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「若さを強みにする学級経営」〜クラスがうまくいかない若い先生へ〜

『子どもたちに申し訳ない。』
 教員生活1年目に多くの先生が抱くこの感情。授業準備や書類作成、生徒・保護者への対応、大量のテストやプリントの丸付け。おまけに初任者研修の講義や課題、レポートなどなど…。これらの大量の業務をこなすことに精一杯。子どもたちとじっくり向き合う時間なんてあるはずもなく、荒れていく学級。やる気を失う子ども。不安を隠しきれない保護者。一方、他のクラスの子どもたちは楽しそう。この時、一番に感じるのは、『子どもたちに申し訳ない』という気持ち。「自分がこのクラスの担任じゃなかったら、子どもたちはもっと幸せだったのかな?」と涙も出てくる。
 今回は、このような状況にある先生方へ向けて記事を書きました。全く同じ状況にいた私が、どのようにして子どもの笑顔を取り戻したのか。必死にもがいて、試行錯誤した結果、導き出した一つの答えを紹介します。この記事が、苦しむ先生方のお役に少しでも立てば何よりです。

 「気付いてくれ!この不公平感に!!」

 たくさんの夢を描いて、期待に胸を膨らませて始まった教員生活。一番最初にぶち当たった壁。それは、「学年で揃えましょうね。」という温かいようで、残酷な言葉。したいことはたくさんあった。得意な動画編集力を活かして、映画を作ってお楽しみ会で映画観賞会をしたり、おすすめのユーチューブ動画を見せて子どもたちをやる気にさせたり、懇談会では子どもたちの写真をスライドショーにして流したり…。その夢は「学年で揃えましょうね。」という一言で儚い夢に終わった。その言葉の理由は、「あのクラスだけずるい!」という不公平感に繋がるからだそう。この時私はこう思いました。
 「経験年数からくる実力の差。これは不公平じゃないのか!?!?」
 そう。学校組織は、この教師間の不平等性を鑑みずに、内容の公平性ばかりに目を向けるんです。これは初任者にとってはきつい。なぜなら、自分のクラスの子どもたちの不満が募っているのは自分が一番分かっているから。自分の授業はとんでもなく下手くそで、指示もうまくできずに、おまけに上手に褒めてあげることもできない。経験年数のある教員と同じレベルの授業も、楽しませることもできない。隣のクラスでは、色々な引き出しで子どもを楽しませる先輩先生の姿が…。
 「気づいてくれ!この不公平感に!!」

 ベテランとの差は“特別感”で埋める!

 そんな不公平感を胸に抱きながら、しぶしぶ学習内容や様々なことを学年で揃えていたある日。私はいつものように昼休みで思いっきり子どもたちと遊んでいた。ベテラン先生が一言。
 「若いっていいね〜。もう俺は体がついていかん。」
 ーー「これだ。」と思いました。経験年数から来る不公平感には、『若いからこそできること』で対抗しようと思いました。逆に言えば、この『若いからこそできること』を活かして子どもたちに“特別感”を持たせなければ、「もうこのクラスは崩れてしまう」という危機感がありました。その日から、今まで弱みとしてもっていた「未熟さ」を「若さ」という強みに変えて思考を始めました。結論を言うと、教員として、「若さ」が強みとして生きたのは、〈本気で遊べること〉、〈ICTをフル活用できること〉の二つでした。

