建築物と人の”あいだ”にあるもの。『kudan house』で生まれる物語 <後編>【旅先案内人vol.12】
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建築物と人の”あいだ”にあるもの。『kudan house』で生まれる物語 <後編>【旅先案内人vol.12】

普段、私たちの運営施設をご利用くださっているお客様を対象に、私たちの宿に関わる人々に焦点をあてたニュースレター、「旅先案内人」をお届けしています。

noteではバックナンバーを掲載しています。ここからは【8月19日 配信 旅先案内人 vol.12】の内容をご覧ください。
(温故知新 運営ホテル:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリートföre &villa 1/f 等)


有機的な空間づくり、場を受け継ぐことの意味とは。


夏期限定のレストラン『maison owl PROLOGUE(メゾンアウル・プロローグ)』を実施中の『kudan house』。

旅先案内人では、kudan houseの事業会社の一社である東邦レオ株式会社および運営を行う、株式会社NI-WAの代表取締役社長、吉川稔さんとの対談の様子を2回に渡りお届けしています。

<前編へはこちら>

後編では、有機的な空間づくり、場を受け継ぐことの意味などについてお聞きしました。引き続き、株式会社NI-WA吉川稔社長、maison owl オーナーシェフ平田、株式会社温故知新代表の松山社長、3名での対談の様子をお伝えします。

有機的な空間を作る

吉川:僕は、1から作るのはあまり興味はなくて、既にあるものを活かしたいんです。もとからあるものだと、”生き物”のようになっているので、やりやすい。建てられて3年の建物でも生き物のようなムード感を持っているものならいいんですよ。風景に馴染んでいるというか同化している。でもやっぱり100年くらい経ている建物をリノベーションしたいですね。それは、懐古主義でもなく未来思考でもなく、今を生きているという考えのもとで。

平田:守ることが、活かすことではないですよね。

吉川:kudan houseも最初の頃は当たり前に、築何年で誰が作って、という説明をしていました。初めはやはり、歴史に興味がある方がいらっしゃったので。でも僕はそれではダメだと言ったんです。その100年前の話を売りにしていたら、何も生み出せなくなってしまう。良いのは当たり前で、でも、新しいものに変えて、新しいものが良いですよと言ってしまうと過去を否定することになってしまいます。一方で、過去が良いというと、未来を否定することになる。だから、過去から未来に繋がる中間点としての“今日”が大切だと思っています。今日のこのムードが最高であって欲しくて。

平田:そのお言葉を聞いて、毎日が大事だと改めて実感しました。『maison owl PROLOGUE』(レストラン)のために、この2ヶ月間準備やブランディングをしてきましたが、2ヶ月で決めたものを提案するのではなく、毎日のしつらえがないとだめだということですよね。

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吉川:そうです。僕が以前服屋さんをやっていた時は、毎日レイアウト変えていました。この店は毎日手を入れてる店かどうか、わかってしまうんです。同じ商品が1週間ずっと同じ場所にあったら、死んじゃうじゃないですか。誰も手に触れられてないとか、魂を入れてあげてない。

平田:クオリティを保とうとするとルーティーンを大事にしてしまいますが、そこに安住してはいけないですよね。

吉川:例えば、kudan houseには大きなガラスのテーブルがあります。ガラスのテーブルはすぐに汚れるので、こまめに掃除しなくてはいけないんですよね。今いらっしゃったお客様に「先ほどまで使っていました」と言っても、その人にとってはそんなの関係はなくて。だったら、掃除しなくてもいいような質感のものを置けばいいんですけど、そうすると魂が入らなくなってしまいます。「大変」な方がいいんです。庭は落ち葉がすごいから大変だからと言って、映造花ではダメなんですね。フィジカルなものがないと、お客様に伝わってしまいます。フィジカルに維持しているものなのか、固定的な無機質なものなのか。ギリギリのところだけれど、ちょっと手を抜いたら質感が落ちるというギリギリのところが、目の肥えたお客様は一瞬でわかってしまいます。

平田:これはローカルチャーでもハイカルチャーでもやっていることがすごいことですよね。普通の定食を出してるおばちゃんでもやっているし、シャネルとか高級ブランドでもやっている。

吉川:飲食店でもそうですよ。お店をピカピカに磨いているのと、それなりにピカピカにふいてるのは、味には影響しない。でもその掃除に魂を込めてる屋台と、外注してしまっている高級店だと、それは清掃としてはマルだけど、魂は入らない。

平田:確かに、kudan houseに来た時に古さを感じさせないくらい手入れをされていて驚きました。使っていて、本当に気持ちが良いです。

場をサステナブルに受け継ぐこととは

平田:九段ハウスというのは、90年前には既にできていて、作った人は「100年後あったらいいな」と考えたから、こういうとても丈夫な作りにしたと思うんです。今kudan houseを受け継がれているNI-WAさんがいて、僕は今、1万年後まで残るようなもの(maison owl)を作ろうとしている。この交錯する出会いが面白いなと思っていて。

