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20人の「40歳」との対話 Part4(13人目~16人目)

撮影:荒牧耕司

こんにちは。大宮冬洋(43歳)です。
40歳のときに「同期」たちと語り合った記録の第4弾。いずれも僕が社会に出てから知り合った人たちです。
16人目の原田さんは僕の読者(お客さん)なので、いい意味でちょっと心理的な距離があります。プライベートで会うことはありません。
でも、在賀さん、洪さん、相原さんとは、良くも悪くも公私混同な関係性です。
彼らとも最初は単なる知り合いでした。
でも、仕事なのか遊びなのかよくわからない企画(この対話もその一つ)にお互いを巻き込んでいるうちに、あまり成果が出なくても「一緒にいるだけで楽しいから、まあいいよね」で済ませる仲になりました。
甘いと言えば甘いけれど、社会人になっても友だちができた証です。僕にとって、それは幸せを意味します。
少し時間が空いてしまっても、顔を合わせればだらしない笑顔になって飲み交わせるような人たち。
これからも一緒に年齢を重ねていきたいな、と思っています。

13人目 在賀さんの話

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「まだ40年もあるのか。これからも飽きずに楽しく暮らせるかな」

 こないだ髪を切りに行ったとき、「白髪が2本あるよ」と美容師のおばちゃんから指摘されました。いま41歳。歳をとったな、と思った瞬間です。40歳になるときは「あー、自分も40歳だな」と思ったぐらいでした。特に感慨はなく、淡々と40歳になりました。
 でも、男性の平均寿命を改めて考えるとようやく人生の折り返し点ですよね。「まだあと40年もあるのか。これからも飽きずに楽しく暮らせるかな」が正直な感想です。僕たち農家は定年がないので、健康でありさえすれば80歳になっても仕事を続けられます。異動や転勤、定年があるサラリーマンのように節目がないのです。うちは子どもがいないので子どもの進学などの節目もありません。
 32歳のときに脱サラし、東京から長野に移住しました。直販の農家を始めて8年目になります。200件ほどのお客さんの数を増やす必要はないし、朝は平均すると7時すぎの起床です。農家としてはすごく遅めですね。夜はワインを飲んでぐっすり寝ているし、毎年2月から3月にかけての1か月間は完全にオフにしています。今年は夫婦でイタリアに25日間滞在しました。来年は沖縄で過ごすつもりです。妻との共通の趣味はおいしいものを食べること。自宅でワイン会を開くこともあります。
 こんな生活をしていると、周囲からは「良い暮らしをしているね」とよく言われます。確かに住環境は気に入っているけれど、同じことの繰り返しでは退屈しますよ。僕は24歳で大学を卒業し、人材系ベンチャー企業に2年半、ITコンサルティングの会社に5年ほどいました。刺激の多いはずのコンサルティングの仕事も3年ぐらいで飽きてしまったのに、農業にもやがて飽きるかもしれないとはなぜか考えなかった。いまでも謎です。
 農業は、とことん突き詰めて没頭できる人に向いている仕事だと思います。トウモロコシ一筋20年の人が、「人生であと30回ぐらいしかトウモロコシを作れない」とさらに研究意欲を燃やしたりする世界です。僕はそういう没頭タイプじゃないんですね。
 ただし、僕たち夫婦の農業では、「おいしいトウモロコシ作り」は仕事の一要素に過ぎません。1人ひとりのお客さんが満足してくれることを最大の目的としているので、年間60品種ほど育てている野菜をどんな組み合わせで入れて届けるのか、同封する手紙に何を書くのか、なども大事にしています。そのために創意工夫するのは楽しい仕事です。毎年新しい野菜を2、3種類は栽培したり、既存の野菜の育て方を少し変えてみたり。今でも試行錯誤はしています。

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