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”学校があった土曜日”、僕たちの昼食はうまかった。

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僕が子どもの頃は、土曜日も学校があった。 午前中だけ授業をするのだ。 昼まではちゃんと勉強したという達成感と これから自由に遊べるという解放感があふれていた。 そのテンションで… もっと読む
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土曜日、学校が終わったあとの昼食。

7月中旬、3時間目の体育は今年最初の水泳だ。 いわゆるプール開きである。 水着に着替えると、僕らは、シャワーに突っ込んだ。 「りん・ぴょう・とう・しゃー……」 僕は目をつぶり、手の平を合わせながら耐える。 「かい・じん・れつ・ぜん・ぎょう……」 頭上から襲いかかる水圧と冷たさに、ひたすら耐える。 女子たちに、 と言われるまで、意味もなく我慢比べをした。 プール開きの日は、先生が自由時間を長めにしてくれるので嬉しい。 プールの中で鬼ごっこをするのが楽しかった。

すべての大人は運動会のお弁当を食べることができない

「くっそぉ、2着か!」 100メートル走、本番。 僕はヨッちゃんに勝つことができなかった。 「来年こそ、負けんでな!」 「おぉ、楽しみやん」 団席に戻ると、午前の部・最後の競技、6年生の組体操が始まろうとしていた。 100メートル走を終えた安堵感により、腹が減ってきた。 さらに、ヨッちゃんの、 「お前のカーチャン、来とるな」 という報告によって僕は弁当のことで頭がいっぱいだった。 お母さんは毎年運動会に来てくれている。 ただ、実際に来ていることがわかると、嬉し

学校があった土曜日、あの頃の昼食はスゲーうまかった。

僕が子どもの頃は、土曜日も学校があった。 午前中だけ授業をして、全校一斉に下校するのだ。 昼まではちゃんと勉強したという達成感と、これから自由に遊べるという解放感があふれていた。 そんな状態で食べる昼ご飯は・・・・・・ たまならくおいしかった。 これは、小学5年生の頃の思い出話だ。 「じゃ、昼メシ食べたら来いよ!」 「うん、わかった!」 家がいちばん近い友人に別れを告げ、僕は家に向かってダッシュする。 あいつは、けっこう早食いだからな。 のんびりしていると、す

【01】いちばん多かったのがコレ

家が遠かった。 学校から歩いて1時間かかる。 だから、家に帰りつくころには昼食のことしか考えられないほど腹が減っていた。 母が帰る時刻を逆算して食事を準備してくれていたのが救いだった。 「ただいまー!」 「おかえり。もうすぐお昼できるよ」 この日の昼食は、ラーメンだった。 カップラーメンではなく、袋麺。 サッポロラーメンやチキンラーメンが主力だったが、この日は違った。 出前一丁だ。 言うまでもないが、出前一丁は醤油味だ。 九州から引っ越してきたクラスメイトによると、

あの頃は〇〇なんて無かった

早く帰りたいっ。 クラスの悪友に「土曜日に週刊少年ジャンピングを売る駄菓子屋がある」と聞いたからだ。 本来は月曜発売のジャンピングを土曜に読めるだと!?。僕は大きな魅力を感じていた。 ランドセルに教科書をしまうときからそわそわしていた。 「昼食べたら、お前んち行くわ!」 友人と熱い約束をし、帰路についた。 「ただいまぁ!」 「あおかえりー!ほんなら作り始めるわぁ」 ランドセルを置きに部屋行こうとすると、何かが焼ける音がする。 ジュジュジュジュジュジュ・・・・・・ ジ

香りという名の調味料

ダッシュで帰宅した。 1時間かかる道のりをダッシュで帰宅した。 学校付近で昼間っから焼肉をしている家があり、その香りに食欲を刺激されたからだ。 「ただいまッ」 「おかえり~」 スゲー偶然!ウチのお昼も焼肉じゃん! といった奇跡は起こらなかった。 しかし、台所にはあのにおいが充満していた。 焼肉にも決して劣らぬ、焼きそばのソースの芳香である。 仕事の都合で、父が先に焼きそばを食べていたのだ。 僕も調理を手伝った。 焼きそばの調理は大好きなのだ。 我が家の主流は、カッ

今では『贅沢仕立て』もあるらしい

月に一度の“なかよしタイム”があったので疲れた。 なかよしタイムとは、 というものだ。 今日の遊びはドッジボールだった。 小学5年生にもなると、低学年にフルパワーで投げることはできない(明確なルールはなかったが、暗黙の了解だった) ただ、手加減し過ぎては負けてしまうし、高学年には全力を出し切らねばならない。 絶妙な力加減の調節を求められるという別の意味で疲れる時間だったのだ(楽しかったけど) 「ただいま―。帰ったよぉ」 「おかえりぃ」 腹を空かせて帰ると、調理の音が

【05】炭水化物の二重奏

「今日はキックベースやろうぜ」 その誘いは魅力的だった。 キックベースは、簡単に言ってしまうと野球とサッカーが合わさった遊びだ、 少年たちの好きなスポーツが合体しているなんて、なんて夢のある話だろう。 いつもなら、人数が少なく、「3対3」などになってしまう。 だが、今日は「7対7」ができるほど集まるのだという。 下校中は、ずっとニヤニヤとだらしない顔をしていたと思う。   「ただいまーー!」 「なんか元気だね、おかえり」 この日も、すでに母は料理の最中だった。 台所か