人という生物、建築という無生物。僕たち生物がいなくなってものこの世に残っていくもの(無生物)を作っているわけで、その後、何世代にわたって受け継いでほしいという思いで、maison owlを始めたんです。自分がいなくなった後のものを作っていく立場としては、僕の思いをそのまま受け継いでほしいとは思ってなくて、生き生きと有機的にやってほしいと思っています。僕の思いなんて捨て去った方がいい。ずっと使われ続けてほしい、愛され続けてほしいという思いだけなんです。だから、(maison owlは)マッシブで重々しいものを作ろうとしています。

吉川:受け継いでいっているかというと、僕もkudan houseを作られた人の思いはわからないんですよね。直接聞くこともできないので。でも、想像しているだけで。今は僕がこうやっていますが、次誰かがやったら、また変わっていく。

松山:残るか残らないかは結果ですよね。「ずっと残ってほしい」という気持ちでやることが大事だと思います。

平田:僕は1万年後に残るようなものを作ろうとしていますが、残るかどうかはわからない。でもその時に、生き生きとしていてほしい、その思いが大切だと感じています。

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物語の瞬間を育む空間を目指して。

吉川:僕もレストラン(maison owl PROLOGUE)を一人のお客として予約しました。石上さんの作品とレストランとカフェの全てが組み合わさって作られる「空気」が楽しみです。僕は、コラボをするのが好きなんですよね。それぞれが持っているものの掛け合わせは、影響し合うし、そこで何か感じたものが、次にだったらここもっと変えていきたいなって絶対思います。それは自分使いの空間の時にしか理解ができないので、使う側に徹して訪れたいと思います。

平田:ありがとうございます。それはハードルが上がってしまったとは思っていなくて、できることしかできないし、準備はもちろんしますが、吉川社長だから特別ではなく、あるがままの姿で心地良いと感じていただければと思います。

吉川:特別なことが良いわけではなく、お客様は、ひとりひとり皆さん楽しみに思ってきてくださるから、それぞれの人がそれぞれの人生の中で重要なストーリー1個になります。僕らはあくまでその場を提供しているだけであって、たとえ雨が降っていても、訪れてよかった、楽しかったなと思われたいですよね。

このような機会を作ってくださり、ありがとうございます。良い出会いとなり嬉しいです。これからの夏がとても楽しみです。

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(左から:株式会社温故知新代表の松山社長、株式会社NI-WA吉川稔社長、
maison owl オーナーシェフ平田)※撮影時のみマスクをはずしております。

<プロフィール>

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吉川 稔(よしかわ・みのる)
株式会社 NI-WA/東邦レオ株式会社 代表取締役社長

1965年10月 大阪生まれ。89年 神戸大学農学部卒業、住友信託銀行に入行。2001年 株式会社リステアホールディングス 取締役副社長。 バレンシアガジャパン取締役。 株式会社リステアインベストメント(ゴールドマンサックスとJV) 代表取締役。10年 クール・ジャパン官民有識者会議委員。14年カフェ・カンパニー株式会社 取締役副社長。16年7月 株式会社NI-WA創立 代表取締役社長に就任、現職。 16年11月 東邦レオ株式会社 代表取締役社長に就任、現職。


編集後記

前編で吉川社長が語られれていた、kudan houseのリノベーションの視点が印象的でした。

100年近く前の、作り手たちの意図は一体何なのか?現代の技術を用いてその本質の部分を再現するとしたらどうなるか?

古いものをそのまま受け継ぐのではなく、作り手の意図に想いを巡らせ本質を探る。そんな、しなやかでピュアなまなざしに、有機的な場づくりのヒントが隠されているような気がします。

この夏kudan houseではじまったレストラン、maison owl PROLOGUE。訪れた方には、kudan houseで紡がれる”今”を、体感していただければ幸いです。

温故知新 小林未歩

レストラン「maison owl PROLOGUE」概要

maison owl PROLOGUE (メゾンアウル・プロローグ)
住所 :kudan house 1階(東京都千代田区九段北1丁目15-9)
期間 :2021年7月1日(木)~10月5日(火)
営業時間 :17:00~20:00 ※政府や自治体からの要請で変更する場合がございます 
定休日 :月曜日
料金 :コース一人24,000円(消費税込、サービス料別途)
予約・問合せ:080-9455-5399(12時~16時)  ※電話のみ受付、事前予約制
maison owl 公式サイト: http://maison-owl.com/

kudan house

 
公式サイト:https://kudan.house/


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ありがとうございます!いつか宿でお会いできると嬉しいです。
瀬戸内リトリート青凪等の宿を手掛ける、ホテルプロデュースの温故知新です。 「目的地になる宿づくり」を目指し取り組んでいる事や、地域・ホテルの魅力・企画などの情報を発信中。 (運営:瀬戸内リトリート青凪・壱岐リトリート海里村上・箱根リトリート före&villa 1/f 等)