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失敗した集合写真

現在、多くの現場ではマスクを着用しています。

屋外の現場も多いので、熱中症対策や酸欠にならないようスタッフの体調管理にも気を配りながら営業を行っています。マスクをつけていても楽しい雰囲気を作れるように笑顔・笑声でのサービスを心がけています。マスクでも伝わる笑顔をお届けします。

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それでは、本日も全国各地のアミーゴと育む、想い出にまつわるインサイドストーリーをご紹介していきたいと思います。

* * *

今から20年以上前、石川県加賀市にある温泉街での話です

昔は旅行といえば団体旅行でした。アミーゴたちの仕事もほとんどが団体様の写真撮影。団体撮影で売上を保っていました。

しかしちょうどその頃、世の中の旅行形態は団体旅行から個人旅行へと変化していきました。団体のお客様が、年々減少していったのです。比例して売上も下降線をたどっていきました。

そんな状況にひしひしと危機感を抱いていた女性アミーゴが、今回の主役です。当時彼女は北陸支社で事務員として働いていました。

刻々と変わっていく情勢の変化に「事務員の仕事だけしていてはダメだ!」と思い立ち、現場での仕事もしたいと上司にお願いをしました。

もともと根性とやる気だけは人一倍ありましたので、事務の仕事から屋外を駆け回るカメラマンになることには少しも抵抗がありませんでした。

事務員 兼 カメラマン。普段のアミーゴは事務仕事をしていたので、撮影依頼があると事務員の格好のままよく撮影に行っていました。ハイヒールにスカート姿のカメラマンが珍しかったのか、会社団体からたくさんの撮影依頼をいただくことが出来ました(笑)

しかしその頃の彼女は、事務員としてはベテランですがカメラマンとしては新米でした。まだまだ未熟で、とんでもない失敗もありました。

それは35名程の会社団体を撮影した時のこと。ある絶景の撮影ポイントでのお話です。

この撮影場所はキレイな写真が撮れることで人気のポイントでしたが、ひとつ問題がありました。それはカメラマンの立つ位置が、車の往来する道路だということです。

まずお客様には絶景を背にしてもらい、アルミ製の撮影台に並んでいただきます。カメラマンはお客様からある程度距離を取ってカメラを構える必要がありますが、なんとそこには道路が通っているのです。お客様を写真に収めるには、カメラマンは少し道路にはみ出て撮影する必要がありました。さらに絶景をキレイに写真に入れるため、脚立を使って高い位置から撮影しなくてはなりませんでした。

つまりカメラマンは道路に脚立を設置して、そこにのぼって撮影しなくてはならないのです。昔は撮影中なら車もストップしてくれたのです(笑)今では考えられない話です……。(撮影マナーは守りましょう)

アミーゴも挑戦します。

車の往来を気にしながら脚立に乗って、一瞬のうちに撮影しなければなりません。難しい撮影です。

お客様は社員旅行でお酒も入り上機嫌。撮影に時間をとらせてお客様の活気が冷めてしまわないように、より時間をかけずに撮影しようとアミーゴは考えていました。

当時は、団体集合写真が綺麗に撮影できるようなデジタルカメラは、まだまだ普及していない時代です。歴代の上司が、何千カットと撮ったであろう年季の入った広角レンズをつけた6×9カメラで、撮影を行いました。

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さすがに年季の入ったカメラ、アミーゴがレンズをのぞくとファインダー内の表示線は消えかかっていました。それに夕方の撮影で薄暗さもあります。アミーゴは若干の不安を抱えながら、それでもしっかり手動でピントをあわせて…

パシャッ!

撮影は無事に終わったかに思えました。

しかし会社に戻り、カメラからフイルムを取り出し現像したとき、アミーゴは愕然としました。

二列目の男性のお客様の、左肩から先が切れてしまっていたのです。しかも右手には楽しそうに日本酒の酒瓶を抱えてらっしゃる!


完全な失敗写真です。


翌朝アミーゴは上司に同行してもらい、団体の幹事様の元へ謝罪に行きました。出発前の旅館のロビーで、旅行会社の添乗員と幹事様に私が撮影した写真を見ていただいて、撮影の失敗を平謝りしました。

そして次の立ち寄り場所で、もう一度撮り直しさせていただくことになりました。

お客様の協力もあり、次の場所では何事もなく撮影を終えることが出来ました。

アミーゴがホッと胸を撫でおろしていると、幹事様や他のお客様から「旅館前で撮影した写真も販売して欲しい」とリクエストがありました。

旅館前で撮影した写真とは、昨日失敗した写真のことです。アミーゴは上司の許可をとってから、失敗した写真と撮り直した写真、2種類の写真販売を始めました。

すると、なぜか失敗写真の方が次々と売れるのです。

お客様から「お姉さんが頑張って撮ってくれたこの写真の方が、みんながいい顔で写っているから…」とありがたいお言葉まで頂戴し、お酒を嬉しそうに抱えたお客様までその写真を購入してくれたのです。

その時の恥ずかしさや申し訳なさを、アミーゴは今でも忘れることができません。未熟なアミーゴの撮影でも記念にしていただけたこと、感謝の気持ちでいっぱいでした。今でも忘れることができない、そんなエピソードでした。

写真撮影は絶対に失敗は許されませんが、失敗から学ぶことは数知れません。このような失敗を経験し、たくさんの努力を積み重ね、彼女は今では写真館のマネージャーになっています。