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社会科は暗記物か?

 「社会科は暗記物」という言い方をしばしば耳にしますが、本当にそうなのかと言いますと、はい、その通りなんです。
 記事「いかにして数学の問題を解くか?」で私は「解法パターンを憶える」ということを書きました。その意味では数学も暗記物と言えます。その点では社会科も数学も同じなのですが、両者には決定的な違いがあります。その違いを正しく知ることから、社会科の受験必勝法が見えてきます。
 その違いは何かというと「数学では、まず理解して、それから憶える」のに対して、「社会では、まず憶えて、次に理解する」というように順番が逆なのです。
 数学では、理解できなければ、解法パターンを憶えられません。だから、まず理解することが先決です。理解しないまま、いきなり公式を憶えても、必ず失敗するでしょう。
 一方、社会では、憶えなければ、理解できません。たくさん憶えることで、それらがつながって、理解できるようになるのです。だから、まず憶えることが先決です。興味が持てるようになるのも、憶えた後です。
 「理解してから憶える」というのは、社会科の勉強法としては間違っています。くれぐれも順番を間違えてはいけません 。

 短期間に効率よく憶えるには、一問一答式に勝るものはありません。たとえば、

問題:鼻が長くて、耳が大きくて、キバが長くて、パオーンと鳴いて、
   日本人がハンコ作るためにそのキバを欲しがるものだから
   ずいぶん減っちまった動物はなにか?
答え:ゾウ!

これを繰り返せばいいのです。繰り返すうちに「パオーン」まで憶えられます。これを、何も知らないまっさらの状態でやるのがミソです。その方がむしろ効果的です。
 ところで、先の問題文は、実はゾウの説明文なんですね。ゾウについて知っておくべき項目が簡潔にまとめられています。早押しクイズのノリでやるだけで、それを何度も読むことになります。そうしていつの間にかゾウについていろんなことを憶えて、ゾウのことがわかるようになるのです。
 次のような(板書風の)まとめ方とどちらが憶えやすいか、比べてみてください。

ゾウの特徴
① 鼻が長い
② 耳が大きい
③ キバが長い
④ パオーンと鳴く
⑤ …数が減った

 社会科では「記憶→理解」と進むしかないのです。先ほど述べたとおりです。この順番を間違えると、とても残念なことになります。実例をお見せしましょう。
 実例は授業です。大抵の場合、生徒がまだ覚えていない段階で授業が行われます。まだ憶えていない生徒が相手ですから、授業では多くの時間を「憶えるべき事項の整理」に当てます。でも、生徒たちにとってはまだ憶えていないのだから、わからないし、おもしろくもない。エピソードを話されても、歴史のロマンを語られても、まだ憶えていない人にとってはますます眠くなるのは必然でしょう。
 そして授業が全部終わった後で、試験が行われます。この時点で生徒たちは初めて憶えるんですね。その際、何を憶えるかというと、授業の板書を写したノートです。友達のノートのコピーであることもしばしばです。
 この流れでは授業が全く無駄になってしまいます。憶えるためには一問一答式で十分で、むしろその方が効率的かつ効果的ですから。しかも、憶えたことを理解につなげるチャンスも無くなるのです。
 ではどうすればいいかというと、記憶と理解を正しい順番に並べればいいだけのことです。具体的には、授業と試験の順番を変えればいいのです。
 正しい順番でやると、次のような流れになります。
 学期の初めに、まず試験を行います。そうすれば生徒たちは頑張って憶えます。学期の初めにやるわけだから、まだ授業で扱っていない範囲ですが、一向にかまいません。生徒たちがやることは一緒ですから。なお、試験範囲は「一問一答式問題集の○ページから〇ページまで」とするのが生徒にとっても教員にとっても一番よいでしょう。
 そして試験が終わった後で授業を行います。憶えた後に縦のつながりや横のつながり、あるいは背景を聞けば、生徒たちはよく理解できるでしょう。説明の間にはさむエピソードやちょっとしたネタ話を楽しむこともできるでしょうし、自分の意見や見方を持つこともあるでしょう。こうして授業が俄然おもしろくなります。
 社会科の学習法は「まず記憶→続いて理解」、これしかないのです。だから学校では「初めに試験→続いて授業」、こうするべきなのです。

 ところで、これではまだ社会科の受験必勝法にはなっていません。まだ、学校の授業の流れがうまくないことを確認したに過ぎません。本当は憶えた後に授業を受けられれば良かったのですが、間もなく受験を迎えるタイミングで、授業が無駄だったことを嘆いても始まらないわけです。「では、どうすればいいか?」を考えるのが、次の課題です。
 授業に代わるものを探し出すしかありません。授業に代わるもの、それはズバリ「過去問」です。
 でも、勘違いしないでください。自分の実力を知るとか、志望校の出題の傾向を知るとか、そういうことが目的なのではありません。授業の代わりとして、過去問を利用するということです。つまり、過去問を解くんじゃありません。
 一問一答式で憶えたことを関連付けたり、背景を知ったりするために、過去問の「地の文」を読むのです。良質な過去問の地の文は、論点が明確で、論点にそって重要事項がコンパクトにまとめられています。それを「読む」のです。
 出題者は、高校生よりはるかに多くの知見がある中で、(しばしば出題者の専門分野から)文化なら文化に、あるいは経済なら経済に焦点を当てて、高校生が答えられるように誘導しながら、受験生が知っておくべき事項を散りばめながら、問題文を作ります。出題者に文才があれば、こうして地の文は素晴らしい解説文になるわけです。
 でも、受験生が過去問を読むためには1つだけ条件があります。それは、先に一問一答式で憶えておくことです。
 憶えていないと、過去問は読めません。ただ難しい問題に、ただマニアックな問題に見えてしまいます。そして、眠くなる。社会科の授業が眠くなるのと同じ原理です。くれぐれも、まずは一問一答式をやることです。

 では、まとめましょう。社会科の受験必勝法は、

○ いきなり一問一答式をやる。
  何も知らないまっさらの状態で始め、何回も繰り返す。
○ 授業はうまくやり過ごす。
  (正しい順番でなされる授業についてはこの限りでない)
○ 憶えた後で、良質な過去問の地の文を読む。
  (これをコレクションしていけば論述問題にも対応できる)

 いや、学校で授業と試験の順番を変えてくれれば、本当はそれが一番いいんですが。

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