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Interview : PROM in May 2020.

パンクやハードコア、スケートといったカルチャーをバックボーンにもち、ピーズや忌野清志郎から影響を受けるリリカルな日本語詞で叫び歌う楽曲には彼らのライフスタイルが真空パックされています。生活の中で浮かび沈む様々な情景をささくれた音像で描き出す。そんなPROMのみなさんからお話を伺いました。

▽よろしくお願いします。メンバーみなさんの自己紹介をお願いします。

タンゲ(トップ写真左):ギターとボーカルを担当しております、タンゲと申します、28歳男です。
ミヤタケ(トップ写真右):はじめまして、ミヤタケです。PROMでベースを弾いてます。
フジタ(トップ写真中央):ドラムのフジタです。

▽みなさんはどのようにグループを結成したのでしょうか?過去にはパンク・ハードコアを発信する西荻窪PIT BARで自主企画を開催されていたりと、みなさんの音楽のバックボーンも含めてお話を伺いたいです。

タンゲ:
自分とベースのミヤタケが中学校の同級生で、ドラムのこーちゃん(フジタ)はミヤタケの小学校時代の同級生です。
ミヤタケとはお互いスケートで遊ぶ様になってから仲良くなりまして、みんなで毎日のように代々木公園までプッシュして行ったり、お互いの好きなスケートビデオ、スケートのゲームをシェアしたりしてました。
こーちゃんとは、高校の時に自分がドラマーを探していた時、友達から「ドラム上手いやつ知ってるぞ」って言われて、紹介してもらいました。

音楽に興味を持ち出したのはスケートビデオやゲームからです。
元々姉から借りたMDに入ってたブルーハーツ、ハイロウズ、ちょっと飛んでSNAIL RAMPとかは聴いていたのですが"Tony Hawk Pro Skater"っていう実在のスケーターをキャラクターに遊べるゲームがあって、そのイントロの曲がAC/DCの"T.N.T"だったりMotorheadの"Ace Of Spades"だったりRamonesの"電撃バップ"で、もう本当に雷が落ちたような衝撃でした。
そこからどんどんパンク、ハードコア、HR/HMに没頭していきました。

初めて見たスケートビデオがTransworldの名作"Sight Unseen"で、その各フッテージが自分のノスタルジーの塊でして各ライダーのスタイルはもちろん、曲もRay Barbee,J mascis & the fog,The Shins,Moody Blues等の楽曲がとにかく素晴らしいです。今でも夕焼けを見ると思い出すのはこのビデオで見た情景だったりします。ハードコアパンクとの出会いもやはりスケートカルチャーからです、スケートデッキがジャケットに写っていれば、何でも聴いてました。

ミヤタケ:
三人とも地元の友達で、学生時代はそれぞれ別のところで音楽をやっていました。PROMに関しては、前身のバンドが終わったタンゲくんが新しいバンドをやるということになり、そのデモ音源を僕が録音したことがキッカケです。その時に聴いた「濁流の中」が非常に良かったので、一緒にやりたいと思いベースとして参加した、って感じです。ハードコアやパンクは自発的にはそんなに聴いてないですが、高校の頃はタンゲくんがお勧めしてくれたものを聴いてました。僕自身はポストパンクとかノイズ、インダストリアル、2000年代頃のアンダーグラウンドヒップホップが好きです、バンドの音楽性とは全く関係ないですが。

フジタ:
三人とも地元の友達なんです。

タンゲとは、高校時代に別のバンドを組んでいました。
約3年前に急にタンゲに誘われたことがきっかけでPROMに加入することになりました。ミヤタケはしばらく留学していたので、PROMで久しぶりに会いましたね。パンク・ハードコアはほとんど通ってきていないのですが、タンゲが作る曲はいつもかっこいいと思っていました。

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▽先日1st album「IN THE MUDDY STREAM」をリリースされました。MVにもなった「濁流の中で」も含め、どの楽曲にも共通するささくれたギターと乱れ打つエイトビートからは怒りや焦燥を感じます。反面、とてもセンチメンタルな雰囲気を併せ持っていて不思議と爽やかな感触もあります。楽曲に込められたメッセージを教えてください。

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タンゲ:
ありがとうございます!
基本的に暗いし、独りよがりだし、はっきりしてない歌詞が多いですが、、、こんな感じです。※以下、各曲名にspotifyへのリンクあります。

【これはなんだ】
高校生の時、Bauhaus,The Cult等のポストパンク/ゴス周辺に没頭していてしょっちゅう目張りをしてたんですが、年の離れた姉から「恥ずかしいからやめてくれ」と何回も言われるほど続けたくなって、何故やめてほしいのかと聞くと「そんな人見たことないから」と言われました。ガキだったのもあり「僕が見るライブハウスでの風景に確実に存在しているのに、何故無いもの扱いするんだろう?」って思いました笑。要は「自分が見るものだけが真実だと思って良いのか?」って疑問を持ったというか。

