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オンライン公衆衛生大学院に関する雑記【2024年度版】

私は、キングスカレッジロンドンのオンライン公衆衛生大学院で準修士号を取得後、ランカスター大学のオンライン公衆衛生大学院博士課程に進学している。公衆衛生大学院の数は日本では増加傾向にあるが、オンライン公衆衛生大学院への留学に関する情報は非常に少ない。自分及び同僚の体験談をベースに書いていることを前提としたうえで、受験生や進学生の参考になれば幸いである。


オンライン大学院留学の強み

 世界中に同級生がおり、且つ彼らは皆医療機関や国際機関で働いているため、公衆衛生の現場の声を聞けることが最大の強みである。また、学生同士で国際プロジェクトが立ち上がることもあり、現に私は、トーゴ共和国の障碍者支援に関する事業を立ち上げ中である。
 加えて、日本の物価で生活しながら英語と研究の力が高まることは、オンライン大学院留学の魅力でもある。特に3,000-5,000字のライティング課題が頻繁に出され、且つ1つのレポートのために100程度の文献を読み込むため、英語で研究計画/研究論文を書く力が身に付く。なお、スピーキングとリスニングについては、現地留学の方が力がつくと考えられる。

志望校の決め方

 修士課程については、授業で学べる内容はどの大学も大差ないと考えられる。一方、修学年数、入学時期、学費、修士論文が書けるかどうか、選択科目の有無は大学によって差があるため、何を優先して第一志望を決めるかが重要である。私の場合、「修士号が2年で取れる」「教育ローンを組まずに学費が払える」「国際保健の授業がある」の3点を考え、King’s College Londonを志望した。
 博士課程については、自分が深めたい研究テーマや方法論に詳しい教員から指導を受けられるかどうかが最優先である。オンラインの博士課程を有する公衆衛生大学院は限られているため、自分の研究テーマに対応できない可能性がある。指導教官候補にメールを送り、受け入れが可能か早めにDiscussionする必要がある。私の場合、研究科長の方法論と研究テーマが私の研究計画案にマッチしていたため、今の大学を志望するに至った。

日々の生活

 オンデマンド形式の授業に加え、月2-3回ライブ配信の授業がある(録画が後日配信される)。修士課程は2ヶ月に1回ペースで小課題と大課題が提示され、博士課程は週1回の小課題と年3回の大課題が提示される。授業の視聴+小課題の実施で週10時間ほど時間が割かれる印象である。大課題は200時間前後は要している。
 そのため、大課題のための時間をきちんと確保できることが、単位取得に向けて重要である。一定数の学生が最短修学年限で修了できない要因の一つがタスクマネジメントである。
 また、博士課程については、年1回現地を数日~数週間訪問することが義務化されているパターンが多い。まとまった休暇や渡航費の工面も別途必要である。

研究活動

 King’s College Londonの修士課程では、論文執筆の期間は4か月のみであり、原則系統的レビューか既存データの二次分析を行うのみである。しっかりやれば学術雑誌への掲載も可能だが、この期間前に研究室で更なる研究をすることはできない。研究テーマを決めるのが修士課程が終わる直前なので、博士受験を検討している人は、実績が少ないまま博士入試を受けることとなることに注意してほしい。
 博士課程については、博士論文に集中する場であるため、研究経験をしっかり積むことができる。研究室の先輩や後輩の研究サポートをすることはないため、自分の研究に集中できる。

学費

 日本の既存の奨学金は、海外のオンライン大学院に通学する者を対象外としている。そのため、学費は自分で工面する必要がある。イギリスは比較的安いが、アメリカはもっと高いようである。

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