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《記事》これからの消費の中心、中国の「新家庭」とは

はじめに

 中国では、この20年での急速な経済成長による社会変化や、電子決済やECといったテクノロジーの影響によって、消費者の行動にも大きな変化が発生しています。その中でも、夫婦関係や子育て、介護といった文脈で、新しい考え方や消費習慣を持つファミリー層を、Onedotでは「新家庭」と呼んでいます。「新家庭」が消費するサービスや商品は、日本企業にとって関わりが深いものが多いため、彼らの最新の動向を理解することは様々な業種や業界にとって重要であり、Onedotでは「新家庭」についての洞察を日々蓄積しています。

1.新家庭とは

 新家庭とは、主に現在20、30代である親を中心としたファミリー層で、従来の家庭とは異なった家族観や考え方、消費行動を有していることが特徴です。
 新家庭が誕生した背景には、この世代が以下に代表されるような、大きな社会変化の影響を受けたことがあります。

- 経済発展による消費や生活様式の変化、都市化
- 女性の社会的地位向上と晩婚化、晩産化
- 医療の発展や健康志向の強まりと高齢化社会の到来
- グローバル化による思考や消費行動の変化
- 技術発展による情報収集やコミュニケーションの変化

 彼らの消費動向や、その裏にある背景を知ることは、育児や教育などに限らず、幅広い産業のプレイヤーにとって、中国市場に根付いて戦略を考える上で必須となってきています。

2.夫婦関係の変化

 女性の社会的地位の向上に伴い、家族内での購買決定プロセスなど、今までの夫婦関係に変化が生じています。2019年に高等教育を受けた女性の割合は55.9%であり、これは男性の45.9%よりも高く、女性の高学歴化が進んでいます。また、女性の賃金は、2016年は男性の賃金水準の77%であったのに対し、2019年には84%に上昇しており、男女間の経済格差も改善されています。伝統的な産業よりも給与の高いテクノロジー産業では女性従業員の割合が高く、実際に約半数を占めていることが、このような男女間の経済格差の改善の要因だと指摘されています。
 女性の社会的地位上昇に伴い、家庭における女性の地位も上昇。その現象の一つとして、女性も家庭内の意思決定により大きく絡むようになりました。例えば、自動車のような、従来は男性(夫)が主体として購入していたものに対して、女性(妻)が発言権を持つようになってきています。2012年に網易汽車とJ.D.Power亜太公司が実施した調査によれば、家庭の中で、車を購入する際の最終決定者の3人に1人が女性(妻)でした。

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 また、女性の社会進出の流れとともに、男性がより家事を負担するようになっており、その中には子育ても含まれます。2019年にPCbabyとiResearchが共同で行った調査では、1990年以降に生まれた女性が母親である家庭において、ベビー&マタニティー関連消費の30%以上が、男性によるものであることが分かっています。

3.子育ての変化 

 男性による子育てへの関与増加だけが、新家庭の特徴ではありません。新家庭では、子育ての方法も変化しており、一世代前の伝統的な育児から、現代的・科学的な育児に大きくシフトしてきました。例えば、離乳食を一つとっても、以前は米粉というお米をすりつぶした粉やおかゆが中心でしたが、今では栄養バランスを考えた、洋食を含む様々なジャンルのレシピがあります。
 教育にも変化があります。中国では、経済成長に伴い社会の教育水準が上がったことにより、大学受験などの競争が厳しくなっているため、新家庭では早期教育を重視します。例えば、早期英語教育が熱を帯びており、子供用のオンライン英語サービスの市場規模は、2019年から2022年の間、年率30%以上の成長が予測されています。

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 一方で、自分たち自身が試験を前提とした詰め込み教育で育ってきており、それを子供に押し付けたくないという親もいるため、試験のみを踏まえた教育だけでなく、芸術や運動を含めた全面教育も熱を帯びています。中国音楽協会の調査によれば、中国では3,000万人の児童がピアノを習い、この人数は毎年10%成長しています。
 また、子育て中であっても、母親が自分自身の時間も大切にする、という点が新家庭の特徴です。例えば、デザイン性を重視した育児ファッションや、妊娠中のメイクなどが売れており、市場が成長しています。2019年のPCbabyの調査によると、1990年以降に生まれた母親は、ベビー&マタニティー関連の消費額の43%を、自分自身のための消費に使っていることがわかりました。この他にも、自分の美容や赤ちゃんの健康のための、マタニティヨガが普及しており、妊婦は出来るだけ動かないことをよしとされてきた従来の子育て観との違いが明白になってきています。

