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《記事》中国で急速に普及するアプリ内アプリ「ミニプログラム」とは?

中国で、消費者生活と企業活動の両方にとって、切っても切り離せないものにミニプログラムがあります。アプリ内アプリであるミニプログラムは、アプリを新たにダウンロードしなくとも利用できる手軽さなどの理由から急速にユーザーを増やしています。また、ユーザーの集客がしやすいことや、開発コストの低さなどの理由から、ミニプログラムを開発する企業も増えています。

1.はじめに

 ミニプログラムとは、一言で表現するとアプリ内で動くアプリで、利用するためにアプリをダウンロードする必要がないことが、大きな特徴の一つです。テンセント、アリババ、バイドゥやバイトダンスといった大手IT企業が、WeChatやアリペイなどの自社アプリをプラットフォームとして提供し、様々な企業がその上でミニプログラムを開発、運営しています。(今回は、中国で最も一般的に使われているWeChatのミニプログラムを中心に紹介します。) 

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2.あらゆる場面で使われるミニプログラム

 ミニプログラムは日常的に使用されており、例えばWeChatさえダウンロードしていれば、アプリ上にある各種ミニプログラムで、電気水道費の支払いからホテルの予約、バスや地下鉄の乗車、出前サービスやECの利用、そしてレストランでのオーダーに至るまで、普段の生活で必要なあらゆることを一つのアプリ内で完結することすらできます。
 同様に、ゲームや動画、音楽、カラオケ、読書といったエンターテイメントも、ネイティブアプリをダウンロードせずに楽しむことが出来ます。ミニプログラムの数は、阿拉丁指数によれば、2019年までにWeChatだけで300万以上あり、2020年には500万以上になると予測されています。

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3. 急速に普及するミニプログラム

 ミニプログラムは、アプリを新たにダウンロードせずとも既存アプリの中で使用可能であること、WeChat Payといったアプリ内の支払い機能を利用したスムーズな購買が可能であること、WeChat上で他ユーザーに気軽にシェアできるといった理由から、急速に利用者数を増やしてきました。阿拉丁指数が公表したデータによれば、1.7億人であった2017年のWeChatミニプログラムのDAUが、2年後の2019年には倍の3.3億人にまで成長しています。また、ユーザー一人当たりの一日の使用時間も、2017年の5分程度から、2019年には3倍の15分に成長しており、ユーザー数と利用時間が共に成長していることが分かります。

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 利用者数の増加以外で注目に値するのは、ミニプログラムはアプリをダウンロードする必要がなく、利用が簡単であるため、若い世代だけでなく、中高年世代の利用も多いということです。例えば、2億人以上のMAUを誇る動画ミニプログラム「小年糕+」は中高年層をメインターゲットにしており、簡素なUIで、中高年層が好むような内容の動画を中心に配信しています。阿拉丁指数によれば、2019年のWeChatミニプログラム利用者のうち、3人に1人が40代以上です。 
 また、新型コロナウイルス蔓延をきっかけに、ミニプログラムはますます無くてはならないものになっています。例えば、感染拡大防止のために、建物に入ったり他地域に行く際に、自分の健康状態を証明する健康コード(健康码)と呼ばれるQRコードが、政府主導で導入されましたが、それらは通常ミニプログラム上で取得します。このように、企業だけでなく、政府も活用するほど、ミニプログラムは一般化しています。


4. ネイティブアプリとミニプログラム

 ミニプログラムでは、ハードなゲーム等を除き、基本的にネイティブアプリとほぼ同じことが実現できます。UI設計の自由度も高く、提供者が望む形でのアプリケーションを作ることが出来ます。また、ユーザーデータも基本的には自由に取得が可能です。最近では、プッシュ通知が送れたり、ホーム画面への追加も徐々にできるようになっているなど、ますますネイティブアプリと同様の使い方が可能になっています。   
 その上、ユーザーの集客がしやすいという利点があります。ミニプログラムはWeChat等の既に巨大なユーザー数を誇るSNS上で展開されており、ユーザーは普通のリンクをシェアする感覚で、ミニプログラムを他のユーザーに共有できるため、拡散しやすいからです。先日JDを超え、中国No.2のECプラットフォームになった「拼多多」は、この特性を上手く利用し、WeChatを用いたグループ購入(团购)を普及させた結果、初期のユーザーグロースに大成功しました。
 また、ダウンロード不要で、QRコードを読み取るだけで利用可能であるため、オフラインからの誘引も容易です。例えば、UNIQLOやマクドナルドなどは、ショッピングバッグに自社ミニプログラムへ誘導するQRコードを付けています。このように、アプリストア経由のユーザー獲得コストが年々上がっているネイティブアプリに比べて、ユーザー獲得のポテンシャルが高い点が評価されています。 
 ネイティブアプリと比べて低コストかつスピーディーに開発できる点も、ミニプログラムの特徴です。前者は、iOS版とAndroid版などのOSの違いやスマートフォン機種の違いを考慮して開発や運用する必要がありますが、後者はその必要がなく、開発コストを半分以下に抑えることも可能です。これは、ハンドセットメーカーが様々なバージョンのAndroidを作っている中国では、特にメリットが大きいと言えます。また、WeChatやアリペイ、バイドゥなどのミニプログラムはコードベースが基本的に同じであるため、複数のミニプログラムプラットフォームで展開することも容易です。その他、特にECに関しては、「有賛」などの 自社ECミニプログラムを手軽に作れるSaaSも現れており、さらに低コスト、スピーディーに作成することが可能となっています。

20200629 日本生命様_中国勉強会資料 vF

5. Onedotの事例 

 Onedotでは、育児メディア「Babily」のミニプログラムを自社開発し、WeChatで展開しております。具体的には、妊娠期の体重管理や、妊娠期・授乳期に食べられるものを判別するといった、妊娠期や子育て中の親に役に立つようなミニプログラムを、次々とリリースしています。また、「有賛」を利用した、「Babily」のECミニプログラムも提供しています。これらは、すべて自社のエンジニア及びデザイナーが開発と運用を担当し、日々最新の機能を研究することで、プロダクトの改善を行なっています。

ミニプログラムブログビジュアル

 また、Onedotでは自社でミニプログラムを日々開発、運営することで得た知見やノウハウ、そして社内の人的資源を活用し、他社との協業による新たなミニプログラムの開発、運営も拡大しています。育児領域以外にも、食・ファイナンス・家庭向けサービス等々、様々な領域で現在プロジェクトが進行中です。

本稿の執筆メンバー
 邵鴻成 アカウント・エグゼクティブ
 謝子龍 エンジニアチームディレクター
 鳥巣知得 CEO 

ミニプログラムにご興味のある方は、以下のメールアドレスかこちらからお問い合わせください。
info@onedot-inc.com

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