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センセイとしての現場経験を元に、「ありそうでなかった」「でもニーズはある」サービスを見つけ、作り上げました。

センセイカプセル
代表兼オーナー 田中美香子さん

センセイカプセル代表兼オーナー 田中美香子さん

この記事で起業に役に立つトピック

  • 「教師」という自身のキャリアの中で得た「本当に欲しい」の感覚。ニッチなニーズをサービスにする

  • SNSを顧客とのコミュニケーションツールとして活用しながらビジネスに繋げていく

2022年11月19日(土)に、株式会社SEAFOLKS、新しい働き方コンソーシアム、スタジオ八百萬の共催により、これから起業を志す方、既に起業されている方へ向けて地域横断型の起業交流イベント『CONNECT.(コネクトドット)』(後援:山形県、総務省 東北総合通信局)が開催されました。

「もっと起業を自由に。」をスローガンに掲げた本イベントには、起業に興味がある学生や若い起業志望者が全国から多数参加し、『起業をする側』と『起業を支える側』の登壇ゲストから「実際に事業を立ち上げ成長させていく過程でのリアルな話」を直接聞くことができました。

今回、奈良県から『起業をする側』の立場で登壇されたセンセイカプセル代表兼オーナーの田中美香子さん。田中さんが起業をする上で大切にしていることや、ご自身のヒストリーをお聞きしました。

先生だから分かる困り事の解決でセンセイカプセルが誕生

まず、いきなりクイズですが、次の4つのうち小学校のセンセイがいちばんよく使う評価ハンコはどれだかわかりますか?
(評価ハンコ=ノートや宿題を提出したときに「よくできました」などのハンコをおすもの)

一見、「よくできました」をよく使うように思えるのですが、実は圧倒的に「見ました」をよく使います。

これは現場にずっといたからこそ本当に欲しいものや、現場でのニーズがわかるのではないかと思います。こういった商品を提供する「かゆいところに手が届く」ようなサービスを考えたことによって、センセイカプセルが始まりました。

今年の3月まで、実は小学校で働いており、20年間教師を務めておりました。そのあと起業をして現在に至るのですが、きっかけや、いつ起業を思いついたかというとかなり遡ります。

20代の後半くらいから漠然とビジネスへの憧れがありましたが、先生というお仕事がとても好きだったので、まずは先生としての経験を積んでから、それを活かす形でビジネスを始めても遅くはないのではないかと思い、昨年実行に移しました。

コンセプトの「先生×おしゃれ」は先生も生徒も嬉しいという実感から。

一般的に先生というものは、悪口みたいになってしまうのですが「ダサい」とか、「先生っておしゃれするの?」とか、検索ワードにもこういうものが出てきてしまう、おしゃれとはかけはなれたようなイメージがあります。

ですが、やはり子供たちというのはおしゃれな先生が大好きだし、おしゃれをしていることに対してもとてもプラスに捉えてくれて、それによりやる気が出たり「がんばろう」というモチベーションになったりしていた様子を見ていました。

先生×おしゃれとは、一見反対のようなかけ算なのですが、こうした効果からも、先生がおしゃれをするということは実はとても大事だと思うんです。実際に私も色々なところでおしゃれな服やグッズを探して使っていましたので、ニーズがあることはわかっていました。

そして、当時感じ取ったそのニーズや、教師としての経験を活かしてセンセイカプセルをしているのですが、ビジョンとしては「先生を再び聖職に。」ということを掲げています。

先生のお仕事はとても素敵なもので、必要なお仕事だと思うのですが、昨今その地位や扱いといったものが下がってきているように感じます。先生とは素晴らしいお仕事だというイメージをもっとつけていきたいと考えていて、そのお手伝いをする一環としてセンセイカプセルをつくりました。

ゆくゆくはそういった「人」や「情報」や「アイテム」が揃う先生のコミュニティみたいなものを作っていけたらと思っていて、センセイカプセルもそうしたビジョンを実現していることのひとつです。

大声で叱ったり、昔のように愛のムチという形で、悪い事をしたらたたかれるような教育ももちろんいけないことであり、許されない昨今です。

そんな中、生徒たちを何で惹きつけるのかということですが、もちろん大事なのは分かりやすい授業であったり、やさしさや一芸といったものなのですが、そういったものは構築するのに時間がかかってしまいます。

