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The last day of the 90's dream

1999年12月26日、日曜22時。店のシャッターが下りた。この場所は、ひと足先に90年代の終わりを迎えた。涙が流れた。


1995年の春、俺は毎日のようにゲームセンターへ通っていた。行きつけの店『ナインティーズドリーム』。ゲームを終えた俺は英文字三字のスコアネームを入力する。『AKI』。アキと呼ばれている。

「ようアキ。もう『アルカード』の対戦でお前に勝てる奴はいないな。誰も乱入して来ないぞ」

この大柄な男は『TE2』。テツさんと呼ばれる気さくな常連客だ。

「上級者が都会から巡業に来たらヤバいですけどね」

「『渋谷オライリー』とかな。この前、百人組手をやってるのを見たよ。オライリーを使って無敗だった」

「何者なんですかね、あの人。ゲー通の編集者じゃないんですよね。どうかしてますよ」

「ま、ウチにもスゴ腕はいるけどな。知ってるだろ、アキ」

テツさんがフロアの隅の方を見ると、脱衣麻雀をプレイする若い女性。画面の肌色面積が大きくなると、拳を握り小さなガッツポーズを決めた。常連客の『KNK』、キノコさんだ。

「ああ、あの人、好きですね」

「ン? お前キノコさんのことが……」

「いや、女の人なのに、女の子を脱がせるのが好きなんですね、ってことですよ」

「アキ、多様性ってやつだ。世の中にはいろんな趣味を持つ人がいる。あの人はベルトスクロールアクションもやるぞ」

「えっ」

テツさんは「今度、協力プレイでも誘ってみたらどうだ?」と言い、3D格闘ゲームコーナーへ向かった。多様性か……。学校では教えてくれないな。俺は自販機でジンジャーエールを買い、再び『アルカード』の筐体に座り、コインを投入した。ほぼ同時に、反対側の筐体からもコインの投入音。乱入者か。話し声が聞こえてくる。

「ダミアンさん、やっちゃってくださいよ」

ダミアンさん?

「都会のテクを見せてやるよ。オレはあの『渋谷オライリー』に勝ったこともある」

なんだって?

【続く】

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わたしは じゅうとく ニンジャヘッズ です。 テレビゲームや WWEが すきです。

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