あっけなくて全然登った実感がありませんでした。

その後は正直どの岩を触ったかあまり覚えてないのですが、丸こんにゃく岩やすべり台岩、オーストラリア岩などに行ったのを記憶しています。

不思議だったのは、自分ひとりで登ろうとすると全然登れないのに、中根さんの言うとおりに身体を動かすとスルッと登れることでした。
手足の置き位置や力の入れ具合など、わずかに変えただけなのにです。それは他の4人のメンバーもそうでした。
当時通っていたジムで4級が限界だった私が初めての外岩で丸こんにゃく右3級やすべり台トラバース3級が登れて、本当に驚きでした。

そんなこんなで私の外岩デビューは素晴らしいスタートのはずでしたが、なぜかそれからしばらく岩に行くことはなく、ジム漬けライフに戻ってしまいました。
おそらく「いい体験だった」と自分の中で完結してしまったのだと思います。
その後も何度かジムの人に誘われて行くことはありましたが、ドハマりするまでには至らず、「たまのいい思い出」に留まるに終わりました。

沼に落ちたのは、2年程前、転勤を機にホームジムが変わり、岩シーズンを迎えたときでした。

そのジムの常連何人かと遠征に行った帰りに、今度は岩に行こうということになり、翌週そのメンバーのうち経験者2人、ほぼ初心者の私、ガチ初心者1人の計4人で御岳に行きました。
ちなみに、経験者のうち1人は後に夫になる人です。

その日は、遊歩道岩、マミ岩、すべり台岩などをまわりました。
とにかく、死ぬほど楽しかったのを覚えています。今までの外岩とはちがう、なんだか言い知れぬ楽しさがありました。

電車での帰り道、経験者2人にそそのかされ、気がついたらジムでマットを注文していました。

その日から、もうほとんど毎週のように週末は外岩へ行きました。瑞牆、御岳、そして外岩のリードも覚えて、河又や湯河原なども行くようになりました。

岩に必要なグッズはすぐに揃えました。
パモスティック(岩についたチョークを落とすブラシ)はマットを頼んだ直後に発注、そしてこれは私の元ホームジム特有の文化なのですが、マットについたチョークや土を払うための、ダイソーのふとんタタキ(めちゃくちゃ便利です!)もすぐに買いました。
リードを覚えてからはヌンチャクやらスリングやらヘルメット(使ってない)やら、モノがどんどん増えていきました。

週間天気を毎日のようにチェックし、土日に晴れマークがつけば嬉しくなり、雨マークだったら「まあ山の天気は変わりやすいから」と都合よく思い込んだりするようになりました。

外岩 このすばらしく危ない世界

岩登りの何がそんなにいいの…?と聞かれると、一言ではとても言い表せません。
岩を登ったときの達成感、ジムを離れた非日常感、自然に囲まれている心地よさ、どれも正しいんですが、一言でまとめてしまうのは違うような、なんとも言えないそんな感じです。

外岩に行った日は、すべての一瞬一瞬が快感なのです。

岩の表面の突起に触れただけでふしぎな高揚感に包まれます。

岩を眺めてぼーっとしているだけでも気持ちがよくなります。

岩の前で座って呼吸しているだけでも、なんだか清々しく、生きている心地がするのです。

岩を前にして食べるご飯は、死ぬほど美味いのです。

仰向けに寝転がって木漏れ日を浴び、クライマーたちのセッションする声を聞きながらする昼寝は至福なのです。

岩を取り囲んで仲間たちとあーだこーだ喋る時間は、人生で最高に幸せな時間なのです。

本気で落としたい課題を、何日も何日もあれこれ試行錯誤して、バラしたりつなげたり、自分に合うムーブがやっとわかって、つながったと思ったら次に来たときには忘れてしまってイラついて、また何回も何回も同じ動きをして自分の身体に覚え込ませて、一日その動きしかやらない日もあって、そんな日を積み重ねてようやくすべてのムーブが解明して、落とせる確信を持ってトライしたら最後の一手で落ちてしまって、今日もダメかもしれないと思いながらまた何日も何日もトライして、ある日やっと、完登できたとき、一生に一度経験できるかできないかというくらいの、とんでもなく深い心の震えを感じることができるのです。

外岩は、そんな体験を何度もさせてくれます。

だから、やめられないのです。


「岩登るのって危なくないの?」

間違いなく危ないです。

ハマったらもう抜け出せない、それはそれはふしぎで危険な魅力が外岩にはあるのです。

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mikrock
いろんな私がいます。クライマーな私、夫LOVEな私、ちょっとひねくれた私。ただひとつ、変わらないのは岩と自由を愛する心。岩はキャンバス。クライマーはアーティスト。自由は“私だけのムーブ”の中にある。人生はROCKだ!!