見出し画像

プロダクトを成功に導くための意思決定

毎週更新 #PdMノウハウ の第3回目のnoteです。第2回目のnoteは「プロダクトマネージャーの役割」でした。もし良ければ読んでいただけたら嬉しいです。今日は言語化されづらいプロダクトマネージャー (PdM) のプロダクトを成功に導くための意思決定を言語化したいと思います。

「意思決定」といってもかなり抽象度が高く、プロダクトを運営していると様々な意思決定に迫られます。今回はその中でも、プロダクトを成功させるために「今何をすべきか決める」ことにフォーカスして言語化にトライしたいと思います。

意思決定は難しい

良いプロダクトを創れば、自然と成功するのではなく、プロダクトの成長とは、意思決定の積み重ねです。PdMの日々の意思決定の連続が今のプロダクトを規定しているため、些細な意思決定が数年後のプロダクトの成功に繋がっていると思います。

・機能のオンボーディングの文言はAとBどっちが適切か、ABテストをして委ねるべきか
・巨額な費用を投じたマーケティングをひかえた機能をリリースする直前に、リリースされているバージョンに致命的なバグが発見されてしまった、どうすべきか
・withコロナ、afterコロナにおいてプロダクトはどうあるべきか
・リリースしようと思っていた機能を競合の方が早くリリースしてしまった、二番煎じだと思われるかもしれないが同じ機能をリリースすべきか
・新機能とリファクタリングどちらを優先すべきか
・成長が鈍化したプロダクトにおいて、さらなる成長の望みをかけて開発を続けるべきか、新規事業にリソースをフォーカスして会社のポートフォリオを増やすべきか

PdMをされている方はひしひしと感じていると思いますが、意思決定は非常に難しいです。「重要度/緊急度マトリクス」や「意思決定マトリクス」、「ICEスコア」、「OODAループ」など意思決定をサポートしてくれるフレームワークは多くありますが、フレームワーク通りに解決できる場面はそう多くないと思います。

意思決定をざっくりと分解すると大きく3つのステップがあるかと思います。

1. 定性定量分析、市況、競合関係、伸ばしたいKPIなどを加味して課題を洗い出す
2. 洗い出された課題に対して、課題解決によるインパクトや解決策の工数、時期を加味しつつ優先度を決める
3. 優先度を加味して解決する課題を意思決定して、実行する

簡単に書いてしまいましたが、各ステップで本が出ているくらい、それぞれも手法、フレームワークが多くあります。このnoteではステップ2~3あたりの話になると思います。優先度をある程度決めた上で、どの課題から解決すべきなのか。優先度をつけた順に取りかかればいいのか。そんな時に考えているチップスを書きます。

瓶には大きな石から詰める

スタートアップや成功しているITベンチャーの急激な増加という需要に対して、人材の供給が追いついていないIT界隈において、特にエンジニアリソースは常に経営課題に上がってくる課題だと思います。PdMは限られたリソースの中で成果を出すための課題選定を何度も何度も考えていることかと思います。

もうご存知な方もいると思いますが「大きな石理論」という人生にも通じるアイデアを紹介します。

要約すると、マヨネーズの瓶 (日本だとあまりみないですが) に小石や砂を最初に詰めてしまっては大きな石が入らなくなるということで、人生の時間の使い方も日常降りかかってくる小さいことを片付けていては本当に大切な大きなことに向き合えなくなってしまうという教訓です。

これはプロダクト開発においても同じだと考えていて、日々過ごしているとやるべきタスクは常に降りかかってきます。それらをタスクとして積んでいくとすぐにタスクで溢れかえってしまうと思います。何かをするという意思決定の裏には何かをしないという意思決定をしているのと同義です。

緊急度マトリクス

もう少し具体的にすると「重要度/緊急度マトリクス」において重要度も高く緊急度も高い課題 (A) は実行に移されることが多いと思いますが、重要度が高いけど緊急度が低い課題 (B) はなかなか実行に移されずずっと残されたままということは意外と多いと思います。

このような場合、インパクトが大きいと思うが工数が1~2ヶ月かかってしまうなど何かしら実行に移せない要因があると思います。自分の経験的には、そのような解決すべき課題は現場レイヤーで意思決定できるものではなく、経営的にリソースを割くという意思決定をしない限り動くことはありません。大きなインパクトは期待できるけれども、様々な理由からなかなか解決に移せない課題、それを実行に移すためにどうすべきか (それ自体が目的になってはならないですが) を考えるためにPdMが動くべきことは、課題の分解やその課題を解決することでどのようなメリットがあるのかを注意深く説明するなど根気強さが求められると思います。

