小さな森の羊は何匹?
ちいさなもりがありました。
ちいさなもりには、ちいさなまじょがすんでいました。
まじょはうまれたときからまじょです。ちいさなもりでずっとしずかにくらしていました。
まじょはとてもながいきで、まほうでなんでもできました。
でも、ちいさなもりからでることだけはできませんでした。
まじょはひとりぼっちとともだちでした。うまれてから、いままでずっと。
ながいながいじかんをすごし、ちいさなまじょのちいさなからだが、さみしさでいっぱいになったころ、まじょはともだちがほしいとおもいました。
まじょはまほうであたりのいのちをしらべました。ちいさなもりのすこしちかくに、おだやかないのちがたくさんあるのをみつけました。
まじょはまほうでてがみをおくりました。
わたしはまじょです。ちいさなもりにすんでいます。ともだちがほしいです。
へんじのかわりにいのちがひとつやってきました。ともだちだ。まじょはひとりぼっちとおわかれして、やってきたいのちをていねいにもてなし、ともだちになりました。
ひとつてにいれると、まだまだほしくなりました。まじょは、まほうでてがみをおくりました。
ともだちをありがとうございました。もっとほしいです。
こんどはふたつのいのちがやってきました。まじょにともだちがふえました。
あるひ、ざんねんなことがおきました。ともだちのいのちがきえてしまったのです。
まじょはさみしさでいっぱいになりました。
きえてしまったいのちのぬけがらはいらないので、おうちのうらにすてました。
おわかれしたひとりぼっちがまじょをみています。
まじょはもう、ひとりぼっちとはなかよくしたいとおもいませんでした。だから、またてがみをおくりました。
まじょです。もっとともだちを。とぎれないように。
すぐにあたらしいいのちがやってきました。つぎのひも、そのまたつぎのひも。ずっと。
まじょはたくさんのともだちができました。
たくさんのともだちができたのに、ひとりぼっちはまじょからはなれませんでした。
まじょはひとりぼっちにのろいをかけました。にどとちいさなもりにあらわれないようにと。
それからまいにちともだちとすごしました。きせつが3かいちいさなもりをおいこしたころ、あたらしいいのちがやってこなくなりました。
ちいさなもりのともだちたちも、ひとつ、またひとついのちがきえていきました。
いのちのぬけがらのせのたかさがまじょのいえよりたかくなったころ、まじょはてがみをおくりました。
まじょです。ともだちをください。まだですか。
こんどはへんじも、いのちもやってきませんでした。
まじょはもういちどてがみをおくりました。
まじょです。ともだちを。はやく。なんでこないの。
てがみをだして、つきが7ついったりきたりしたころ、ちいさなもりにいのちがやってきました。
まじょはいのちをみつめました。いのちはいままでのともだちとちがっていました。
いろんないろがごちゃまぜで、くろくて、あかくて、あおくて、いのちはおこっていました。もうわたせるものはない、かえせ、といのちのそとがわがさけびました。
まじょはこわくなりました。そとがわがしゃべるなんてありえないからです。
まじょはまほうでてきをやっつけました。ちいさなもりは、しずかになりました。
それからつぎのひも、そのまたつぎのひも、それからもずっとまじょはてがみをおくりました。おへんじはきませんでした。
ちいさなもりのきがあかくおけしょうしたころ、まじょはさいごのぬけがらをすてました。
まじょはひとりぼっちをよびました。
でも、ひとりぼっちはきませんでした。
ひとりぼっちはまじょとあそんだりはできないけど、まじょとずっといっしょにいました。
まじょのことばにこたえることはできませんが、そのかわりにあたたかいやみでつつむことはできました。
ちいさなもりのちいさなまじょは、ほんとうにひとりぼっちになってしまいました。
まじょはそれからどうなったかはわかりません。ただ、たくさんのいのちのぬけがらが、かたかたとわらっているだけでした。
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