乗馬が子どもの認知能力に効果
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乗馬が子どもの認知能力に効果

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近年注目を集めているホースセラピー

2021年2月に公開したワンネス財団のnoteでは、ホースセラピーがもたらす、子どもや若者のメンタルヘルスへの効果についてご紹介しました。おさらいすると主に以下のような効果がありました。

● 信頼関係の構築力の醸成
● 不安の軽減
● 抑うつや孤立感の減少
● マインドフルネスの実践
● 自尊心の向上
● 衝動のコントロール
● 自己効力感の向上
● ポジティブなアイデンティティの醸成
● 自己受容
● ソーシャルスキルの向上
● アサーティブネス(自他を尊重した自己表現)の獲得
● 安心できる領域の実感
● 創造性と自発性の醸成

改めてリストを眺めてみると、生きていく上で大事な力として昨今教育界で関心が高まっている「非認知能力」が並んでいることに気づきます。

「非認知能力」とは、
やり抜く力、自信、集中力、自制心、コミュニケーション力などテストでは測れない力で、子どもの将来や人生を豊かにする能力と言われています。

非認知能力_01

では馬と関わることの、認知能力への影響はどうでしょうか。

実はこれまで、馬との関わりがもたらす身体的・精神的機能への効果についてはたくさん研究が行われてきたのですが、子どもの認知能力への影響についてはほとんど研究されてこなかったそうです。

そのことに着目し、日本の研究者らが乗馬が与える認知能力への影響について研究を行いました。2017年に公表された少し古い研究ですが、世界でも注目された興味深い結果が示されていますので、ご紹介します。

この実験に参加したのは10歳から12歳の男子34名と女子72名。

子どもたちは3つのグループに別れ、それぞれ乗馬、ウォーキング、休息と、異なる体験をしますが、その前後に、コンピュータによる高速な質問で認知反応を評価する「Go/No-go」テストと、簡単な算数の問題を解きます。

「Go/No-go」テストでは、子どもたちが状況に応じて適切に行動したり、自制心を発揮したりする能力が判定され、算数の問題では頭の回転の速さが判定されます。また、馬が作り出す動きに反応する子どもたちの心拍数を測定し、乗馬が子どもたちのパフォーマンスに与える影響を調べました。

さて結果はどうだったでしょう。

乗馬には3種類の馬が用意されていましたが、そのうちの2種類の馬(雑種とポニー)に乗った子どもたちの「Go/No-go」テストの結果が大きく向上しており、課題の遂行能力が高まっていることが分かりました。

課題の遂行能力が上がった要因として、この研究を行った研究者の一人である東京農業大学の太田光明教授は、馬の特徴的な動きを挙げています。馬は、ウォーク、トロット(小走り)、キャンター(駆け足)と三段階で加速しますが、この加速から生じる振動が交感神経の一部を活性化し、行動テストの結果が改善されたのではと、太田教授は推測しています。

一方で算数の問題については、乗馬前と乗馬後の結果に大きな違いはありませんでした。これについては「算数課題が簡単すぎたのではないか」との見解が示されています。「Go/No-go」テストはコンピューターのスクリーンにランダムに示される色に反応するという(子どもたちにとってはおそらく馴染みの無い)テストですが、算数問題は1桁の数字を足し合わせるという単純なものでした。「Go/No-go」テストでは子どもたちの心拍数が増加した一方で、算数問題では増加が見られなかったことから、子どもたちが問題に慣れてしまっていた可能性があります。

今回ご紹介した研究では乗馬時の振動によって交感神経系が活性化され、子どもたちの課題遂行能力が向上することが示されました。交感神経系の活性化は、学習能力、記憶力、問題解決能力などの向上をもたらすとも言われていますが、太田教授はより複雑な課題の遂行力への効果を確認するには更なる研究が必要と述べています。

非認知能力-02

非認知能力だけでなく認知能力の向上も期待できる馬との触れ合いの機会ですが、もっと身近にあればと感じます。人間の生活のパートナーとして、かつては日常にあった馬との関わりが、今では特別なものになってしまいました。

乗馬大国と比較しても・・・とは思いますが、フランスでは子どもの習い事1位が乗馬なんだそうです。フランス馬術連盟によると、同国での家から乗馬クラブまでの平均距離は13kmで、乗馬をする家庭の年収中央値は年2万5000~3万ユーロ(約300万~360万円)ということですから、誰でも気軽にアクセスできるアクティビティなんですね(FQ Kids Learning)。

日本でフランスと同じ環境を整えることは難しいと思いますが、日本にも乗馬体験ができる場所が全国に370箇所存在するそうです。一人でも多くの子どもたちが馬との非日常体験を通して自分への理解を深めたり、そしてただ単純に他の生き物との時間を楽しめるように、教育カリキュラムや課外活動の一部に馬との活動が取り入れられるようになればいいのになと思います。

(寄稿:泉谷道子 - 心理学博士)

参考文献:
Ohtani N, Kitagawa K, Mikami K, Kitawaki K, Akiyama J, Fuchikami M, Uchiyama H and Ohta M (2017) Horseback Riding Improves the Ability to Cause the Appropriate Action (Go Reaction) and the Appropriate Self-control (No-Go Reaction) in Children. Front. Public Health 5:8. doi: 10.3389/fpubh.2017.00008

「フランス定番の子供の習い事は? 日本では珍しい“乗馬”が堂々の1位」FQ Kids Learning
https://fqkids.jp/837/






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