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Product Story-100のサンプルと音響工学を駆使して生まれたオリーブスマートイヤー

「聞こえ」の社会課題に“聴覚サポートイヤホン”で正面から挑む

今、WHOが警鐘を鳴らす問題のひとつが「聞こえ」に課題のある難聴者の増加です。その数は、世界で約4.6億人。2030年にはその倍の9億人を超えるともいわれる世界規模の社会課題です。通勤・通学、部屋でくつろぐひととき、大好きな音楽を聴いていたい。いつでもどこでも手軽に音楽を楽しめるようになった一方、スマートフォンなどで大音量を聴くことによって、世界の12歳から35歳までの若者のうち、ほぼ半数にあたるおよそ11億人が、長時間、大きな音に過剰にさらされ、難聴になるおそれがあることを国連が警告をしています。

今回は、すでに社会課題して顕在化されつつある「聞こえ」の問題に、早期に関心を傾けていた、Owen Song(オーウェン・ソン)が、オリーブスマートイヤーの開発に至ったストーリーをご紹介します。

家族の「聞こえ」の課題が全てのはじまり

わたしは、1987年に韓国のソウルで生まれました。幼い頃から未来を描いた日本のメカ系アニメに夢中になり、アニメから着想を得ては、放課後に発明クラブの活動に熱中していました。その後、プロダクトデザインの道に確信を持つことになったのが、2008年大学2年在学時のことです。世界で最も多くのスマートフォンを製造しているサムスン直下のSAMUSNG ART&DESIGN INSTITUTE(サムスン アート&デザイン インスティテュート)でプロダクトデザインを学んでいた当時、私が手掛けた、日常生活での鍵の締め忘れを防止するプロダクトが、世界三大デザインアワードのひとつ『Red Dot Design Award』で『Best of Best』を受賞したのです。

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2008年世界三大アワード「Red Dot Design Award」で「Best of Best」を受賞した「鍵」のプロダクト(上)受賞を喜ぶOwen Song(下・中央)

すぐさまサムスンからプロダクトデザインのポジションオファーがあり、大学在学中にプロジェクト参画、その後、コロンビア大学院の建築科に進学、アメリカで都市計画を学び広義に設計を学んでいました。しかし、大学院での学びはプロダクトデザインに携わっていた私にとって、リアリティを感じられないものでした。

そんなある日、叔父の家を訪れた時のことです。ごみ箱に補聴器が捨てられていたのを見つけたのです。当時、叔父は難聴を患っており、家族は高単価な補聴器を購入したそうですが、本人はその使い心地の悪さ、違和感を感じるデザインなどを理由に、わずか1週間で使用を止めたということでした。

早速補聴器を分解したところ、高単価な製品とは信じられ難い部品が使用されていることが分かり、改修の余地は無限にあることが分かりました。

メガネをかけるように、自然に聴覚サポートになる製品を作ることはできないか」とひとつのアイデアが浮かびました。
これがきっかけとなり、プロダクトデザインこそ「聞こえ」の課題解決が実現できると確信をしたのです。しかし、その当時の私が着想した「デザイン機軸」の製品開発は、誰しもが実現不可能だと話していました。

米国クラウドファンディング予約販売から1億円の資金調達・異例のスピードで可能にしたプラットフォーム思考

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補聴器は、そもそも開発から販売のすべてを一貫して手掛けている企業はありません。製品化のプロセスでは製品部品の大半を既製品に頼るため、コストが膨れ上がり、その性能も開発側の観点では大差がないにも拘わらず不当な価格が定まっているようでした。また補聴器は、他人から見えないように耳穴に入れる、また肌色にするといった「隠す」デザインが主流でした。これら複数の要因により「聞こえ」に関連する市場、イメージのすべてを閉鎖的な印象を受けました。

