2024/09/24

aikoを聞かずに生きてきたが、もういよいよ俺の腕が回る範囲の音楽というものを消費しきってしまった気がするので他人が良く聴いているということでお馴染みのaikoを聞いてみることにした。
まず、aikoの俺のイメージとしてテトラポッド登って私はカブトムシなどのいわゆる恋愛のトロの部分(付き合って3か月目までくらい)を歌っている歌手、というのがある。恋愛って楽しいよね、恋人って愛おしいよね、という感覚を4分半くらいの歌に詰めに詰めてまるで耳から摂取する生クリーム、生クリームというと濃すぎる気がするからどちらかというと耳から摂取するネクターのような歌をたくさん歌っているのだろうという予想がある。
しかし、いざ聞いてみると確かに恋愛の絶頂期を歌っている歌もあるが、どちらかというと悲恋、恋の痛みを歌っていることが多くてまずびつくり。メロディが良いのでスッと聞けるが歌詞に注目すると恐ろしい言葉が並んでいることに気づく。例えば、

なんだよあんなに好きだったのに
一緒にいる時髪の毛とか凄い気にしてたのに恋が終わった
破裂した音が鳴っている 今あたしの薄ら汚れた空に吸われていくの
恋が終わった

「青空」aiko

この歌はポップなメロディと歌詞の悲痛さのギャップがすごい。他にはこの歌の中で失恋の涙の事を「目の奥まで苦い」などと表現している。目の奥まで苦い?分かんないけど分かる表現だ。
俺は恋愛を解さないので恋に関する歌を聴いても共感するところがあまりないことで有名だが、この歌は、というかaikoの歌詞全般は情景描写が上手い故に俺のような人間でも歌詞が伝えようとしている悲しみを理解できてしまう。理解させられてしまう、と言った方がいいか。恋愛によって俺の身体がもがれたことなどないのに、まるでもがれたことがあるかのような幻肢痛を想像させてしまうのがaikoの凄いところだと感じる。これが本当に自分の恋愛と重なることをaikoに歌われたと思うと…そのシンクロ度は∞に到達し無限に最も近い数字シンクロ度0%と表示させるほどだろう。aikoの歌詞と"重なった"人間へのインパクトは地球の地軸を傾かせ日本を常夏状態にするほどの衝撃となり、海は赤く染まり生命は枯渇、リリンは原罪との戦いを余儀なくされる。

何が恐ろしいってaikoは長いこと活動しているから、恋愛曲の彩りが半端じゃないので恋愛にまつわるすべての状況を歌にしていると言っても過言ではない。恋愛絶頂期、恋愛が落ち着いたしっとり期、片想い、失恋、未練、どうしても忘れられないなど。人間が恋を知らず老衰することは死を免れるより不可能とされている中でここまで恋を網羅されるとどこかでaikoの弾丸を受けることになる。スラグ弾のリーサル型のように広範囲に弾をバラまく殺傷力の高い弾丸となったaikoはもはやジビエを目的とする狩猟のための弾丸としては使用出来ない。aikoは熊などの大型の獣を確実に仕留める際に使用されるようになる。ライフルのような貫通力を秘めながらショットガンのような破壊力をもった存在、それがaikoとなっているかのような印象を俺は受けたのだった。

ちょろっと聴きかじっただけでaikoの歌詞による幻肢痛を余儀なくされてしまった。これは一度好きになった人はもはや手遅れ。aikoにより脳漿を炸裂させられ、体の感覚をすべて失ったままaikoを聴くために耳にはイヤホンをはめられているだけの存在になっているのだろう。
恐ろしい。恐ろしいが、俺も恋愛を解するためにaikoに再度挑んでもいいかもしれないと思い始めている。命のやりとりほど面白いものはない。
皆さんの好きなaikoの曲あったら教えてください。

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