【いぎなり東北産】の歌詞の特徴ー「君」と「私(たち)」の関係

おにぎりZZと申します。

前回の記事を投稿した後、Twitter上で想像以上の方に反応をいただき、非常に嬉しく思います。この場を借りて、お礼申し上げます。

卑しいもので、反応を貰えると、もっともっと欲しくなるのが性分です。懲りずに第二弾を書くことにしました。
今回は、前回の記事を踏まえた上で、そこから発展して、東北産のファンに対するメッセージを読み取っていきます。


存在の肯定

『天下一品』が東北産の自己言及の曲であることは、前回確認した通りです。『天一』は、「どんな時も一生懸命にやれることを尽くして、【自分自身と戦いながら】てっぺんを目指す」東北産の目標を歌った楽曲でした。

その際に、ほかの東北産の自己言及の曲として『いただきランチャー』『乾杯ニッポン』『あなたは』の3曲を挙げました。今回メインで取り上げるのは、『いただきランチャー』と『あなたは』の二曲です。

どちらもライブではイントロだけでアガる人気曲です。
(『いただきランチャー』のyoutubeリンクはこちら)

いずれの楽曲も、『天一』同様に、東北から高見を目指していくという決意を感じ取れる歌詞が特徴的ですが、これらの楽曲は、更にもう1つの要素を含んでいると考えます。

それが、「存在の肯定」です。東北産の歌詞で好きなところはいくつもありますが、これこそが、心を掴まれてから中々離れられない理由なのかなと感じています。


「君」の力が必要なんだよ

早速ですが、以下の歌詞をご覧ください。


頂点目指してる これからの未来は
君の力が必要なんだよ
※『いただきランチャー』より
この願い事をかなえるためには
あなたたちがいなければだめ

※『あなたは』より

これらの歌詞は、「東北産は(この曲を聴いている)『君/あなた』の力が必要なんだ」と直球で語りかけてきます。

つまり、ファンとして、ここにいること及び東北産を好きでいることが肯定されるわけです。その時、それぞれの社会的背景や、年齢・性別は考慮されません。

ただ、「こうして東北産を応援していること」が彼女たちの力になっていて、だから「あなたが必要」なのだと端的に示されています。


「キミ/君」の存在を肯定する曲たち

このような存在を肯定する曲は、ほかのアイドルグループにも見られます。
※東北産要素のない項目なので、読み飛ばしてもらって大丈夫です。

例えば、ももクロの『DNA狂詩曲』にはこのような歌詞があります。

背中押してアゲル
蹴ってアゲル
君を好きでいてアゲル

この曲は、少し気弱な「キミ」のことを「僕≒ももクロ」が肯定し、一緒に進んでいこうよりと応援する歌詞になっています。

ねぇ キミといるだけで
なんか 遺伝子が笑う

「キミ」に対して、「生き急げ」「遅れるな」と叱咤する一方で、「キミといるだけで」と、そのままのキミを肯定しているのが特徴です。


エビ中の『YELL』も同様です。
(youtubeリンクはこちら)

君らしく行け
例えどんなことがあっても
君は君なんだよ
代わりなんて誰一人いるはずないから

「君の代わりは誰もいない、だから君は君らしくいていいんだよ」と、ありのままの君の存在を強く肯定する楽曲となっています。


スターダスト以外のアイドルでも、このような楽曲は見られます。
例えば、欅坂46の『サイレントマジョリティー』もそうです。
(youtubeリンクはこちら)

君は君らしく生きていく自由があるんだ
大人たちに支配されるな

この曲は、「君」と「大人たち」との対立構造の中で、君らしく生きていくことを強く肯定し、叱咤する力強さが印象的です。

このように、「キミ(君)」の「存在を肯定」する楽曲は、アイドルシーンにおいて多数登場しています。

東北産の『いただきランチャー』や『あなたは』もこれらと同様の文脈をもった楽曲であると言えますが、これらとは異なる、ある要素が指摘できます。

後悔させないよ

東北産の『あなたは』と『いただきランチャー』が先述の楽曲と比較して、殊勝な点は、「ファンとして」の存在を肯定しているところです。

例えば、エビ中や欅のそれらは、「君らしくいること」自体を肯定している曲です。より普遍的な意味を持たせることで、アイドルの文脈に限定されない、一般にも届くような名曲に昇華させていると言えるでしょう。

東北産はそれを敢えて普遍化せず、「ファンとして」の「君/あなた」を肯定しています。
つまり、今この曲を聴いている「君/あなた」に対して強く歌詞が刺さる作りになっているのです。


