ノーコードスタートアップの資金調達動向
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ノーコードスタートアップの資金調達動向

先日、ノーコード スタートアップ大全なるものを公開したところ、大きな反響をいただきました。前回は主にプロダクトにフォーカスを当てていましたが、今回は資金調達について解説したいと思います。海外ノーコードの中でも、どのようなカテゴリーにリスクマネーが流入しているのか、Exit状況なども明らかにしていきたいと思います。

ノーコードスタートアップの資金調達動向

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ノーコードスタートアップは全158社ありましたが(もちろん網羅できていません)、資金調達している企業は91社(57.6%)でした。後述しますが、創業して間もない企業も多いため、資金調達企業は今後より増えていくと思われます。資金調達を行った企業(91社)の内、16社はすでにExit(IPOまたはM&A)しています。

もちろん、資金調達が全てではありません。メールマーケティングを支援するMailchimpBenchmark Emailは、いずれも2000年代に創業したにも関わらず、一度も外部から調達せずにビジネスを成長させています。さらに、AWeber Communicationsは1998年創業とスタートアップとしてはかなり歴史のある企業となっており、自己資金でスケールさせられるビジネスも多々あるでしょう。

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ここからは、資金調達を行いExitを目指している75社にフォーカスを当てていきたいと思います。ラウンド毎の調達企業数をみると、Seedステージが最も多く、レイターになるにつれて減少していく綺麗なピラミッドになっています。シード〜アーリー層が厚いことから、まだまだこれから盛り上がっていくでしょう(etc:クラウドファンディングやセカンダリーマーケットによる調達など)。

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©︎Bubble

先日も取り上げましたが、アプリ構築プラットフォームのBubbleは、シードにも関わらず$6.3Mを調達しています(日本だとシリーズAぐらいに該当しそうですね)。2019年6月に実施されたこのラウンドでは、SignalFireとNeoをリードとして、Frederic Kerrest氏(Okta共同創業者)やJoseph Zwillinger氏(Allbirds共同創業者)などからも出資を受け、計20名(社)からの調達となりました。同社は創業が2012年ですから、約7年間、自己資金でビジネスを行っていました。それにも関わらず、この時点で27万人のユーザーを抱え、Bubbleを利用して作られたアプリは23万を超えていました。マーケティングに一銭も投じることなく、ここまで事業を成長させられたのは、プロダクト力の高さとコミュニティ作りが影響しているのでしょう。同社は ”Bubbler” と呼ばれる熱狂的なファンを作り、そこからの口コミで新たなユーザー獲得を行っています。以下の記事では資金調達までの背景をファウンダーが熱く語っています。

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©︎Webflow

続いて母数が多いシリーズAでは、Webサイトをノーコード で作れるWebflowが累計$74.9M調達しています。同社は2012年に創業され、Y Combinatorが支援するスタートアップの1つです。2013年には、Y Combinatorを含む複数の投資家から初めて資金調達を行います。また、2014年には1万人だったユーザー数を1年間で10万人にすることに成功し、Khosla Ventures(SquareやOktaなどへ投資)、Draper Associatesなどから$2.9Mを調達。月間売上もリリース当初から約10倍になっていたそうです。そして、2019年8月に行われたシリーズAでは、Facebookなどへの投資で知られるAccelをリードとして、FundersClub(slackなどへ投資)やClark Valberg氏(InVisionApp共同創業者)などを新たな投資家として迎え、$72Mの調達に成功します。Forbesによると、シリーズAの時点ですでに年間$20M(約21億円)の収益を上げていたそうです。従業員も1年間で70名から120名へ増加しており、急拡大しています。ローンチ当初は、フリーランスのデザイナーを中心に利用されていたWebflowですが、現在はZendeskやDELL、楽天などの大企業にも利用されています。Webサイト作成ツールは、WixStrikinglySTUDIOなど数多く存在しますが、同社がどのようなポジションを築いていくのか楽しみです。今後は、Webサイト構築以外の分野にも進出すると公表しています。

