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《記事》WeChatで行う顧客管理システム「社群」とは?

中国では近年、簡易的な顧客管理システムとして、WeChatのグループをベースとした「社群」が注目されています。従来のCRMの仕組みと比較すると、安価で且つ手軽に運営できる「社群」は、既存ユーザーに商品を効率的にプロモーションしてリピート率を上げたり、WeChat上の自社ショップに誘導して顧客データの囲い込みを実現することで、TMallやJD.comといった巨大ECプラットフォームへの依存を減少させることができます。また、ユーザーから製品に関するフィードバックを直接得られることで商品開発に役立てたり、定期的なブランドとユーザーの交流やユーザー同士の交流により、ブランドへのエンゲージメントを高めるといった使い方も可能です。

1. はじめに

 社群とは、WeChat上のグループ機能を使ったコミュニティであり、LINEのグループチャットのようなものです。1グループあたりの制限人数はLINEと同じ500人程度。もともと、共通の趣味や背景を持った人たちが集うコミュニケーションの場でしたが、昨今では、ブランドが自ら大規模な社群を作り、その中に自社商品・サービスのユーザーを囲い込んでいます。例えば1グループ500人の社群を数千、数万個単位で運用することで数百万人のユーザーに直接コミュニケーションすることが可能になります。ブランドは、社群を通じて定期的に情報を発信することで、簡易的なCRMツールとして使われています。 

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 もともとはWeChat上で微商と呼ばれるマイクロビジネスを行う個人が、顧客との関係を維持するために始めた社群ですが、この数年で大きな転換期を迎えました。社群内での商品プロモーションからWeChat内の自社ショップ(微商店)に直接送客できることから、TmallやJD.comなど大手ECプラットフォームへの依存度を減らすD2Cモデルとして、大手のブランドからも注目されているのです。
 また、ユーザーにとって有益なコンテンツを定期的に提供したり、Q&Aなどを通してユーザーと親密に交流することによって、ブランドロイヤリティを高めるといった効果や、ユーザーから製品やサービスに対する意見を直接聞くことによって、商品開発に役立てるといった使い方も注目されています。
 1グループに最大で500人まで参加可能である社群ですが、次に紹介する完美日記(Pefect Diary)のように、数百万人のユーザーを抱えている企業もあります。社群を専門的に運営するチームがあり、ユーザー管理や、コンテンツの制作、イベントの開催、ユーザーからの質疑応答、商品プロモーションなど、業務は多岐に渡ります。

2. 完美日記の例

 社群運営の代表例として、若い女性を中心に人気がある中国の化粧品ブランド完美日記が挙げられます。
 まず特筆すべきは、社群運営のそもそもの前提となる、社群ユーザーの集め方です。完美日記は、TMallで展開している自社ショップで商品を購買したユーザーに商品を届ける際、「紅包」と呼ばれるお年玉付きのステッカーを商品の箱に封入します。ユーザーは、そのステッカーにあるQRコードを読み取り、完美日記のWeChatアカウントを友人として登録した後、社群に招待されます。社群に参加して初めて、ユーザーは追加したアカウントからWeChat Payで現金をもらうことができるのが、ユーザー数を急増させたポイントです。
 完美日記の社群は、運営方法にも特徴があります。「小完子」という若い女性の実写キャラクターアカウントが運営を行っており、アカウント数は100個以上あります。「小完子」は見た目が良いだけでなく、フレンドリーなキャラクター設定であり、ユーザーの質問に親身になって答えて交流したり、「小完子」のタイムラインでは、化粧とは全く関係のない旅行やグルメのことを発信したりするなど、商品ユーザー層がブランドに対して親しみを持てるような運用をしています。

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 商品のプロモーションももちろん行われており、同じWeChat内のミニプログラムである自社ショップへ直接誘導しています。社群でのプロモーションには、広告費をかけずに既存ユーザーに効率良く届けることができるという利点があります。

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ユーザーの商品に関する質問に回答し、信用を得ています

3. 芳研社の例

 社群で、ユーザーから商品に対するフィードバックを直接もらい、商品開発に役立てている企業もあります。中国のエッセンシャルオイルブランドである芳研社は、優良顧客と認定したユーザーを「天使群」と呼ばれる社群に入れ、新商品のサンプリングを行っています。この社群に入っているユーザーの90%以上が満足するまで製品改善を行い、その後市場に投入することで、全体の顧客満足度を高めています。
 また、企業が製品の開発時に感じた生々しい苦労や喜びの声などを、社群でユーザーと分かち合うことで、ユーザーに「参加感(エンゲージメント)」を与え、結果的にブランドロイヤリティーを高めています。


4. ワンドットの例

  ワンドットでは、自社育児動画メディア「Babily」の社群を運営しています。Babilyの社群は、ユーザーの赤ちゃんの月齢や、離乳食といったジャンルで分かれており、合計で3万人が所属しています。社内には社群運営専門チームがあり、ユーザーの子育てに関する質問への専門的な回答、子育てに関する実用的な知識の定期的な配信により、ユーザーとの関係性を構築するのと同時に、商品プロモーションを行い、WeChat内の自社ショップに誘導しています。

BBL媒体資料+ブログビジュアル2


 また、ワンドットは他社様の社群の立ち上げ、運営の代行サービスも提供しています。オムツなどの消費財を展開しているA社は、商品プロモーションのほか、子育てに関する知識の共有、ユーザーとのインタラクションによって、売上を向上させ、既存顧客のロイヤリティを伸ばすチャレンジを続けています。また、最近では、育児専門家による有料講座をユーザー特典として無料で提供するなど、有料知識コンテンツといった、最新のトレンドも積極的に運営に取り入れています。このように、目的に応じた運用がフレキシブルに出来る点が社群運営の利点となります。

本稿の執筆メンバー
 邵鴻成 アカウント・エグゼクティブ
    吴姗穎 社群ECディレクター
 谷哲也 CSO 

社群にご興味のある方は、以下のメールアドレスかこちららお問い合わせください。
info@onedot-inc.com



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