ですが、おしゃれの部分というのは、荒っぽい言い方をすると「てっとりばやい」ものであり、すぐに実行することができます。ですので、「おしゃれをしよう」という部分と、先生としての大事な「技術」の部分を補助的に補っていき、技術面などを構築していくまでの間に使ってもらうことで、最終的には相乗効果になるのではないかと思っています。

20年間教師を務め、今年が起業して1年目のスタートです。先生の世界というものは、絞り込んだニッチな世界ではありますが、小学校の先生だけでも全国で42万人いて、その方々に対してということであれば、ニッチだけど市場規模はとても広いのではないかと思いました。そして、子供の数は減っていくと言われていますが、ICTがすごく進んできていたり、英語を取り入れていたり、1学級が35人になることだったり、色々なところで先生に補助をつけるという事で、先生は減るどころかこれから増えていくのではと思っています。こうしたことからも、この業界は大きなニーズや可能性が秘められているのではと考えました。

起業までの具体的な軌跡と現在地

先ほどもお話しましたが、ビジネスへの憧れというものは20代からずっとあり、父親が定年退職してから会社を立ち上げたのでその背中を見て「かっこいいな」と思ったこともありました。ただ、私自身先生というお仕事も好きでしたので、それを一定期間なしとげた上で、ビジネスの方にもいこうかなという風に考えておりました。そして今年がその20年目ということである種の節目にあたるのではないかと私の中でストンと落ちるところがあったので、去年から1年間ほどかけて準備を進めてまいりました。

小学校で務めながら生駒の経営塾というところで専門的な知識や経営的な知識を学んだうえで事業をオープンさせていきました。そして、私のビジネスにおいてとても重要で、そのほとんどを占めている場所がSNSなのですが、主に今はInstagramで宣伝をしたり、自分の考えを示したりしています。一例ではありますが、SNSでおもいきり宣伝をするというよりは、今までの経験で得た情報を、今から先生になる方に対して示したり、ちょっとした交流を持つなど、コミュニケーションを取りながらビジネスに結びつけていくような手法をとっています。

アンケート機能でも、気軽に答えてくれたりしますので、そういうところも活かしながらやっております。こちらからお願いしなくても、色々な方が意見をくださったり、アイデアをくださるので、コミュニケーションを取りながらすすめています。他にも、今までの経験を活かしながら「悩み相談」にお答えするということも定期的にやっております。

センセイカプセルのサービスとしては、学校現場で何が欲しいかということを自分の経験上でも実感する場面が多々あったので、そういった経験を活かしつつ、学校現場にフィットするものを展開しています。特に、新任の先生などは、学校で「こういうものを使っていいのかな?」と判断が難しい場面があるかと思うので、そうした判断基準を売るというイメージで、現場を知る者が選んだものを提供する。そうすることで、判断にかかる時間を短縮することになります。「コーディネートを売る」という観点でも商品提供をしています。

たとえば、「見ました」のスタンプを沢山使うのであれば、見ましたのスタンプだけを沢山あつめてみるというアイデアや、よく使われている先生用の手帳カバーのデザインがとても渋いので、フィットするおしゃれなカバーを作ってみようとか、先生に特化したジャケットやスーツを作ってみようとか、そういうアイディアをもって色々な企業とのコラボをしながら進めています。

教え子が先生になってくれたのですが、その教え子が言うには、先生がおしゃれをしていたり自慢の先生であったりするとその先生の言う事を聞こうとか、がんばろうとか、そういう気持ちになるそうです。生徒からそのように思われる先生を全国で増やしていきたいという思いと、先ほど申し上げた通り「先生をもう一度聖職に」というビジョンを持って、教師の地位を少しでも上げていくことのお手伝いができたらなと思っております。

これからも色々な企業とコラボをしながら商品を作ったり、服装やマナーの本も出版したりするので、そういった形で少しずつ広げていけたら良いなと思っています。

「起業したいな」から「起業する!」覚悟を決めたタイミング

「起業したいな」と思ったのは20代の後半くらいからですが、覚悟を決めたタイミングというのはやはり教師として務めた20年の節目です。30代後半くらいからは、管理職になるのか、このまま担任業を続けるのかというような選択を迫られるタイミングがあり、そのあたりから、校長先生になるのか、それとも憧れていたビジネスの世界にいくのかということを考えることになりました。そこで、「やはり人生一回しかない」「あとでやっておけばよかったとはなりたくない」「このタイミングでやってみよう」という思いから、ビジネスの世界へ進むことを決めたのだと思います。