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ラウンド毎の累計調達額を確認してみると、シリーズAでも20億円弱、シリーズBでは約43億円、シリーズCでは約87億円が中央値となっています。日本で代表的なノーコードスタートアップと言えばYappliですが、累計調達金額は40億円(シリーズC)となっており、やはり海外の方がノーコードへの投資が加速していると言えそうです(そもそものプレイヤー数が全く異なりますが)。

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©︎Airtable

シリーズDは母数が極端に少ないため、あくまで参考程度に留めていただければと思いますが、データベースを簡単に構築できるAirtableが累計$355.6Mの資金調達を行っています。同社は2013年に創業された企業ですが、同じ年にFounder CollectiveおよびCaffeinated Capitalから資金調達することに成功(金額非公表)。その後、5年間で4回もの資金調達を行い、累計$170Mを調達していました。2018年に実施されたシリーズCでは、TwitterやUberなどへ投資していたことで知られるBenchmarkや、SlackやInstagramなどへ投資していたThrive Capitalをリードとした資金調達を行い、$1Bのバリュエーション(調達前)でユニコーンの仲間入りを果たします。そして、今年9月に実施されたシリーズDでは、既存株主を中心に$185Mを調達し、累計調達額は$355.6Mとなりました(バリュエーションは$2.3B)。とてつもない勢いで調達していますね。

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©︎Uipath

シリーズEも同じく母数が1件なのですが、RPAを提供するUiPathが累計$1.2Bもの資金を調達しています。日本円に換算するとだいたい1,260億円です。これは、バリュエーションではなく ”資金調達額” です。規模が桁違いですね・・・。同社は2005年に創業されましたが、約10年間、全く資金調達を行っていませんでした。2015年のシードラウンドから始まり、2020年のシリーズEまで、合計7回もの資金調達を行っています。Sequoia CapitalやAccelなどの著名なVCからT. Rowe Priceなどの機関投資家、そして、Tencentなどの事業会社からも調達を行っています。今年7月に実施したシリーズEでは、$10Bのバリュエーションを付けて$225Mを調達しました。ユニコーンから ”デカコーン” へ変貌を遂げた瞬間です。いつExitするのかは分かりませんが、ノーコード の中でも圧倒的な存在となっています。

どのようなカテゴリが注目されているのか

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ここからは、どのようなカテゴリのノーコード が評価されているのかを明らかにしたいと思います。カテゴリ別の資金調達企業数を見ると、最も多いのがAppsとなっています。先ほど紹介したBubbleやGlideなど、日本でも少しずつ認知が広がっているスタートアップも多く存在します。

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©︎Unqork

Appsの中で累計調達額が最も大きいのが、保険会社などの金融機関へアプリ開発プラットフォームを提供するUnqorkです。創業してまだ3年ですが、すでに5回もの資金調達を行い、累計調達金額は$365.2Mになっています。株主は、GoldmanSachsやBlackRockなどの金融機関、CapitalG(Google)や日本でも活動するWiLなどで構成されています。ちょうど今月に実施したシリーズCでは、$1.8Bのバリュエーションで$207Mを調達し、ユニコーンの仲間入りを果たしました。破竹の勢いで資金調達を成功させている背景には、ファウンダーであるGary Hoberman氏のバックグランドに起因する部分が大きいと推察します。同氏は、1996年からCity Groupのマネージングディレクターを務めた後、Metlife社へ。2014年には最年少でExecutive Vice Presidentに就任したそうです。その後、2017年に同社を創業しているため、24年間も金融業界にいるプロフェッショナルです。金融業界の商習慣や業務フローはもちろんのこと、業界ならではのペインを深く理解しているところがプロダクトへ反映され、投資家にとっても魅力的に映っているのかもしれません。