漫画「ベルセルク」でも、権力者や凝り固まった人には妖精が見えない描写があり今だって、例の特別定額給付金の受給がされない、住所を持たない人たちが沢山いますよね。そんな人達のことも「見ていない = 無い」にして良いのかって思います。僕は確かに存在してるし、臭いものに蓋をするなら、発酵して溢れ出てやるまで。その激臭を嗅がせてやりたいって思ってます。※姉とはすごい仲良いです。

【ディサイドフェイドマン】

西荻に引っ越したての時は金曜、土曜とハードドランクが続き、完全復活で起きれば日曜日の20時なんて事が頻繁にあって自分のせいなんですが「もう今日はおしまいなのか…」って、無意味に落ち込む事があって。そんな空振りの夜にもあと数時間残されてるし、峠を越えるまで繁華街に繰り出してやるか!って決起した歌です笑。


【フライトレイト】

Flight Rate(飛行速度)を意味するのですが、難しい事抜きに自分の好きなもの寄せ集めたいなと思って、どんどん加速していってやるぞって思いの曲です。好きなものごちゃ混ぜみたいな。嫌悪感をもっと!


【職安通り】

僕の古くの友人で、羽根木公園という世田谷の公園敷地内にプレーパークという施設がありそこのまとめ役をする"プレーリーダー"なる仕事をしていた人がいました。彼は2016年に若くして持病で亡くなってしまったんですが、その彼はメインの仕事として鳶職や現場の仕事を沢山していました。
一昨年に自分が当時の仕事を解雇されて、大久保にある職安通りのハローワークに通っていた時、彼みたいな30代の肉体労働者を沢山見て、懐かしく感じて作った曲なんです。「煙の匂い」っていうのは彼とプレーパーク内で囲った焚火や、彼の吸っていたキツいたばこのことで、今でも彼はあの業火の中にいるのかなあとか…まとまらずすみません。できれば消えて欲しく無い匂いを曲として残したかった、といった感じです。


【内戦前夜】

思うようにバンドが出来ず、何もせず、トライせず、最低の20歳の時に作った曲です。バンドって人がいないと出来ないし、出来ないもどかしさに苦しんでいる人の気持ちがすごい分かるけど行動も無しに状況は良くならないし、ここにいたら自分は腐ってしまうと思って「近しく小さな庭で争うよりも、互いの新芽を育てよう」という気持ちや、当時疎遠になった友達ともまた会えたら良いなという気持ちが込められてます。

【濁流の中】
解散してしまいましたが、日本が誇るハードコアパンクバンドVIVISICKのアルバムに"Respect And Hate"という名作がありまして、週末のライブハウスに遊びにいくたび「懐古主義」と「伝統を守る」のどちらがより良いパンクロックを生めるのかずっと気掛かりでした。やるか?逃げるか?
PROM版のshould i stay or should i go、悩ましい一曲です。

【手数料無料】
トライするのにコストが掛からないことが多いのに、願望を叶え易い世の中なのに、まだ僕は足を踏み出せていなくて、誰かに怒号を浴びせられることもなく即身仏になってしまうんじゃないか。始めるのはタダ、やるしかない、他人に委ねる現状から抜け出したいという気持ちで作った曲です。

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▽歌詞について「職安通り」や「手数料無料」など、市井の人々の視点から描かれる風景とワードセンスの歌詞はライブでシングアロングしたらとても気持ちいいだろうなとこぶしを握りたくなるものがあります!歌詞はどなたが書かれていますか?

タンゲ:
ありがとうございます。
作曲/作詞は僕が担当しております。日本のフォーク/ブルースやロックバンドに多大な影響を受けてましてブルーハーツ、RCサクセション、TIMERS、サンハウス、MOJO CLUB、Theピーズ、TOMOVSKY等には本当に20代前半助けてもらいました。

若干の偏見交じりだと重々承知でお話ししますが、海外の王道ロックの「そんなこと気にせずロックしようぜ!」ていうド派手さも大好きなのですが、自分がバンドやるにはとても「今日は踊りまくって嫌なこと忘れちまえ!」「パーティしようぜ!」みたいな歌詞は歌えなくて、というか性格的に合わなくて 笑。

RCサクセションの"ドカドカうるさいR&Rバンド"では「悲しい気分なんかぶっ飛ばしちまいなよ」って言ってるし、実際そういうパーティな曲もRCには多いのですが初期から聴くと「三番目に大事なもの」とか「弱い僕だから」とか「甲州街道はもう秋なのさ」とか、すんごくひん曲がってて内気な曲ばっかりで笑。

