天才と諸刃の剣

野球が好きである。

私の人生は野球と共にある。分かちがたく深く結びついている。10代は野球小僧、20代は社会人野球。そしていまも悩みがあるとき、無心になりたいときなどバッティングセンターに行くか、公園で壁当てするかしている。

贔屓、好みは人それぞれあるだろうが私の不動の推しは野村克也とイチローだ。両氏にいえることだけど話を聞いていると、きっとなにをやっても大成功者になったのだろうと他人に納得させる何かがある。

もともと、いかにも秀才的な聡明さがある人達ではあるが、とくに野村氏の本には随分お世話になった。自己啓発の類いは殆ど読まないが野村さんだけは、別。

その著作で披瀝される野球観、考え方を聞くにつけ、まるで孫子のようだなと感嘆する。思考に無駄がない。二流三流どころの選手のようにあれこれゴチャゴチャモジャモジャと理屈をいわない。

つねに一つのことに集中している。そしてその裏の要素ともいうべきものも認めねばならない。つまり表には出ない「烈しさ」も尋常ではないはずだ。邪魔者には容赦しなかったはずである。なにひとつ証拠を残さない形で一人一人葬ってきたのだろうと思う。

イチローが毎日カレーや牛タンばかりを食べる、というあれも単なるゲン担ぎではない。とどのつまり「排除」(成功の秘訣としての実践)の一環なのだろう。兎や角、要らないものに対しては無慈悲で容赦しないのは天才の共通した一傾向だろうか。

天才は些事にはわきめもふらず一つの事を極める。

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