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【#96】愛と青春の修学旅行②

平成。

それは「ポケットビスケッツ」がミリオンを達成するような時代。
この小説は、当時の事件・流行・ゲームを振り返りながら進む。

主人公・半蔵はんぞうは、7人の女性との出会いを通して成長する。
中学生になった半蔵が大地讃頌を歌うとき、何かが起こる!?

この記事は、連載小説『1986年生まれの僕が大地讃頌を歌うとき』の一編です。

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2001年(平成13年)6月27日【水】


🍬🍬🍬🍬🍬🍬🍬
花蓮
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「ET,名前呼んでくれたな!!」

「『バイバイ、半蔵』って言ってたな!」

 

 

E.T. アドベンチャーは、予想以上に感動的だった。

遊園地のアトラクションで自転車に乗る、というのも斬新だ。


 【※】
 USJのアトラクションのひとつ。
 最後にETが名前を呼んでくれるのが感動もの。
 2009年5月10日に、惜しまれつつも終了した。

 

 

『学活』の時間に考えておいたスケジュールでは、このあとは『バック・トゥ・ザ・フューチャー・ザ・ライド』に乗る予定だった。

 

が、トラブルが起きる。
半蔵が、無茶なことを言い出したのだ。

 

「僕、やっぱり『ターミネーター』に行きたい」

「でもなぁ半蔵、乗るアトラクションはジャンケンで決めたじゃん?」

 

USJ内での活動は、グループ行動である。

自由な順番で遊園地を遊べるが、あくまでそれはグループ単位なのだ。

個人で行動しているところが見つかれば、先生に当然怒られる。

 

「そこでいいこと思いついたんだ。僕が、はぐれたことにしてくれないか?」

 

半蔵の説明は、次のとおりだった。

 

『E.T. アドベンチャー』にみんなで乗る
→その後、半蔵はトイレに行く
→グループのメンバーが「外で待ってる」と言う
→半蔵と合流できず、はぐれる

 

「ちょっと噓くさいないか?そもそも、一人で行動して半蔵は楽しいのか?」

 

班長は反対している。

しかし、これはチャンスだ。

 

 

「しょうがないわねぇ、アタシがついていってあげるわ」

「え、別に一人でいいけど・・・・・・」

「一人でうろついてると、警備員に捕まるかもしれないでしょ!」

 

半蔵を強引に説得し、私たちは二人で『ターミネーター2:3-D』に向かった。


(これで二人っきりだ)

 

ターミネーターは、ET以上に混んでいた。

待ち時間は1時間らしい。

待ち時間は長かったが、半蔵の好きなゲームや、バスケの話を聞くのは楽しかった。


「あ、マーガレットだ。きれいね」



USJの中は、あちらこちらに植物が植えてある。
無機質な建物が多い中、きれいな花を見ると心が落ち着く。


「花蓮は、本当にマーガレットが好きだよな」

「・・・・・・マーガレットの花言葉って知ってる?」

「あっ、先生だ!顔隠せ!!」


私たちは、行列の中でしゃがんだ。
今日は私服行動の日なので、隠れれば簡単には見つからないだろう。


そうこうしていたら、私たちの番がきた。


ターミネーターの内容は、圧巻だった。

映像と、現実のスタントショーが融合したショーは、迫力満点で思わず声が出てしまうほどだった。

 

「な、来てよかっただろ?」

「半蔵にしては、いいセンスしてるわ!」


出口でターミネーターとご対面できたのも、実によかった。

 



私は、ターミネーターの顔型の小物入れを買う。

 

 

 

「あのな、このまま『ジュラシック・パーク』も行かないか?」

「え~、早くグループに戻ろうよ」

 

半蔵と二人っきりになるチャンスではある。

が、あまり二人で行動していると、先生に見つかってしまう。

それに、たしか『ジュラシック・パーク・ザ・ライド』は、ジェットコースター仕様で急降下があるはず。


私は絶叫系が、大の苦手なのだ。

 

「まぁ、半蔵がどうしてもアタシと乗りたいんだったら、考えてあげてもいいけど」

 

あまり深く考えず、口にした。

 

「そう!花蓮と乗りたいんだ!!」

 


(・・・・・・えっ?)

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

『ジュラシック・パーク・ザ・ライド』も人気アトラクションだ。

ターミネーターと同じく、1時間待ち、と示されている。

だが、さきほどと決定的に違うのは、私たちに会話がほとんどないことだった。



(さっきの言葉、どういう意味だったんだろう?)

 

半蔵の脳味噌は、かっこいいモノや強いモノ、ゲームが大半を占めている。

恋愛感情なんてあるのだろうか?

 

いや、あるのかもしれない。

だって、私たちは小学校が別々になっても、東京と岐阜という遠距離になっても、手紙の交換を続けていたのだ。
それも6年も・・・・・・。


 

東京の友達には、「純愛だね」とからかわれた。
言い返すべきところだが、照れて黙り込むしかなかった。

 

半蔵の横顔を見る。

きつい目つきと、大きな耳。

「かっこいい」と言われるタイプではないかもしれないけれど、私は惹かれている。

 

(乗り終わったあと、告白されるのかな・・・・・・)

 

修学旅行中の告白、というのはよくある話らしい。

私の鼓動は高まっていた。

それは、『絶叫系が怖いから』という理由だけではない。


(つづく)

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