4.祖父母世代との関係の変化

 上記のように、子育てに対する考えを中心に、新家庭の親世代は、一世代前の祖父母世代と比べて価値観が大きく異なります。そのため、以前の中国社会では当たり前に行われていたような、祖父母世代に子育てを丸投げすることに抵抗を感じています。このことは、早期教育重視傾向とともに、中国で幼稚園の使用率が年々上がっている背景の一つだと考えることができます。
 一方、医療の進歩によって、従来と比べてより健康である現代の祖父母世代も、孫に尽くすだけではなく、自分たちの人生を楽しみたいという傾向が見られます。例えば、中国の老人旅行市場規模は、2004年が800億元(約1兆2千億円)であったのに対し、2015年には8,260億元(約12兆3千億円)となっており、消費者として有望なセグメントであることが分かります。
 また、祖父母世代との関係で切り離せない話が、高齢化に伴う介護の問題です。日本に続いて、世界最大の高齢化社会になろうとしており、60歳以上の老人人口は2025年に3億人、2050年には4.83億人になると予想されています。そのため、 老人ホームや成人用オムツ等の市場成長が見込まれており、智研諮詢の調査によれば、2017年の成人用オムツの市場規模は56億元(約841億円)で、前年比35%増で成長しています。

5.ペットも家族

 ペットを、家族の一員として扱う家庭が増えてきています。2019年のiiMedia Researchによる調査では、ペットオーナーの8割近くがペットを自分の子供や家族だと認識するという結果が出ています。
 ペットを自分の家族のように重要視する風潮やペットを飼っている家庭の増加に伴い、関連市場が盛り上がっています。2019年の都市部のペット関連市場規模は2,024億元(約3兆円)であり、前年比18.5%で成長しました。また、量だけでなく質の変化も見られ、ペットファッションや動物病院、ペットホテル、ペット葬儀など、今までになかったようなサービスが登場し、市場が多様化しています。
 近年では、テクノロジーの普及とペット市場の興隆を背景に、E寵波奇寵物など、ペット用EC、ペット関連コンテンツ、ペットコミュニティなどの機能をまとめたアプリも続々と誕生しています。

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6. 日本企業にとっての意味

 以上のように、中国のファミリー層における価値観や消費行動の変化は、育児や教育産業だけでなく、飲食料品、美容品、家電家具、旅行業に至るまで、非常に幅広い産業が関係します。
 中国市場でビシネスをする際は、このように消費者ニーズや接点となるメディアが刻一刻と変化しており、常に考え方をアップデートする必要があります。
 市場変化の流れが早いということは、逆に言えば、新興プレイヤーにとっても参入チャンスがあるということです。また、消費や情報収集のグローバル化が進んでいる世代でもあるため、日系企業を含む外資企業にも十分機会があります。

7. Onedotの取り組み事例

 Onedotが自社事業として運営している育児メディア「Babily」では、まさに中国の新家庭をターゲットとしています。既存の育児関連情報に加え、離乳食のレシピ動画や、マタニティヨガ、早期教育コンテンツなど、新家庭が求める今までとは異なった新しいコンテンツを、WeChatのミニプログラムや、微博や小紅書といったソーシャルメディアなど、「新家庭」世代により馴染み深いメディアで発信しています。 

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   また、関連分野として、家族向けサービスや製品、介護やペット、食品関連を取り扱うクライアント企業の中国進出も多く支援しています。継続的にユーザー調査を行い、中国の新家庭ユーザーへの深い理解に基づきサービスを開発しています。

本稿の執筆メンバー
 邵鴻成 アカウント・エグゼクティブ
 戚婧祯 シニア・プランニングマネージャー
 毛莉敏 コンテンツ&オペレーションディレクター
 鳥巣知得 CEO


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お問い合わせはこちら、もしくは以下のメールアドレスにご連絡ください
info@onedot-inc.com

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