ウーラマ_banner

食事の出前を超え、あらゆる商品の即時配送。中国のOMO/ニューリテール革命を支えるデリバリーサービス。|餓了麼(ウーラマ)

【一言で言うと】アリババ・グループ傘下の出前・配送サービスで、ニューリテール/OMO店舗の欠かせない外部機能になりつつある。

基本情報

展開する国:中国
設立:2008年
加盟店数:約350万店
ジャンル:配送サービス

なにが特徴か

「餓了麼」は中国の出前サービスの草分けで、過去10年間、加盟店の料理を顧客に安く、速く届けることを目指し成長してきた。2018年4月、アリババ・グループの傘下に入り、同グループの唱えるOMO/ニューリテール戦略を支える配送サービスになっている。

1. 大学院生のアイデアが中国にもたらした新業態

今の中国ではレストランへ自分で行くよりも、出前(中国語で「外売(ワイマイ)」)アプリで頼んだ方が安くつく。自炊をするより安上がりになることも珍しくない。スマートフォンのGPS機能で顧客の居場所を探知して、瞬時に近くにあるレストランを推薦してくれる。

この外売業界で双璧とされるのがアリババ系の「餓了麼」と、それを追うテンセント系の「美団外売」(Meituan Waimai、メイタンワイマイ)である。「餓了麼」の配達員は青、「美団外売」の配達員は黄色の制服を着て、街中を電動バイクなどで走り回っている。

「餓了麼」が創業されたのは2008年。「餓了麼」を日本語に訳せば「お腹空いた?」になる。会社にこんな名前を付けるとは冗談のようだが、実際にその創業は冗談からだった。

中国のレストランでは一般的に、頼めば料理を「お持ち帰り」にしてくれる。美味しいものが食べたいと、近所のレストランへ買い出しに行く大学生は少なくなかった。上海交通大学の院生だった張旭豪(Zhang Xuhao、ジャン・スーハオ)がそこに着目し、友人数名と学生向けの買い出し代行サービスを提供したのが始まりだった。

中国では女性の労働参加率が世界平均より高いこともあり、単身者ばかりでなく一般家庭でも出前の需要が多かった。同時に事業が拡大していく上でのライバルが、2013年に王興(Wang Xing、ワン・シン)が創業した「美団外売」だった。

かつてはパソコンからだった注文は、現在では専用スマホアプリから行う。アプリを開いて配送してほしい場所を入力すると、近くの加盟しているレストランの名前が料理の写真と一緒に並ぶ。「グルメ」、「朝食」、「スーパー・コンビニ」、「フルーツ」などのカテゴリーからも選べる。配送は最短で30分、配送料は5元程度(約80円)と格安で、料理の値段もレストランへ行って食べるよりもかなりお得なことが多い。

2019年9月のデータでは「餓了麼」の外前業界でのシェアは第2位で27.4%(第1位は「美団外売」の65%)。「餓了麼」のユーザー総数は2.6億人(2017年)になるという。

画像1

小さな食堂でも「餓了麼」に加盟すれば売上アップの可能性がある/Photo by Nvdu on Unsplash

2. アリババ・グループに買収され、中国人の生活を変えていく「餓了麼」

激しく追い上げてきた「美団外売」は2015年、レストラン口コミサイト「大衆点評(Dazhong Dianping、ダージョンディエンピン)」を買収する。口コミサイトに出前注文の機能を追加してしまえば、顧客の選択肢は増えるし、外売を使ったことのない人の新規需要を掘り起こすことにもなる。「餓了麼」も、同じく口コミサイト「口碑(Koubei、コウベイ)」と提携して対抗するが、巻き返しができなかった中、2018年にこれまで「餓了麼」を援助してきたアリババ・グループが「餓了麼」を買収した。

続いてアリババ・グループは、「餓了麼」とすでに自らの傘下に入っていた口コミサイト「口碑(Koubei、コウベイ)」の合併を発表する。その後の新戦略で目を引くのは「餓了麼」+「口碑」(両者のブランドは維持しつつ、アリババの子会社が一括運営)が、スターバックスやバーガーキングなどの大手ファーストフードチェーンと組み、宅配を始めたことだろう。

また「餓了麼」が配送する商品が、次第に食品の枠を越えつつあることも注目に値する。今や事務用品から薬まで「出前」するのが当たり前。さらに「餓了麼」が、例えば新型スーパー「盒馬鮮生(Hema Fresh、フーマーシィェンション)」などのアリババ・グループが展開する各種事業において、顧客の元まで商品を届ける「ラストワンマイル」能力の強化に活用されていることも見逃せない。これまで「ラストワンマイル」をサードパーティーに頼ってきたアリババ・グループにとって「餓了麼」の実働部隊はニューリテールを支える重要な柱になっている。

配送方法に関して「餓了麼」はさまざまな新しい試みを行っている。その一つに上海で試験的に実施されているドローンによる配送がある。加盟しているレストランから配送拠点までドローンを飛ばし、渋滞等の影響による遅配をなくそうというものだ。本格的に実施されれば、人間の配送員が一日に走る距離は現在の15%ほどになるという。また配送員といってももはや人間とは限らない。2018年6月に上海で披露されたのが、配送ロボットの「万小餓(Wanxiao’e、ワンシャオウー)」。この種の配送ロボットは中国初で、すでに実施された試験配送は成功しているという。主にオフィスビルなどのロビーで待機し、配送員から料理を受け取ると自分でエレベーターに乗り込んで顧客宅までの配送を担当する予定だ。「餓了麼」のお届け物を持ってくるのが、みなロボットになる日も遠くないのかもしれない。


Banner Photo by Max Titov on Unsplash

関連ニュース

サービスを発明した「ウーラマ」は、後発の美団になぜ負けたのか?(上)∣中華IT新事情
http://tamakino.hatenablog.com/entry/2019/01/10/080000

サービスを発明した「ウーラマ」は、後発の美団になぜ負けたのか?(下)∣中華IT新事情
http://tamakino.hatenablog.com/entry/2019/01/11/080000

参考



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?