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累計調達額の中央値を見ると、Design分野における調達額が突出して大きいことが分かります。しかし、デザイン作成ツールのCanvaとプロトタイプ作成ツールのMoqupsの2件しかないため、データとしては信頼性に欠けるかもしれません。

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©︎Coda

続いて大きいのがCollaboration分野で、オールインワンアプリのCodaが最も多く資金調達を行っています。同社は2014年に創業されましたが、同じ年にはGreylockなどから$25Mの資金調達(シリーズA)を行っています。何故こんなことができたのかは定かではないですが、普通では考えられないですね。その後もKleiner PerkinsやEvan Williams氏(Medium創業者)をはじめとする著名な投資家から資金調達を行い、累計調達額は$140Mとなりました。直近でのバリュエーションは$556Mとなっています。ちなみに、競合であるNotionは、今年4月に実施したラウンドで$2Bの評価を受けており、両者の間にかなり差があることがわかります。Notionはすでに黒字化しているなんて噂もあり、強気に交渉できたのかもしれません。

ノーコードスタートアップのExit状況

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Exit状況についても触れておきます。全158社の内、16社がすでにExitを果たしています。その内訳を見ると、12社(75%)がM&AでExitしています。アメリカでは8〜9割のスタートアップがM&AでExitしているので、これに関して特に言及する点はありません。

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Exitした16社の中で、最も(Exit前の)調達金額が大きかったのがNintexで、累計$135Mを調達していました。同社は2006年に創業された古参スタートアップで、ワークフローを自動化するプラットフォームを提供しています。2013年に初めて実施したラウンド(シリーズB)では、TA Associates(ZoomInfoなどへ投資)とUpdata Partnersから$135Mを調達(バリュエーションは$92M)しました。そして、2018年にPEファンドであるThoma Bravoに買収されることとなります。その後、2019年にHarcourtsという不動産企業から出資を受けており、近い内にIPOするのかもしれません(そういう意味ではまだExitとは言い切れないかもしれません)。

IPO企業の中で最も多く調達していたのがShopify。最近は日本でも広く知られるようになりましたが、ECサイトをノーコードで作成できるサービスです。日本でいうBASEに近いプロダクトですね。同社は2004年に創業された企業で、2007年に最初の資金調達を行い、Klister CreditというPEファンドから$250Kを調達します。2010年に実施したシリーズAでは、SaaS VCで著名なBessemer Venture Partnersをリードに$7Mを調達。その後も、TwitterやSmartsheetなどへ投資していたInsight Partnersなどの投資家を新たに迎え、累計調達金額は$122.3Mとなりました。そして、2015年5月に見事にIPOを成し遂げ、上場企業の仲間入りを果たしました。足元ではデジタルシフトの恩恵を受けて株価は急上昇。年初来でみると2.5倍、IPO時点まで遡ると35倍にまで至っています(10月22日時点)。仮に複利で投資していたとすると、だいたい年率100%、つまり、毎年2倍になっていたということです。恐るべしスタートアップですね。

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©︎Google

調達金額を比較すればわかるように、現在は以前よりもリスクマネーがノーコードへ流入しやすくなっています。AirtableやUiPathのような大型調達を成功させるスタートアップはますます増えてくることでしょう。加えて、シードステージのスタートアップが多いことから、”ノーコード市場” がどんどん盛り上がってくることが想定されます。日本でもYappliをはじめとしたスタートアップが存在しますが、やはり海外と比較すると多くはありません。日本でもノーコードスタートアップが活躍できるように支援をさせていただくと同時に、ノーコードを活用した起業がどんどん増えていくことを願っています。以下、ノーコードスタートアップ大全では158社のプロダクトについて紹介しています。是非こちらもご覧ください。

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Written by @saas_penguin

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SaaSスタートアップへの投資と大企業のDXを支援するベンチャーキャピタルです。スタートアップと大企業の両面から、日本の変革を推進します。コーポレートサイト(Notionで作りました):http://www.onecapital.jp/