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檸檬を巡る或る酒飲みの回想、如何にして彼は理想の世界を手に入れたか

世の中を二分する話題というものは、右派政権か左派野党のどちらを支持するか、なんてお堅いものから、マッシュルーム型のチョコ菓子がいいか、はたまたバンブースプラウト型がいいかなんぞという、俺みたいな酒飲みからしたらどうでもいいお茶受け話まで、まあ事欠かないものだ。
そんな中にも、酒飲みどもが永遠にモメ続ける、くだらなくも重要な論題がある。「ツマミの唐揚げに、レモンをかけるか、かけないか」だ。徹頭徹尾、ニッコー・ドライの生ビールさえ飲んでりゃ満足な俺からしたら、大皿の唐揚げに、勝手にレモンなんざかけられちゃ迷惑なんだよ。
だがな、これは忠告だ。いくら酒に飲まれても、「レモンくせえ手をした莫迦野郎は、俺がぶっ殺してやる!」なんて盛り上がらない方がいい。
これは強要罪なるもので刑務所にブチ込まれた俺が、捜査段階で受けた取調べやら、法廷での尋問のやり取りやらを、自戒を込めてまとめた、ある刑事裁判の記録だ。【続く】

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