後悔させないよ 今私だけを見てよ

「君が今私を応援してくれていることは間違いじゃないよ。それを私が証明するよ」
そんなメッセージが、『いただきランチャー』のこの歌詞からは感じ取れます。


いざ東北から さあ世界へと!
願いかなえてくれるなら
私たちからも約束をします 必ず天下を取ります

『あなたは』では、「CDを買ってください」「東北に遊びにきてください」という願いを、神頼みにするのではなく、今目の前にいる「あなた」に対してしています。

「あなたたちがいてくれるから、私たちの願いはかなうんだよ」
「だから、私たちも応援してくれているあなたたちとの約束を果たすからね」

「必ず」という強い言葉で、約束をより強固なものにしています。

このように、東北産は、歌詞の世界を敢えて限定することで、ファンの存在を肯定するだけでなく、双方向的な関係を構築することを、楽曲の中で可能にしています。

彼女たち自身の熱意や、元来の人懐っこい性格も手伝い、歌詞が持つリアリティは段違いになっていると言えるでしょう。

…逆に、東北産が浮気や推し変に対して非常に厳しいのはこういうところからかなと感じたりもするわけですが…。

とにかく、これらの楽曲は、ファンとしての「君/あなた」の存在を肯定し、一緒に進んでいこう、むしろ、東北産にとっても「君/あなた」は必要なんだよという、双方の関係を歌っているのです。


「君」と「私」の『いただきランチャー』

ここまで、『いただきランチャー』と『あなたは』を同類項として扱ってきましたが、この二曲はメッセージは同じでも、実は大きな違いがあります。

この二曲は、ファンとしての「君/あなた」の存在を肯定してくれる曲です。ところが、登場人物が異なります。歌詞としては僅かな表現の違いですが、受け取り方は大きく変わってくるのです。


まず、『あなたは』は「私たち」と「あなたたち」という東北産と皆産という、多対多の関係性を描いた曲です。

最初こそ「わたし」と「あなた」という呼称を用いていますが、すぐに「私たち」と「あなたたち」の歌になっていきます。

この願い事をかなえるためには
あなたたちがいなければだめ
いざ東北からさあアジアへと それが私たちの願い

曲中でメンバーの名前が呼び上げられ、それぞれが「お願いします」とお辞儀していくシーンがあるように、『あなたは』が東北産と"皆"産との曲であることは明白です。


一方で、『いただきランチャー』は、「君」と「私」という一対一の関係性に終始しています。

君の推しってさ(誰?)
私じゃないの? そうでしょ?(そう)
わかりきってる愛情想像しても

君に対して、「推しは誰?」と聴いておきながら、「私じゃないの?そうでしょ?」と断言する痛快な歌詞が印象的です。

君と私の関係性や性格を示した、秀逸な表現だと言えます。


この瞬間忘れないからね
君の声届いてるからね
もっと聴かせて私だけの応援を

Cメロの歌詞です。「君」が応援しているのは「私」だし、「私」も「君」の応援が必要だよ。「私」は「私のためだけの」応援が欲しいんだよ。という、非常に力強い歌詞です。

ここから間奏が入り、落ちサビとフィナーレに向けて、どんどんと気持ちが高まっていきます。


いつの日から 頂きに登るから
どこまでも行こう(君と)
まだ始まったばかり 夢の旅路走っていくよ
君がいれば最強だからさぁついてきて

「君」がいれば「私」は最強なんだよ
だから、これからもどこまでも一緒に行こう!
と、こちらもCメロに負けないくらい、非常に熱くて力強い歌詞です。


このように、『いただきランチャー』は『あなたは』より、更に範囲を限定し、一対一の関係性を描写しています。それは、ほかでもない「君=あなた自身」と「推し」のことなのです。

確かに、パートによってはあるメンバーがソロで歌っている部分もありますし、結菜ちゃんに関しては、マイクを持っていないことさえあります。しかし、この曲で重要なのは、「君=あなた自身」と「推し」の二人だけです。
そこに、他者が介在する余地はありません。一対一の関係だからこそ、一人ひとり、無数の感じ方が生まれるのが、この曲の魅力だと考えています。

魅力的なメンバーがいる中で、敢えて一人を「選ぶ」という行為、それが推すということだと私は考えています(勿論、推し方には色々あると思います)

そんなかけがえのない推しが「今私だけを見てよ」「一緒に行こうどこまでも」と言ってくれるのは、とても心強いですし、応えたいという気持ちになります。

だから、ライブで『いただきランチャー』が歌われている時、私は自分の推しの葉月結菜さんのことを思い浮かべています。例えば、花怜くん推しなら花怜くんのことを思い浮かべているでしょうし、ひかるん推しならひかるんのことを思い浮かべているはずです。

一人ひとりが推しのことを考えながらライブを見ている…そんな光景をEBeanSのウッドデッキの後ろから眺めるのが、私はたまらなく好きだったりします。

キミとわたしでつくりつづけたグレイトシーン

東北産として語りたかった部分は前項までですべて終わりましたので、ここからはオマケです。せっかくなので、東北産もカバーしている、『We Are "STAR"』(通称:新社歌)についても述べておきましょう。
(youtubeリンクはこちら)

結論から申し上げますと、私はこの曲が大好きです。この曲の素晴らしいところは、落ちサビの歌詞です。むしろ、それまでの部分はこの落ちサビの為の助走くらいに思っています。

この曲は、スターダストプラネットという、何十人ものアイドルで歌うオールスター的な曲ですが、驚くべきことに、その大半は「キミ」と「わたし」という一対一の関係について歌っています。『いただきランチャー』と同様の要素を持っていると言えるでしょう。


なんでわたしを好きになったの?
その理由を聞きたいけど
なんか照れるな ごめんちゃい
答えはまだ言わないで!

