「メル友になりませんか?」←言われたことある?
「メル友」という言葉があった。
メル友とは、交友関係のない者たちが、インターネットや友人を介して知り合い、メールのやりとりをする関係のことである。
野球のイチロー選手がメジャーリーガーになった西暦2000年、私は中学二年生だった。中高生の間にも携帯電話が普及しつつあり、携帯を持つ者の大半は、メル友がいた。
親に頼み込み、6月の誕生日に携帯を買ってもらった。友人から「メル友募集掲示板」というウェブサイトを聞き、早速メル友を作った。お隣の県に住むA子だ。
私もA子もバスケ部である。年齢も同じだったので仲は深まり、「岐阜と愛知だから近いんだし、会おう」という話になった。
土日はお互いに部活動があったため、夏休みまで辛抱した。名古屋駅周辺で映画を見て、ランチを食べる約束をした。人生初のデートである。自室でひとり、小躍りした。
当日、念を入れ過ぎて待ち合わせ時刻より一時間も早く名古屋駅に着いた。
時間になると、それらしき女の子が近づいてきた。当時はカメラつき携帯などなく、顔は初めて見る。期待以上にかわいいし、服装も好みだ。身体が火照る。
勇気を出し、A子さんですか、と尋ねる。
笑顔でハイっと返事をしてくれた。
やった、と喜んだ瞬間、
「そんな服で来ちゃったの?」
と言われた。
たかぶる感情は、急に凍えた。
バスケばかりやっていたので、服装に興味がなかった。バスケの服=かっこいい。そう思っていたため、ファンだったNBAチームのユニフォームに、サンダルという格好で来てしまった。
周りの人のファッションが急に輝いて見えた。
A子は思ったことを素直に表現するタイプで、悪気はなかった。バスケ野郎と歩くことを厭わなかったし、終始笑顔で楽しんでくれた。
その後の生活では、ファッションにこだわりすぎて迷走。「黒い服=かっこいい!」だった。
今でも、メル友募集掲示板は、存在するのだろうか。
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