「従来の補聴器の概念を覆す製品をつくる」このコンセプトに則り、まず開発を始めたのがソフトウェアの開発です。Bluetooth機能を搭載した聴覚サポートデバイスに、ユーザー自らが「聞こえ」の調整が出来るイコライジング機能を搭載しました。なかでも苦心したのはハウリングと言われるノイズを考慮し、音響工学とデザイン設計で補聴機能とサウンドを楽しむことが出来る製品を開発しました。このプロセスでは100以上ものハードサンプルを用い、電気、振動、無線周波数、ビーム形成などによる音漏れを、形状の最適化を設計により改善することに成功しました。2016年にアメリカのクラウドファンディング「Indigogo/インディゴーゴ」で予約受付をはじめ、開始1か月で約1億円の資金調達を達成することになりました。2016年3月に一人で始めた事業開発からわずか半年のことでした。
これまでの補聴器開発のプロセスでは、数年かかったと思いますが、我々は不可能といわれるデザイン設計プロセスを考案して、半年以内に製品化にこぎつけることに成功したのです。

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難聴は恥ずかしいことなのか?「聞こえ」領域のテスラを目指すOlive Unionが作り出す未来

補聴器の着用は恥ずかしいことなのでしょうか。個人差はありますが、人の聴力は30代から機能が徐々に低下していくといわれています。特に、イヤホンや動画コンテンツが普及した現代においては、「難聴」はもはや誰にとっても身近なものになりつつあります。また聴覚が低下することで日常生活への支障に関しては、以下のような声が上がっています。

1位「人とのコミュニケーションが苦手になる」
2位「外出する際に交通事故の危険を察知できない」
3位「社内やクライアントとのコミュニケーションが難しくなり仕事や昇進に支障をきたす」

そのほか、ゴルフやドライブ、落語や動画視聴(映画、テレビ、Youtube等)など余暇の楽しみにも影響があるという声もありました。(2020年12月自社独自アンケート調査による)

 「人は目が不自由な場合は眼鏡をかけ、耳が不自由なら補聴器を着用する」その時代はすぐそこまで来ています。わたしたち、OliveUnionは耳の領域における研究開発とプロダクトデザインから
メガネはファッション性に富み、身に着ける楽しみがあるように、聴覚サポートイヤホンもその多様性が「では、なぜ補聴器はファッショナブルでないのか?」私の開発点のすべてが「補聴器着用を恥ずかしく感じさせない、格好良くしよう」にあります。まさにデザインが社会課題を抜本的に解決すると信じているのです。

「聞こえ」の課題と密接に影響する心理的バリアを補聴器とは異なるアプローチで挑んだ「聴覚サポートイヤホン」は、スマートフォンを利用し、わずか5分で自分の聞こえや、音の好みに合わせた「音の最適化」が可能となりました。「デザイン・機能・価格」で通常の補聴器の10分の1の価格を実現しています。2019年に発売開始した「Olive Smart Ear(オリーブスマートイヤー)」はわずか1年足らずのうちに、世界で約20,000台を販売しています。

【プロフィール】
代表取締役社長 Owen Song(オーウェン・ソン)/ 1987年 韓国・ソウル生まれ
【経歴】
2006年 SAMSUNG ART & DESIGN INSTITUTE/サムスン アート&デザイン インスティテュート
プロダクトデザイン専攻で入学
2007年-2009年 在学中にサムスンでプロダクトデザイナーとして働く
2014年 コロンビア大学院在学中、叔父の難聴から創業を決意
2016年 7月 Olive Union Inc. 創業
2017年 11月 US及び韓国にてFDA認定を取得 (US:ClassⅡ)
2019年 5月 本社を日本に移転
2019年 10月 日本・韓国で2代目「Olive Smart Ear」発売を開始
2020年 1月 世界最大の総合エレクトロニクスショーCESで「Best of CES 2020(ウェアラブルデバイス部門)」と「CES 2020 INNOVATION AWARD」を受賞
2020年 11月 米国で両耳式のFDA認定取得の補聴器「Olive Pro」をINDIEGOGOにて予約販売開始、現在1億円以上の支援金を達成中 (2021年1月)
2021年 1月 CESで2021年注目のプロダクトに贈られる「TWICE Picks Awards」と「Techlicious Top Picks of CES 2021 Awards」を受賞

Olive Union
▼公式サイト
https://www.oliveunion.com/jp/
▼公式ストア「Olive Smart Ear(オリーブスマートイヤー)」https://ec.oliveunion.com/lp
▼きこえの相談室ーお電話でお悩み伺います!ー
https://www.oliveunion.com/jp/kikoe_soudan/
▼オリーブ公式YouTubeチャンネル
(ほぼ毎週)大好評配信中!
https://www.youtube.com/channel


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