MOJO CLUBの"SAD SONG"とか「何も知らなければこんな気持ちになっていなかったよ」て、非常にあからさまに弱い一節とかもあって
「ロックバンドってこんな内気でもいいのか!?」って思いました笑。

日本のハードコアパンクがずっと大好きで、GAUZEやDEATH SIDEやPAINTBOXの歌詞に勇気付けられることが多々ありました。
僕の勝手なイメージで、あの歌詞たちは他者にでもあり、自分自身に怒っているようにも感じていてそう考えるようになってから、自分が歌っていることはほとんど自分に向けての喝としてのメッセージが多いかもしれません。
人にとやかく言える立場でもないですし、自給自足です笑。

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▽バンド活動には様々な魅力や大変な部分が多くあると思います。活動の中で楽しいことや、皆さんの日々の生活にバンドがどうフィードバックしているか教えて下さい。

タンゲ:
悩むことは多々ありますが、バンドとか自己発信が出来ずにしんどかった時より遥かに楽しいことばっかりです!色んな人に出会って、お互いの音楽を楽しんでお酒を飲む、そんな非日常な空間が日々を生きる糧になっていると思います。

ミヤタケ:
どちらかというとバンドに日々の生活がフィードバックしていることのほうが多い気がしますが、基本的に大きい音を出したり聴いたりすることは楽しいことだと思います。それが日々の生活に耳鳴りとしてフィードバックされています。

フジタ:
まず、単純に演奏することが好きですね。
僕にとって、バンド活動は友達と集まって遊んでいる感覚なんです。
なので生活の中で良い息抜きであり刺激にもなっていると思います。

PROM - OVERGROUND (Official Music Video)


▽PROMが発信するアートワークがとてもかっこよく、特にスケートボードが頻繁に登場します。楽曲もまるで雑踏をクルージングしてすり抜けていくような雰囲気を感じています。メンバーのみなさんスケーターなのでしょうか?

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タンゲ:
中学~高校まで、かなりの頻度でミヤタケやその他の地元の友達と羽根木公園でスケートして過ごしてました。
通信制高校に通っている子たちは平日の朝から、全日制の高校に通っている子たちは夕方ごろから合流する毎日でした。

Minor Threatのイアンマッカイがスケートボードに対して「精神的な支えになった」と話すように、スケート中に浮かぶ情景や視点等が重要だったりします。今はもっぱらクルージングしかしていませんが、どんどん景色の変わる方へ進んで行けるのがいいですね。

僕らは所謂"スケート・スラッシュ"や"スケート・パンク"みたいな音では全くないですが個人的なリスペクトとして、80sのハードコアによく見られるような写真メインのシンプルレイアウトでジャケットを作成しました。

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今回写真を撮っていただいたテップさんは、幅広くパンク/ハードコアのカッコいい写真を撮影しています。RangsteenやDaiei Spray等、今年新作をリリースされた数々のバンドの写真も担当しています。2020年2月には新代田FEVERで初の個展も開催しました。是非チェックして頂きたいです!

▼TEPPEI MIKI -Tokyo Gig Photography-
https://teppeimiki.com/

▽コロナ流行の影響でなかなか先が見通せない日々が続いています。人が集まるというごく自然な行動が難しい中ですが、音楽とどのようにつき合っていきたいですか?

タンゲ:
これからのことを楽しみに過ごしていきたいですね。
問題が落ち着いたら、みんな中学生並みの爆発力を持ったすごいライブをするだろうな~とか。あとは、大切な人や友人に連絡を取り、大好きな場所をできる限りサポートしたいと思ってます。

ミヤタケ:
ライブハウスやクラブをはじめとした周りの人たちが逼迫した状況に置かれていることには非常に辛いものがありますが、そういった場で遊べるようになるためには、自分に出来る範囲で出来ることをやるしかないかなと思います、月並みですが。

フジタ:
ライブを我慢しているだけで、付き合い方は変わらないですね。
これまでの日常と同じように音楽を聴いて楽しんでいます。
ただ、コロナ禍で考えさせられたのは、自分たちが無力だということです。
これまでお世話になった方々が困っている中、自分たちの影響力では大して力になれない、ということが悔しいと思いました。

▽最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします!

タンゲ:
PROM 1st ALBUM "IN THE MUDDY STREAM"はディスクユニオン、PROM OFFICIAL WEB STOREで販売しております!
是非とも宜しくお願い致します!

ミヤタケ:
センキュウ!

フジタ:
PROMを今後ともお願いします!

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▼Latest release info

PROM
1st ALBUM
IN THE MUDDY STREAM
¥1500(+fuckin tax)

1.これはなんだ
2.デイサイドフェイドマン
3.フライトレイト
4.職安通り
5.内戦前夜
6.濁流の中
7.手数料無料

▼各サブスクリプション配信


▼MV
PROM/濁流の中(Official Music Video)


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