ローリングストック食について

本業である農業や酒蔵の仕事の傍ら、農家が作るローリングストック食というものを開発・製造・販売しております。

要するに、災害用の備蓄食です。

災害用の備蓄食というと、缶詰やレトルトパウチで作られたものが主流で5~10年程度の長期保存が可能なものが多いです。

とはいえ、保存期間が長いというのもそれはそれで難点があって、「いざというときには必要になるかもしれないけど、普段はなんのやくにもたたないもの」は日常生活を送る上では正直邪魔になることもありますし、ついなおざりな扱いにしてしまいがちです。

5年10年放置していて気がついたら賞味期限が過ぎていたり(この手の商品は賞味期限を過ぎても品質に余り影響のないものも多いですが)、いざというときにどこにしまいこんだのかわからなくなってしまう、というケースも少なくはないでしょう。

保存食のローリンングストックという考え方は、別にぼくの専売特許というわけではなく、そこそこ知られている概念です。ただし、よほど防災意識の高い人でもなければ、日頃から自分が備蓄している食品の賞味期限など把握できないでしょうし、都度買い足していくのは面倒だと思います。

なので僕たち「島根の米農家」は、月々定額のサービスとして、毎月ことなる保存食が送られてくる保存食のサブスクサービスという選択肢を提案しています。検索してみると、この手のサービスにもやはり先駆者がいるようで、缶詰やレトルトなどの保存食が毎月届く、といったようなサブスクは多数存在します。

他にはない僕たちの強みとは「独自に製造した保存食」というところにあると思います。これは、裏を返すと「缶詰やレトルトを使えない分保存期間は短くなる」という弱点とも繋がりますが、ローリングストックのサブスクと組み合わせることで、この弱点は解決可能だと思います。

レトルトや缶詰は高温高圧で殺菌を行うので、どうしても食感や香りが犠牲になりやすい傾向にあります。僕たちは乾物を主体にしているので、比較的香りや食感が残った保存食を作ることが可能です。また、古来から農家に伝わる保存法である乾物や発酵食品を利用することで、生の食品にはない独特の旨味や風味を与えることもできます。

調理法が簡単で、野外でも手軽に作れるように設計していますので、例えばローリングストックで古いものを消費するときに、近所のキャンプ場でアウトドア調理を楽しんだりすることもできます。ただ賞味期限を管理するために機械的に消費するのではなく、月に一度の楽しみとして利用しつつ災害に備える手段として、僕たちのローリングストック食を利用していただけたら良いな、と考えています。

ローリングストック食を作る際の理念・・・・・・というと少し仰々しいですが、自分に課しているルールがいくつかあります。

まず、安心で安全であることはルール以前の問題としてあります。

食べておいしい、という事も言うまでもないでしょう。

その上で

①簡単に調理できる

②誰にでも食べやすい味にする

③おもしろく、楽しい食べ物

最低限、これらの条件をクリアしたものを商品として販売することにしています。いざ災害が起きたときには複雑な調理はやりにくいでしょうから、①は当然必要だと思います。基本的には、メスティンという飯盒と固形燃料だけを使い、米の吸水時間や炊飯時間を除けば、調理に要する時間は数分以内で作れるように設計しています。

②避難している最中に、苦手な食品が出た場合にはストレスになりますし、それが原因で十分に食事をとれないのは本末転倒です。なるべく「好きな人は好き」というとんがった味ではなく「嫌いな人が少ない」味になるように開発しております。しかし、どうしても人には好みがありますので、月に一度ローリングストック食が届いたとき、(一度に二食分届くので)一度味見しておくことをおすすめします。

③僕自身料理が趣味で、様々な国のいろんな料理を作ったり食べたりするのが好きです。なのでせっかくだから、多種多様でおもしろい食べ物を作れたら良いな、と思っています。これは、ある意味②の要素と反比例する点でもありますが、なるべくエッセンスを残しつつも、人を選ぶ部分を排除して作るつもりです。

11月号のキノコリゾットは、本来メスティン調理とは水と油の調理法であるリゾットを、どうにかメスティンで簡単に作れるように設計してみた意欲作です。

12月号の炊き込み炒飯は、それほどたいした工夫ではないですが、普通のレシピでは絶対にやらない手法を二つ導入していて、これによって驚くほどの完成度の炒飯になっています。開発に当たって他の方が作ったメスティンレシピを結構調べましたが、この方法を使っている人は誰もいないようでしたので、たぶん僕独自のテクニックになると思います。

1月号はおそらく洋風ちらし(バカリャウのライスサラダ)になると思いますが、野外で酢飯を炊く手法はおそらくあまり例のないレシピだと思われます。手軽な調理という基本は決して外さず、しかし米料理とメスティン調理の限界に挑戦した商品をこれからも開発していけたらな、と考えています。

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