小説を書くことー23(A)
「うん。ちょっと待って、台所の棚に置いていたから」私は台所に向かっていきました。少し時間稼ぎとシエンに台所に来させるためです。
シエンも5億(10%)のことがあるのか、少し気もそぞろになっています。やくざの親分と契約しても、親分に取って、単なる紙切れですのでシエンの楽天的気分が私にはわかりません。
手持無沙汰だった3人のヤクザは私のあとをぞろぞろついてきて、台所に入ってきました。包丁でも持ち出されたらかなわん、と思っているのでしょう。私は、ついてきたヤクザの一人に、シエンに見つからない、と言ってきて、と頼みました。
シエンは真司のことが気になるのか、なかなか顔を見せませんでした。
親分とピストルをちらつかせていた若いチンピラがシエンを挟み込むように台所に入ってきました。真司は椅子に括り付けられたようで、呼びに行ったヤクザは監視するためか戻ってきませんでした。
「いつもここらあたりに置いていたのだけれど」と言ってシエンに一緒に探すように言いました。横にシエンが来てから、私は「スマホ、もうないから」と耳打ちしました。「スマホ、無いってどういうこと」驚いたシエンの声があたりに響きました。私の感じでは、シエンは6人目のヤクザ、女親分です。
「捨てたの、ライン川に」再び耳打ちをしました。
恰幅の良い親分が「アンタラ、何を愚図ぐしているの。それにスマホスマホって何よ」この親分、どこから見ても、ヤクザヤクザなのですが、どういうわけか女言葉を使います。
その当時PCが出たてで、小型化されたPCの未来機器で携帯並みの大きさと言っても、わからないかもしれません。
スマホの説明をしだすと、ピストルをちらつかせていたチンピラが、「それって、バック・トゥ・ザ・フュチュアー?」親分にはチンプンカンプンで、
「なによ、バック・トゥって」それからチンピラの説明が始まりました。
ヤクザの連中はよほど時間があるのか、ずっと耳を傾けています。チンピラの説明は非常にうまく、子供が目を輝かせて物語を聞くように、耳を傾けていました。
15分ほどかけて終わった話で、「それで、スマホとはどういう関係」
と親分が聞いてきました。チンピラは説明をし終えて少し興奮気味の顔を親分に向けて、そのビフが未来に行ったときに盗んだ試合結果の本の役目を果たすのが、スマホだと思います」
もし私たちが、3回目のジャックポットを的中させたということを聞いていなければ、馬鹿なほら話として、一蹴されたかもわかりませんが、親分は、「それでスマホはどこよ?」
「破壊して、ライン川に捨てました」私は観念したように言いました。チンピラはまだ少し興奮状態が続いているのか、ピストルを天井に向けてぶっぱなしました。「親分。こいつは嘘を言っているのです。億万長者になれる機器をどこの馬鹿が壊してほうりなげます?」
ピストルの音で少しびっくりしたような親分は「福ちゃん、ちょっと落ち着いてよ、どうしてその未来機器を手に入れたのか、聞きましょうよ」と言って、私とシエンの顔を交互に見て、話を促しました。
シエンが説明をしだしたのですが、私の知らなかったことがたくさんありました。
-続くー
ドイツ生活36年(半生以上)。ドイツの日常生活をお伝えいたします。