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その桜を見せてくれたのはフライドポテトだった。

天気予報では、明日は嵐が来るらしい。

それは毎年のことで
桜が満開になると嵐が来るのは1セットになっている。

どうしても今じゃなきゃダメなの?
もう少し訪問時期に気遣って欲しいものだけど…

それぞれに事情があるのも、わかる。

気圧には気圧の仕事があるのだ。


東京の満開の桜は今日がラストチャンスだとテレビから聞こえてくる。

限定とか、ラスト1個とか、そう言われるとつい買ってしまうスイーツのように

ラストチャンスの桜にも是非手を伸ばしたくなる。

都知事が、「今年はお花見はナシで」なんて言っていたけれど
無言で桜を鑑賞するくらいなら許されるはず。

花見がダメと言うのは少し違って
宴会で密になるのはダメなんだと思う。


ということでわたしたちは、この前洗車してイケメンになった車に乗り込み

きれいに咲いている桜を逮捕しちゃうぞと、
張り切って東京さくらパトロールに出かける。

穴場はないかと探したけれど

緊急事態宣言明けの東京は、まるでコロナ以前のようだった。

適当に車を走らせると、色々なところに桜が咲いている。
とても綺麗だった。

もっと桜の近くに行きたかったけど車の中からでも十分楽しむことが出来た。


そうは言っても、結局は花より団子。

どんなにきれいな景色を見ていても
おやつの時間にはきっちりとお腹が空く。

わたしがお花見を楽しむ間、内臓はしっかりと仕事をしている。

「なんか食べたいんだよな。」
そう言うわたしに珍しく夫は

「おれ、今日ポテト食べたいんよな」と。

ポテトなんてわたしの大好物中の大好物じゃない!

マックなら、今クーポンでLサイズが190円。
でも、今日だけは特別。

せっかくのお花見。
少し贅沢に、好きなポテト専門店にナビを設定する。

現在地から車で17分。

ナビは、今まで通ったことのない道を案内してくれた。

そして右折をした時。

わたしたちは、歓声をあげることになる。

長く続くさくら並木ゾーンに入った。

東京にもこんなにも素晴らしい場所があったんだ。

赤信号で止まった時には奇跡のような風が吹き
ドラマのワンシーンのように桜吹雪が舞う。

ラジオからは流れるのは

グリーンディのグッドリダンスから

アレサフランクリンのナチュラルウーマンへ

わたしは初めて聞いた曲だったけど
とても心地よく

ただポテトが食べたかったわたしたちの偶然のような必然が
こんな素晴らしい景色のところまで連れてきてくれた。

食べたいものがポテトではなかったら、もしかしたら一生知らない場所だったかもしれない。

注文したポテトをテイクアウトし、同じ道を今度は逆に走る。

揚げたてのポテトをバジルマヨにディップして、はふはふ言いながら交互に食べた。

このポテトの味と、ラジオからは流れた音楽は

2021年のわたしたちの桜の思い出に深く刻まれた。

来年の桜の季節にはどんなことをここに記すだろう。

まだまだ終わりそうにないウィルスとの戦いだけれど

今日のポテトのことを思い出して、ふたりで笑っていれたら

それだけでシアワセだと思う。

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