ここで歌われている「わたし」とはグループのことではなく、「そのグループの中の一人=推し」であると考えられます。むしろ、曲中で「わたし」と「キミ」以外の登場人物が登場する機会は、非常に少ないです。

「わたし」と「キミ」以外の人物、すなわち「みんな」が最初に登場するのは、1番のBメロです。ここでは、「わたしたち」という呼称で登場しています。

愛を もっと もっと もっと 遊びたくない?
それは たぶん たぶん たぶん
わたしたちなら できる できる

その後「みんな」が登場するのは、2番のBメロです。この曲の主は「キミ」と「わたし」であり、「みんな」の存在は従であることがわかります。

それでは、この曲において、「みんな」がフィーチャーされるのはいつなのでしょうか。それは、下記に記した、大サビに差し掛かる直前のタイミングです。

涙から笑顔まで ぜんぶみんなでつくろう
全力で行くから だから ねえ いいでしょ?
いえす!いえす!いえす!いえす!いえす!
いえす!いえす!いえす!いえす!いえす!

これは、『We Are "STAR"』が社歌としての位置づけを持つことから、最後のオールスターで歌う大サビへのバトンと言って良いでしょう。実際、スターダストプラネット所属の全メンバーで歌う大サビは、非常に迫力があり、感動的です。

しかし、それ以上に印象に残るのが、落ちサビの歌詞です。
偏見ですが、ももクロの『走れ!』然り、スターダストの楽曲において最も感情を揺さぶるのは落ちサビの部分だと思っています。

キミとわたしで
つくりつづけたグレイトシーン
ゴーイング ゴーイング
どこまで いけるかまだ知りたいの

スタプラ全体の合同イベントでは夏菜子ちゃんが、東北産がカバーするときは花怜くんがたった一人で歌うパートです。

その場に何人ものアイドルがいる中で、「たった一人のキミ」と「たった一人のわたし」の二人で作り続けてきた景色や思い出について歌う、そのコントラストが本当に美しいです。今までのこと、そしてこれからの未来を想像させる鮮やかな表現も見逃せません。

『We Are "STAR"』はスターダストプラネット全体の楽曲ですが、このような理由から、東北産との親和性が非常に高いと考えています。

『We Are "STAR"』における「キミ」と「わたし」の関係は、『いただきランチャー』の「君」と「私」の関係とそのまま互換性があります。

これが、私が『We Are "STAR"』が好きな理由です。今後はカバー曲を歌う機会も減らしていくそうですが、是非歌い継いでほしいものです。


おわりに

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

去る1月に開催されたスタプラフェスは、出場グループのメンバーから「1人だけ」シンデレラを選ぶという主旨のイベントでした。

そして、会場に集まった観客からの投票により、CROWN POPの三田美吹さんがシンデレラに選ばれました。ここぞというチャンスを勝ち取った三田さんは本当に素晴らしかったです。
(We Are "STAR"の花彩パートが持っていかれるとか、演出で納得がいかなかった部分はありますが、それはそれとして。)

白状すると、私はシンデレラの投票で推しではない、別のメンバーに投票しています。それは、東北産が「チームとして」シンデレラを取ろうとしていたから。シンデレラのアピールタイムを全てアルバムやツアーの宣伝に使っていたわかりんの様子や、イベント後のメンバーのブログからも、わかっていただけるかなと思います。

それでも、最後の『We Are "STAR"』は、若手8グループ46人、先輩4グループ含めて計64人がいた中で、一際私の目を引いたのは、やはり推しの葉月結菜さんでした。

これだけたくさんのアイドルがいる中で、自分は既にシンデレラに出会っていたんだと感じた瞬間でした。

そう思ったのは、ひとえに東北産というグループが素晴らしいのと、推しが本当に素晴らしいから。

そして、その原風景となっているのが『いただきランチャー』の歌詞やパフォーマンスです。

今回は、そんな『いただきランチャー』や似たようなメッセージ性を持つ『あなたは』について取り上げました。


書きたいことは色々あるのですが、何せ筆が遅いので、次はいつになるか、何を書こうか…。とりあえず、当初の目標であった『おぼろ花火』について書けるのはまだ先になりそうです。

それでは、改めまして、最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。

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