思い立ってからどのように準備を進めたか、具体的な手順や期間

まずはどういう風に進んでいこうかと考えたときに、ちょうどいいタイミングで主人が生駒市の広報誌を見ていて、生駒経営塾の募集を見つけてきてくれました。そのすごいタイミングで、具体的なことを教えてくださるそういう場所に出会えたということが本当にありがたく、あとはもうそこに乗っていって資金の話や経営の話などを聞きながら、自分がわからないところ、知らないところを本などで補ったりして進めていく事が出来たので、準備はし易かったです。

WEBサイトでは100アイテム以上を展開。商品のセレクトのこだわり

私が当時本当に欲しかったものや、私が実際に使っていたものは実感をもってお勧めができるので、「こういう場面でこういう風に使っていましたよ」という情報もブログなどで紹介しながらセレクトしています。あとは、季節ごとに学校は行事がありますので、その行事にあわせて準備を始める頃、たとえば運動会の練習を始める為のTシャツを新しく新調するのはいつぐらいなのかなども経験上わかっています。そのタイミングに合わせて出していったら買いやすいのかなど、すべて実体験を元にし、ペルソナも自分を設定しながら考えています。

仕入れ先とのコミュニケーションのコツは、コンセプトに共感を得ること

オープンする前なので、いきなり怪しい者が訪ねてきたという感じになるのですが、コンセプトをお話するとどの企業様もわかってくださって「それだったら」と言ってくださいました。たとえば「現役時代にこういった形で使っていたので仕入れさせて頂きたいです。」といったようなお話をもっていくと皆さま本当に快く受け入れてくださって、そこから仕入れが始まり、そこからさらにもう少しコラボして新しいものを作っていこうかというお話にもなったりします。品を探していくということも、ありがたいことに苦労はせず楽しく実施させていただいています。「ありそうでなかった」というのが私のコンセプトで、先生向けのグッズって売ってそうなのですがおしゃれに特化したものがあるかというとなかったんですね。そういう「ありそうでなかったけどニーズはありそう」というところで受け入れて下さったのかなと思います。

一番大変だったことと、継続するために大事にしていること

現在もそうなのですが自分のしたいことやこだわりが強すぎるところがあって、どこまで人に渡していいのか、自分一人ではどこまでやれるのかという配分がすごく大変だと思います。ただ、やはりサービスを拡大していくには、どこかは手放していかなくてはいけないと思いますし、自分の想いをしっかりと分かっていただける方に、協力を求めたいなとは思っています。そこが今一番悩んでいるところではあります。
一番優先するのはどこか、いちばん時間をかけていいところはどこかという優先順位は常に考えています。その優先順位を間違えると崩れてしまうかなと思っているので、ここはいつも意識しています。

起業してからの集客手段と地方での考え方

Instagramが中心で、これがないと成り立たないようなところがあるくらいに考えています。そこで宣伝や、想いや、商品に関する使い方なども載せていく事で、こちらの人柄を知ってもらい、商品を知ってもらい、口コミを広げてもらうような循環になっています。この時代でしかできない商売なのかなと思っております。沖縄の方もいらっしゃれば、北海道の十勝地方の方もいらっしゃるなど、全国から来て頂ける環境ですので、ありがたいことだなと思っています。

人間関係の構築のために意識していること

人間関係をうまくやっていくには、自分のブレないところはブレないんだけれども、相手にも理解を示したり、受け入れてから、自分の主張を伝えるか伝えないかを判断するようにしています。「ここで言う事がベストな選択なのか」「マイナスなのであればここでは控えてあとで個別に言った方が良いのか」ということは常に考えて判断しています。相手の立場を考えたり、思いやりが大切ですね。

センセイカプセル
代表兼オーナー 田中美香子様
20年の小学校教師経験後、現場感覚を活かして季節・行事に合わせた先生アイテムを販売するためにサイトを立ち上げる。デザインにこだわる田中さんが現役時代、若手先生に「それ、どこのですか?」と聞かれたものなど、自信を持っておすすめできるおしゃれアイテムを展開している。


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