〈本気で遊べること〉

 〈本気で遊べること〉というのは、自分も思い切り楽しんで遊べるということです。授業が下手で子どもに退屈させてしまっても、感情的に怒ってしまっても、昼休みに子どもと思い切り遊んだらチャラになる。そんな感覚になれるほど、〈本気で遊べること〉の効果は大きかったです。この効果を知り、当時勢いに乗っていた私は、懇談会でこんな提案をしました。
 「宿題を見ることも大切ですが、今のところ子どもと昼休みに思い切り遊んだほうが子どもの学校生活を充実させる上で効果的だと思っています。宿題を全部見きれない日もあると思いますが、どうかお許しください!」
 こんなお願い、今したら「なんだこいつ!」と不信感を持たれるかもしれません。しかし、当時はなんせ「若い」ですから、保護者の方々からは拍手をしてもらうほど賛同していただけました。また、多くの保護者の方々は、家庭学習に協力してくれるようになりました。この日から、「先生のクラスは昼休みが最高に楽しい!」と子どもが言ってくれるほどになりました。子どもに“特別感”を持たせることができたのです。

〈ICTをフル活用できること〉

 そして、最も大きかったのは、〈ICTをフル活用できたこと〉です。ICTの活用というと、堅苦しい実践例が多くでてきますが、そんなことは気にしなくていいです。学生時代から培ってきた、「サイトや動画から最良の情報を引っ張り出す力」、「タブレットを使って遊ぶ力」の二つで十分です。この力は皆さん自然に持っていることと思います。これは、ICT担当となってから分かったことですが、学校組織ではかなり貴重なものです。YouTubeやウェブ検索をすると分かりますが、授業の単元名を検索にかけるだけで、たくさんおもしろい素材ができてきます。この素材をフルに活用して、子どもたちを授業時間に思い切り楽しませることができます。「あの動画とこの活動を組み合わせよう。」、「子どもにこのサイトを使って調べ活動をさせてみよう。」など、アイディアがたくさん溢れます。
  また、「映画作成」はかなり効果的でした。子どもが書いた脚本をもとに、子どもたちを出演させていき、フォトの動画編集機能で動画編集して、クラスで上映。この時ほど、クラスがまとまって、充実した時間を過ごせることはなかったです。今でも、子どもたちは「あの映画作成が思い出です。」「あれで、友達ともっと仲良くなれました!」と言ってくれます。ICTを活用することで、また、子どもたちに“特別感”を持たせることができました。

 「学年で揃えましょう。」は半分無視

 もうお気づきの方はいらっしゃると思いますが、後半から「学年で揃えましょう。」などという言葉は無視していました。もちろん、学習内容や最低限のことは合わせていましたが。懇談会では、子どもたちの写真はスライドショーで流し、お楽しみ会は、他の先生にはできないであろう映画作成や、おもしろ実験などをしていました。YouTubeのVRジェットコースターの映像と、段ボールで作ったジェットコースターの模型を使って、VRキングもどきなんかもしていました。もちろん、学年の先生には報告しています。なんて報告していたかと言うと、「子どもたちに普段、申し訳ない授業ばかりしているので、お楽しみ会だけでも、特別なことさせてくれませんか?」と言ってお願いしていました。幸いこの時の学年主任は仏のような優しいお方だったので許してくださいました。

おわりに 

 こうして、子どもたちに“特別感”を持たせることを意識してからは、子どもたちの学級満足度はかなり高く、QUアンケートもかなり良い結果でした。学校生活が充実してくると不思議なもので、勉強に対するやる気も上がり、成績がかなりあがった子もいました。とっても保護者に感謝されましたが、「たくさん遊んだだけです…。」としか言えませんでした。(苦笑)
 ここで、誤解されないように言っておきますが、教材研究や、教員の自己研鑽は絶対大事です。大量の教育書を読み漁り、実践しては失敗の繰り返しでした。(今は、この時の努力のおかげで少しはマシな授業や指示ができています。)それでも、経験年数からくる差は縮まりませんよね。初任の先生からしたら、「無理だろ!こんなの〜!!」と思うものばかりです。そこで、今回は、きれいごと抜きにして、初任の先生だからこそできることのみにピックアップして記事を書きました。先輩先生の皆様。初任の先生に“特別感”を持たせるチャンスをあげてほしいです。どうかよろしくお願いします。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。初任の先生方や、大変な思いをしている先生方のお役に少しでも立てたら幸いです。

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