プロダクトを成長させるために短期的な指標に影響を与えること、中長期的に投資すべきことをしっかりと切り分けて、上手くバランスをとって両軸で進めていくことが大事だと思います。

意思決定は合議制ではない

本質的にはプロダクトが目標に対して順調に成長し続けていれば、その意思決定は正しいと思いますが、気をつけていなければならないことは、プロダクトに対する意思決定を合議制に寄せすぎないことです。合議制が良い場合もあると思うので、全てをPdMの意思決定にすべきだとは思わないのですが、PdMという役割には意思決定の権利が与えられている代わりにプロダクトを成長させるという責務があります。

合議制に寄せすぎると無難な意思決定しかなされない傾向にあると思っていて、その根本には誰にも責任がないという状態になってしまうからだと考えています。言葉では決めたのは合議に参加した人たちであるため、その人たち全体に責任があるとなるかと思いますが、その結果として大失敗に終わったとして全員の評価が落ちるなどは珍しいケースかなと思います。そのため、合議に参加している人たちの情報量を揃えて認識が一致し、統一的な意思決定をすることが可能という状態でない限りは、全員にとってわかりやすい意思決定になってしまうと思います。

何度も書きますが、それでプロダクトが成長すればそれはそれで良いというのが自分の考えです。しかしながら、いつしか限界がくると思っています。そのためPdMには意思決定を行う際に、チームに対する納得感を醸成するための説明責任と何がなんでもプロダクトを成功させるという覚悟、実行力が必要だと思っています。

ロジックから美意識へ

誰が考えても同じ結論になるロジカルな世界において生じることは、プロダクトのコモディティ化です。技術ハードルや既存事業のシナジー効果が高い領域においては差別化がなされると思いますが、技術ハードルが下がりスピード勝負に持ち込むことも難しくなっている昨今においてはコモディティ化は避けられません。

コロナ禍においてリモート会議などの需要増から、zoomやgoogle meet、テレビCMでもよくみかけるbellFaceなどが急激に成長しています。僕もzoomやgoogle meet、slackでの通話機能、facebookメッセージャーでの通話など仕事やプライベートで「オンラインで通話する」という機能はケースによって意図的あるいは無意識的に使っています。例えば、facebookのメッセンジャーでチャットをしていたからその流れで通話をした、社内だったのでslackでさくっと通話した、twitterのDMで知り合ったのでzoomに会話を移行した、googleカレンダーに招待されていたのでそのままgoogle meetを使用したなど。背景を設定できたり、入退室に関する機能的な差分もどんどん一緒になってきて、コモディティ化が進んでいます。今は市場そのものが伸びているため、どのプロダクトもユーザーが伸びていると思いますし、今回挙げたプロダクトの提供者はほとんどがプラットフォームを有する巨人であるため、倒れることはないと思います。今からこの市場に参入することは自社で強いプラットフォームを有していて、マネタイズを後回しにできる体力があるようなところではないと厳しいと思います。

このような世界において、正攻法をそのまま実践して勝てるようなプロダクトはそこまで多くないと思っていて、そもそも0からスタートするようなスタートアップはロジックだけではジリ貧な戦いになってしまう恐れがあります。その中で勝てるところは「美意識」を持っている意思決定者がいるところだと思っています。美意識については次の本を読んでみてください。

著書の中では美意識とは

物事の判断を、理性だけでは無く「快・不快」といった感性を用い、自分の中での明確な判断基準を持って意思決定を行う事

と書かれています。美意識だけではなくサイエンスと組み合わせて使われることが大事です。簡単に解釈してしまうとロジカルな思考の中に、PdM自身が「これは良い/良くない」という判断基準を含めることだと思っていて、その判断基準を鍛えるために様々なプロダクトに触れて良し悪しを自分の中で判断するクセをつけることが大切です。僕自身もまだ全然実践できてないと感じているのですが、コモディティ化してしまう機能的価値の中で一つ抜きん出ているプロダクトはこの美意識が含まれているように感じています。

最後に

意思決定と一口に言っても様々な解釈があると思いますが、自分が考えていることを言語化してみました。参考にしている書籍や記事を貼っておきます。もしも日々の意思決定のサポートに少しでも役に立てたら幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?