6-7.「わかった。んじゃ、俺たちは撤収の準備だ」

「わかった。んじゃ、俺たちは撤収の準備だ。重要そうな本やノートを残して片付けるぞ」

 俺は、トシからメモ帳とシャープペンシルを返してもらうと、部屋の片隅の壁にもたれて座り込んだ。

 シャープペンシルを回しながら、メモとスマホを交互にながめる。

 ヒントが『僕に関係ある日時がパスコード』だなんて、ユウシにしてはセキュリティが甘いというか、わかりやすいヒントを残したものだ。これじゃあ、パスコードは、ここにあると言っているのと変わりない。

 ただ、総当たりで調べることはできないというだけで―

 ちがう。総当たりで調べる必要なんてないんじゃないか。俺たちが見つけたいのは、四ケタのパスコードだ。単純に考えれば、五ケタの数字は入力しようがない。でも、最初の4以外は、すべて五ケタの数字になっている。つまり、その五ケタの数字を四ケタに変換できるものがパスコードになる。

「みんな、聞いてくれ。この五ケタの数字の中から、四ケタの数字を探したい」

「なに言ってんだ、おまえ? 五ケタの数字は五ケタのままだろうが、バカじゃねぇのか」

 ヒロムには伝わらなかったみたいだけど、トシが「おお」という顔をした。

「つまり、先頭にゼロが入っている数字だけを抜き出して、四ケタにみなすということなのだな」

 ジュンペーが、あわてて自分のスマホを見て、いち、に、さん、し……と数え始める。

「数字は全部で一七列あるのです。ひとり三列ちょっと調べれば、すぐ終わりそうなのです」

 全員が自分のスマホを手に取った。数列の上から、俺、ジュンペー、トシ、ヒロムに担当を振り分ける。そうしておいて、まずは機械のように、全員でひたすら数字を抜き出してみた。

 09737 02744 01171 00486 00182 01031 04747 08408 05471 00500 01463 02984

 01562 03234 07760 01049 07351 00476 03044 09179 00470 04321 01035 08744

 08805

 残った数字は二五個。まだ、総当たりするには多すぎるけど、これでユウシに関係ある日時を見つけやすくはなった。俺は数字全体をながめながらシャープペンシルを回す。

「ジュンペー、ユウシの卒業文集に書いてあったイベントで、この数字に関係ありそうなものは?」

「ちょっと待ってくださいです」ジュンペーが手に持っていた卒業文集をめくる。

「えっと、まずお宮参りが九月七日の午後三時七分です。小学校の修学旅行が一〇月三一日から。小学校の入学式が四月七日。このふたつには時刻が書いてないです。幼稚園の卒園式が三月二日の午後三時四分。初めて勝った運動会が一〇月四日の午前九時。誕生日が八月七日の午前四時四分なのです」

「数字に置き換えると、09737、01031、04747、03234、01049、08744になるのだよ。パスコードの残り入力回数と、ぴったり同じとはツイているのだよ」

 自分のノートPCに数字を打ち込みながらトシが笑った。本当に、そうだろうか?

「四月七日に関係ありそうな数字は、04747だけではないのです。00476も、00470も見方を変えれば、四月七日を示した数字とも言えるのです」

「それだけじゃねえ。文集に書いてあるのは、あくまでも小学校卒業までのイベントだ。ユウシが設定したパスコードが、中学校から高校までのイベントに関係してたら、どうする?」

 ヒロムが言った。ユウシの部屋に入ってから、もう二〇分が過ぎていた。

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