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日本にとっての庭園文化って?【1】…様々な観点からの庭園

3週間空いてしまった…!ブログを書く習慣から離れていると、頭で考えていることを文章にすることがなかなか難しい…。
ということで、note書こうと思ったテーマに少しずつ入っていきます。

『庭園文化』ってそもそもなんだろう。
日本全国の1000箇所以上の庭園を巡った素人としての自分の結論から言うと、『一概には言えない』という煮え切らない言葉になってしまうのですが…

以降は一度書いたけどなんかしっくり来ずアップ出来なかった内容――改変しながらもう一度書いてみよう。

[1] 様々な観点からの“庭園”

これはTwitterで以前つぶやいたことのほぼ再掲なんだけど

① 観光目線での庭園(日本三名園や京都とか)
② 歴史目線での庭園(大名・武将の残した庭園とかお城の庭園とか)
③ 芸術目線での庭園(作庭家とか)
④ 宗教目線での庭園(寺社仏閣、宗教学との組合せ)
⑤ 植物目線での庭園(四季の花々を楽しむ)
⑥ 生活における公園/緑地としての庭園(緑は必要)
あと
⑦ 地域民俗学としての庭園(武家屋敷群とか豪農とか?)
⑧ 職業としての庭園(造園・植木業目線)

と、色々な見方がある。
自分のサイトが一番近いのは、そして説明の際に伝えている情報は②>③>⑤でしょうか。あまりで言う宗教的な世界観目線は伝えていない。

で、実は一番遠い存在なのがなのかなと思った。
“庭”に関連する職業を考えると――植木・外構・造園、園芸(ガーデニング)、材料(石材・木材・土…)、職人、設計者・デザイナー、そして文化財調査…たぶんもっとあると思うけど実は幅広い。
なのでちょっとこの目線のことはまずは考えないことにします。

すなわち
『色んなステークホルダーが居るから一概には言えない』
という。

そして「観光庭園」「住宅庭園」を同じテーブルの上で考えるのは、考えれば考える程なかなか難しい。
なのであくまで自分は『観光目線』が主にあることをまず明記しておきます。(その中で一部“住宅庭園”についても書くけれど)

[2] 日本庭園は日本人のDNAに刻まれた文化なのか?

庭園に限らず、『誇るべき日本文化』みたいなものってあるけど――果たして「日本庭園」って日本人の万人にとってそう刻まれたものなのか?

個人的には『NO』と言いたい。言いたいというより“言ってみる”ぐらいの感じですが。

“「おにわさん」について”でも書いている自分が庭園を好きになったエピソードに『高校生の修学旅行で行った、岡山後楽園』を挙げています。
平成の田舎のニュータウンで育った身としては、その日まで人生において『日本庭園』に触れたことはなかったと思う。(潜在的には、『池越しの金閣寺』の写真・画というのは記憶に刻まれているけれど)

先日サイトでアップした『浜離宮恩賜庭園のライトアップ』にも、「東京にこんな場所があるなんて知らなかった」と言っていた人が周囲に居た――といことを書いた。
東京には数多くの大名庭園はあるけれど、都民でも一箇所にも足を運んだことがないという人は、想像以上に多く居ると思う。
多分普通に生きていたら『日本庭園』にふれる機会ってそんなに無いと思う、というのが自分の実感です。京都の市内出身の友達でも「庭園とか全然行ったことない」って人も居たし。

でも考えてみると、“大名庭園”のような広大な回遊式庭園は現代になるまで公開されていなかったわけで。
それが例外だとしても、“本格的な日本庭園”がある家は、ある程度階級が高い人のみに許されたカルチャーだったのでは、と思います。
(武家屋敷だけ見てても足軽の家屋にはそこまでのスペースがなく、せいぜい中級武士からだったのでは)

地域の代表的存在だったであろう「寺社仏閣」で考えてみると、お寺の庭園も建造物の裏にあることが多いので、見学できる人は限られていたのでは?
一方で、神社の神苑なんかは社殿の手前にあることが多いので、多くの人の目に触れていたのかもしれない。

…てな具合に、
『多くの人がイメージする“日本庭園”とは、限られた人にのみ許された文化だった』のではと勝手にイメージしていて、
実は現代が最も『多種多様な日本庭園が見られる時代』なのではと思っています。

だから日本人にとっての『庭園文化』も発展途上。

[3] 地域によって異なる庭園文化

以上のように『日本庭園へふれる機会』は日本の中でも万人共通ではないけれど、一方で「地域によっては日本庭園文化が妙に残っている地域」ってあるなーって思うんです。

京都、金沢なんかは特に有名だとは思うんだけど(水戸や岡山は観光コースに「偕楽園しかない」「後楽園しかない」感があるので省く)、上記のように「お寺の庭園」や「大名の庭園」は限られた人々の上流のカルチャー。

もう少しランクを下げて考えてみると、キーになるのは“中流武家”や“商人”階級。
例えば集中して庭園が残っているエリアで言うと…

・津軽藩領に残る『大石武学流』庭園

(青森県弘前市・瑞楽園)

・薩摩藩領に残る『麓』の庭園群

(鹿児島県志布志市志布志・平山氏庭園)

・長野松代や島原のような“水の都”の同一水源を用いた庭園群

(長野市松代・横田氏庭園)

など。
その他、今すごく気になっている内容で言うと、
・鳥栖の庭師・松尾仙六の庭園

(福岡県小郡市・平田氏庭園)

・近江五箇荘の鈍穴流の庭園群

(滋賀県東近江市・中江準五郎邸庭園)

・新潟の豪農・庄屋・酒蔵に残された庭園

(新潟県新潟市・北方文化博物館)

とか。

…この辺の内容、おそらく造園のプロの方でもピンと来ないワードかもしれない?
別に知識を披露したいわけでもないし、別に「知らねばならない」内容でもないと思います。

つまり言いたいことは“地域ごとの庭園文化がある”ということ。

同じギターロックでも、UKロックだったり、グランジと言ったり、オルタナと言ったり、シューゲイザーと言ったり、ガレージと言ったり、時にはメロディック・パンクと言ったり…そんな違いが庭園にもある。

日本庭園=京都の庭園や日本三名園(ニアリーイコールで大名庭園)の印象が強すぎるとしたら。京都の庭園や大名庭園のような「超一流」は“鑑賞するもの”であって“所有するもの”ではない――って思う人も多いと思う。

一方で、『地方発の庭園文化』がこれまであまり知られてこなかったとしたら、そこに一つのヒントがあるのではないか。(そこにガーデン・ツーリズムが乗っかってくるといいのにな〜〜とは思ったり)

上記のような地域ごとの作庭流派――めんたいロック的な――とか書いて音楽寄りの人に怒られたくは無いけれどw、その辺の情報が少ないとしたら。データベースと言うにはおこがましいので、一つの『カタログ』として、自分のようなサイトに意味があるのかもしれない。

…と素人だけど偉そうに書いてみた。

次回は『変化する庭園文化』について書きます。(本当はそこまで書こうと思ってたけど長くなったのでここで切る!)次回はこんなスパンを空けずに…。

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【今日の庭園写真】

毛越寺庭園
Motsu-ji Temple Garden, Hiraizumi, Iwate
もっと他の写真⬇
https://oniwa.garden/motsu-ji-temple-garden-%e6%af%9b%e8%b6%8a%e5%af%ba%e5%ba%ad%e5%9c%92/

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